表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/205

119話 覚悟を決めて

「ガッ……!」


 短く叫び、ゼクスが突撃してきた。


 今度は、それほど速くない?


 不思議に思いつつ、相手の動きに合わせて剣を……

 いや、待て。


「ガ……アアアアアァアアアッ!!!」

「くっ!?」


 数メートルほど離れたところで、ゼクスは剣を振り上げて、思い切り地面に叩きつけた。


 ぶわっと衝撃波が広がる。

 石畳が割れて、土煙が舞い上がる。


 狙いはこれか!


「あぅ!?」

「アルティナ殿!」


 後ろから悲鳴。


 ゼクスは、俺ではなくてアルティナに襲いかかっていた。

 アルティナはどうにか攻撃を受け止めたものの、体勢を大きく崩してしまっている。


 慌ててノドカが割って入り、ゼクスを追い払おうとするが……


 ゼクスは下がらない。

 さらに前に出て、ノドカも食らってみせる、という感じで苛烈な攻撃を繰り出す。


「くぅ……!?」


 ノドカはかろうじて防いでいたが、長くは保たなそうだ。

 表情は険しく、一撃を受ける度に歪んでいく。


「ノドカ!」


 急いで移動して、ゼクスを背後から斬りつけた。

 卑怯だとか、そんなことは言っていられない。

 これはもう、命を賭けた『殺し合い』なのだ。


「グゥ……!」


 ゼクスは傷に怯むことなく、大きく跳躍した。

 建物の上に移動して……しかし、逃げることはない。


 軽く動きつつ、俺達の隙を探る。


 俺達三人を獲物と定めたようだ。

 それを狩ることが最優先。

 逃げることはまったく考えていない。


「厄介だな」


 覚悟を決めた者ほど手強い。

 そして……その剣は、大きな力を得る。


 ならば俺も覚悟を決めよう。


 アルティナとノドカを守るため。

 そして、この街の平和を守るため。


 ゼクスを……斬る。


「ウゥ」


 俺の覚悟を感じたらしく、ゼクスの視線が、今度こそ俺に固定された。


 アルティナとノドカも獲物のうち。

 しかし、それ以上に俺を相手にしなければならない。

 無視するようなことをすれば、痛烈な一撃を食らうと理解したのだろう。


「……」

「……」


 互いに剣を構えた。


 沈黙。

 交わす言葉はない。

 想いも必要ない。


 あるのは、意思だ。


「……ッ!!!」


 先に動いたのはゼクスだ。

 屋根を蹴り、鳥が強襲するかのように、上から突撃してきた。


 速い。

 鋭い。

 そして……重い。


 ありったけの力が込められていることが見てわかる。

 まともに受け止めようとすれば、アイスコフィンでさえ砕かれてしまうかもしれない。


 しかし、避けるわけにはいかない。

 後ろにはアルティナとノドカがいるのだ。


 二人の師匠として。

 そして、一人の大人として。

 俺は、彼女達を守らないといけない。


「はぁっ!!!」


 気合を迸らせつつ、迎撃の一撃を放つ。


 下から上に。

 弧を描くように剣を振る。


 俺の剣。

 ゼクスの剣。


 それらが交差して……


「ガッ……!?」


 剣が夜空に放り出された。

 続けて、ゼクスも倒れた。


「やった……やったわ、師匠! さすがね!」

「ガイ師匠の一撃はともかく、相手の攻撃もよく見えず……むぅ。拙者、まだまだ修行不足でありますな」

「……二人共、動くな」


 アルティナとノドカは、はしゃいでいるものの、俺は、まだ剣を構えていた。

 鞘に収めることはない。


 ゼクスは地面に倒れたまま、ぴくりとも動かない。

 気絶しているのか。

 あるいは……


 一方、地面に落ちた剣に変化があった。


 剣の暗い輝きが増していく。

 まるで生気と魔力を吸い取っているかのように……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/

GAノベル様から書籍1巻、発売中です! コミカライズ企画も進行中! こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ