表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/205

112話 刹那の決着

「次は、俺が相手をしよう」


 構えを取ると、組織のボスは感心したように笑みを浮かべた。


「強いな、てめぇ」

「そうだろうか?」

「ああ、ここにいる誰よりも……そうか。さっきから、化け物と対峙してるかのような気配を感じていたが、てめぇが原因だったのか」


 人を化け物呼ばわりしないでほしい。


 ノドカ。

 うんうんと同意しないでくれるかな?


「一応聞いておくが、俺の部下になる気は?」

「ない」


 悪人の手先になれば、そこで俺は剣士ではなくなってしまう。

 それはもう、ただの外道だ。


「そうか、残念だな」


 組織のボスは苦笑して、


「なら死ね」


 一転して鋭い表情になると、風のような速度で踏み込んできた。


 速い。


 おそらく、今まで力を温存していたのだろう。

 これが彼の本気というわけか。


 ゼクスではなくて、俺に本気を出した。

 それは気まぐれではなくて、こちらの力を認めてくれた、ということなのだろう。


 犯罪組織が相手でなければ素直に喜んでいたが……

 さて。

 敵は、どう動く?


「へぇ、さすがにやるな」


 猛攻を防ぎきると、組織のボスは不敵に笑う。

 闘争を楽しむタイプだろうか?


 強くなることを嬉しく思う。

 その気持ちはわからなくはないのだけど、しかし、努力を重ねて磨いてきた剣の腕を悪に使おうなんて思わない。


 こいつは剣を穢しているだけ。


 悪事を働くだけではなくて……

 剣の腕を悪用することも許せない。


「どうだ? やっぱり、俺の部下にならねえか? 今なら……」

「黙れ」

「……っ……」

「終わりにさせてもらう」

「はっ……生意気言うな、おっさんごときが!」


 組織のボスは獣のように吠えて、勢いよく斬りかかってきた。

 その太刀筋は鋭く速く、そして正確だ。

 ゼクスも強いが、彼よりも数段上の位置にいる。


 それだけに、せっかくの剣を悪事に利用していることが悲しい。


「俺の邪魔をするなっ、死ねよ!」


 必殺の一撃なのだろう。

 今まで以上に鋭い斬撃が繰り出されてきた。


 周囲の冒険者達がざわついた。

 ノドカも危ないを叫んでいる。


 ただ……


「言っただろう……終わりにさせてもらう、と」

「がっ……!?」


 横を通り抜けるようにして前に出て。

 それと同時に、組織のボスが白目を剥いて倒れた。


「「「……」」」


 冒険者達は呆然としている。

 それは、ノドカやゼクスも同じだった。


「えっと……ガイ師匠。今、なにをしたのでありますか?」


 ややあって、そっとノドカが問いかけてきた。


「なにを、というのは?」

「ガイ師匠がそいつの攻撃を避けて前に出て……気がついたら、相手が倒れていて。拙者、なにがなんだかわからないでござるよ」

「ふむ」


 さほど難しいことをしたわけじゃない。


 ノドカがいうように、まずは攻撃を避けた。

 無防備になったところに、剣の腹を叩きつける。

 刃を立てないのは慈悲ではなくて、捕まえて色々な情報を聞き出したいからだ。


「え? いえ、あの……剣をふるったようには見えなかったのでありますが」

「そう、なのか? 俺としては、普通にしたつもりなのだが……」

「……つまり、ガイ師匠のカウンターは神速の技? 敵は元より、味方でもその全てを見切ることはできないという……す、すさまじいでありますな! 拙者、改めて感服いたしましたぞ!」

「さすがだな、英雄!」

「俺は、あんたならやってくれると思っていたぜ、英雄!」

「英雄はやめてくれ……」


 褒め殺しだろうか?


「……」


 一方で、ゼクスは暗い顔を作る。

 辛そうな、悔しそうな。

 拳を強く握りしめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/

GAノベル様から書籍1巻、発売中です! コミカライズ企画も進行中! こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ