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115話 闇が動く

 封魔剣の探索、及び回収に協力してほしい。


 ギルドマスターとセリスからそんな依頼をされて、俺は迷うことなく請けた。


 話を聞く限り、封魔剣は相当に危険なものだ。

 それが再び悪人の手に渡れば、どのような惨事が引き起こされるか……


 俺の剣は守るためにある。

 なればこそ、起きるかもしれない惨劇をあらかじめ防ぐことも、その使命に含まれている。


 ちなみに、アルティナとノドカは……


「へぇ、封魔剣ね……噂には聞いていたけど、どれほどのものなのか楽しみね」

「悪の道を歩く剣士は許せない存在であります。拙者が斬り捨てましょう!」


 とても楽しそうにしていた。

 最近の二人は、バトルマニアになっていないだろうか……?


 強者と戦う楽しみは、多少は理解できるのだけど……うーん。

 もう少し、違う信念などを抱いてほしいのだが。


 まあ、うるさく言うことではないか。

 他人に言われて見つけるものではなくて、自分で得るものだ。




――――――――――




「では、皆で封魔剣を探しましょう!」

「どうやって?」

「……」


 翌日。

 さっそく行動に移ることにしたのだけど、アルティナの冷静な問いかけに、ピシリとノドカが固まってしまう。


「今のところ、手がかりはゼロ。探す方法もわからない」

「えっと……」


 ノドカは、助けを求めるような視線をこちらに送る。


 苦笑しつつ、その頭をぽんぽんと撫でた。


「大丈夫だ。今日は、そのための助っ人がいるからな」

「助っ人でありますか?」

「そろそろ来ると思うんだけど……」

「待たせたのう」


 姿を見せたのはプレシアだ。

 いつものように不敵な笑みを浮かべている。


「え? どうして、魔法騎士団の団長が……」

「もしかして、彼女が……でありますか?」

「ああ、正解だ」


 昨日、会議の後、魔法騎士団へ赴いてプレシアと話をした。

 少し厄介な事件が起きたため、そちらに専念したいので、一時的に指南役を休ませてほしい……と。


 了承は得られたのだけど、なぜ? という話になって……

 それならば妾も手伝おうと、プレシアが協力を申し出てくれたのだ。


 魔法騎士団の団長が気軽に動いていいのか、やや疑問ではあったものの……

 むしろ、プレシアが動くべき、だと言われた。

 封魔剣の問題は、それほどまでに大きなことらしい。


「なるほど! プレシア殿がいるのならば、百人力でありますね!」

「ふふん、そうじゃろうそうじゃろう。もっと、妾を褒めるがよい」

「とかなんとかいって、本当は師匠と一緒にいたいだけじゃないの?」

「……」


 笑い声が止まり、動きもピシリと止まる。


「き、気の所為じゃな」

「ごまかすの下手か!」


 なんというか……


 以前と違い、プレシアは気さくになったような気がする。

 距離感が近くなったというか、よく笑顔を見せてくれるというか。

 一緒に事件を乗り越えたことで、ある程度、信頼してくれるようになったのだろうか?


「なんか、師匠がまた勘違いしていそうな顔をしているわ……」

「そうでありますね……プレシア殿に同情するのでありますよ」

「うむ。妾を慰めてほしいのじゃ……」


 どういうことだろう?




――――――――――




「気を取り直して、封魔剣を探そう」


 俺達は剣士なので、魔力を探知することは難しい。


 しかし、プレシアは魔法のエキスパートだ。

 封魔剣の魔力を探知することができるかもしれない。

 それが無理だとしても、魔力の歪みを見つけることで、なにかしらの手がかりを得ることができるかもしれない。


 かもしれない、ばかりではあるが……

 今はそれくらいしかできず、小さな手がかりでも欲しい状況だ。

 プレシア頼みとなる。


「ふむ」


 プレシアは手を軽くかざして、目を閉じて集中する。


「ふむふむふむ」


 独り言が多いな。

 まあ、自然と漏れ出してしまうのだろう。


「反応があったのじゃ」


 ややあって、プレシアはあっさりと言う。


「え、もう?」

「早すぎないでありませんか?」

「ま、妾くらいの魔法使いになれば、この程度は造作もないということじゃな。ふはーはっはっは!」

「ひとまず、その場所に向かおう」


 苦笑しつつ、俺達は場所を移動して……


「これは……」


 そして、死体を見つけた。


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