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128話 さらなる高みを目指して

「「おぉおおおーーー!!!」」


 俺達が使う宿。

 その一階にある食堂で、アルティナとノドカがキラキラと目を輝かせていた。


 その視線の先にあるのは、テーブルいっぱいに並べられた料理の数々。

 肉、魚、野菜、果物……数え切れないほどだ。


「し、師匠……これ、本当に全部食べていいの?」

「このようなごちそうの山、拙者、初めて見たでござるよ……じゅるり」

「もちろんだ。遠慮はいらない」


 事件の解決の功労者ということで、ギルドから多額の報酬が出た。

 それとは別に、セリスから謝礼もいただいた。


 アルティナとノドカは、すごくがんばってくれたからな。

 たまには、ぱーっと使ってもいいだろう。


「じゃあ、食べようか」

「「いただきまーーーすっ!!!」」


 おつかれさま会が開かれて、アルティナとノドカは笑顔で料理を頬張る。

 二人共すごい食欲で、どんどん料理が消えていく。


 たったの10分で、半分ほどがなくなってしまった。


 おかしいな?

 二人が食べた量を考えると、軽く胃の容量はオーバーしているように見えるのだが。


「師匠、わかっていないわね」

「ごちそうは別腹なのでありますよ」

「聞いたことないからな?」


 スイーツは別腹、なら理解できるのだけど……

 ごちそうが別腹なんて初めて聞く。


 ……まあ、なんでもいいか。

 楽しく食べて、楽しく過ごせればそれでいい。


 俺もコツコツと食べて、時折、酒で喉を潤す。


 腹が満たされて。

 ほどよく酔いが回り。

 なかなかいい気分だ。


「っと……そうだ。アルティナ、わかっているかもしれないが、今回はあまり飲みすぎないように……」

「え、なーに? にへへ」

「美味しいでござるよー、ぷはー!」


 アルティナは幸せそうに酒を飲んでいた。

 その隣で、ノドカもたっぷりと酒を飲んでいた。


 二人とも酔いで顔が赤く、ちょっとふらふらと頭が揺れている。


 ……すでに手遅れだった。


「なーに、ししょー?」

「……いや、なんでもない」

「そ? なんでもないなら、もっと食べて飲みましょー!」

「そうだな……ところで、ノドカ」

「なんでありますかー?」

「ノドカは、酒は強いのか?」

「んー……よくわからないのであります。あまり飲んだことない故」

「そうか……」


 よくわからないのに、アルティナと同じペースで飲んでいる。

 ノドカも、明日は大変なことになるだろう。


 まあ……こうなってしまったら、もうどうしようもない。

 二日酔いも、若いうちの経験しておいた方がいいだろう。

 失敗から学ぶことも多い。


「飲むか」

「「いぇーーーい!」」




――――――――――




「ところでぇ、ししょー?」


 宴会を始めて、しばらく。


 アルティナとノドカはだいぶ酔っているけれど、潰れてはいない。

 本人が言うように、わりと強いのかもしれない。

 ただ、いくら強くでも限界はあり、それを超えてしまうから翌日は……ふむ。


「これから、どうするー?」

「これから、というのは?」

「拙者達の活動のことでありますよー」

「どこでもいいんだけどー、ここを拠点にするならー、いつまでも宿っていうのはどうかなー、ってあたしは思うわけよ、うん。うんうんうん!」

「旅をしない冒険者は、拠点を手に入れるらしいのでありますのでありますよ。ふぇっぷ」


 二人共、ちょっと言葉が怪しい。


「ふむ……拠点か」


 二人が言うように、拠点を手にした方が活動の幅が広がるだろう。

 それだけではなくて、生活の安心感にも繋がる。


「考えてもいいが、ただ……」

「ただぁ?」

「それだけではなくて、剣のことも考えたいな」


 あまり自信はないのだけど、俺は、それなりの腕を持つらしい。

 アルティナとノドカ……その他の人の反応で、ある程度の自信を持つことができた。


 しかし。


 魔族と出会い、戦い、それが慢心ということに気づいた。


 世の中、俺以上に強い相手なんてたくさんいるだろう。

 俺の剣は、まだまだだ。

 もっと高みを目指して、今以上に鍛錬に集中しなければ。


「さらなる高みを見て、歩いていきたいな」

「ストイックねー」

「でも、拙者、感激いたしました! どこまでもついていくでありますよ!」

「あ、こら。抜け駆けするなー! あたしだって、師匠の一番弟子なんだからー!」

「そうだな……ああ、そうだ。みんなでがんばろう」


 俺は笑みを浮かべつつ、新しい酒を飲んだ。


 やや辛く、喉に染みる酒ではあるものの……

 アルティナとノドカが一緒だからなのか、いつも以上に美味しく感じられた。


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