109話 地下の戦い
「これは……」
地下は巨大なホールが作られていた。
ちょっとしたスポーツができるほどに広い。
おそらく、ここでオークションが行われていたのだろう。
中央に舞台。
それを囲むように椅子が並べられている。
「なんだ、てめえらは!?」
「おいっ、ここをどこだと思って……」
「一番乗り!」
さっそくウロボロスの関係者らしき者と遭遇してしまう。
誰よりも先にゼクスが動いて、それぞれ、一撃で敵を昏倒させた。
ふむ。
良い剣筋だ。
迷いが一切なくて、そして、とても力強い。
軌跡も綺麗で、無駄はない。
彼の実力は確かなようだ。
「うー……先を越されたのでありますよ」
「俺達の出番もまだあるだろう。ほら、行こう」
残念そうにするノドカと一緒に、奥へ向かう。
「おいっ、敵襲だ!」
「くそ、俺達にケンカを売って、タダで済むと思うなよ!?」
「思い知らせてやるぜ!」
アリのように、わらわらと敵が湧いてきた。
数十人はいる。
その数を見て、他の冒険者達は足を止めてしまうのだけど……
「数で俺様をどうにかできると思うなよ? てめえらみたいな悪党は、一人たりとも許さねえし逃さねえ!」
ゼクスは違う。
援軍を待っていたというかのように、真正面から突撃した。
敵は戦闘のプロのようだ。
皆で一斉に襲いかかるというバカな真似はせず、三人一組でゼクスの対処に当たる。
全員で攻撃をすれば、このような場所だと、互いが互いを邪魔してしまう。
誘われてしまうと、同士討ちの可能性もある。
故に、三人一組で戦うのが理想的だ。
それなら数の有利を活かすことができて、相手の動きを封じることもできる。
この差を覆すには、相当な実力がないと厳しい。
厳しいのだけど……
「おらおらおらぁっ!」
ゼクスはまったく苦戦していない。
数の差?
それがどうした。
こちらは、自慢の剣と、それを完璧に扱うことができる技術がある。
そういうかのように暴れまわっていた。
まるで闘技場の猛牛のよう。
一度暴れたら手をつけられなくて、止めることはできない。
ただただ吹き飛ばされるのみ。
「ぎゃあ!?」
「ひぃいいい!」
「ぐはぁっ」
敵がおもしろいように吹き飛ばされていく。
「おぉ……あいつ、すごいな」
「さすが期待のルーキーだ!」
「いいぞ、やっちまえ!」
他の冒険者達は、彼の活躍に心奪われていた。
ヒーローを見るような感じで応援している。
「ヒマでありますね……」
「俺達が優位に立っている証拠だ。いいじゃないか」
「そうですが……むぅ。拙者の刀が、血を欲しているのでありますよ……」
今、とても物騒なことを口にしたような……?
「でも、これなら簡単に制圧できそうでありますね。出番がないのはちょっともやっとしますが、まあ、依頼達成の方が大事でありますよ」
「……いや」
「ガイ師匠?」
「そう簡単にはいかないようだ」




