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秋野 木星さま
ある日の昼 ふとこぼれた鼻血
ポタポタと広がる 真っ赤な戸惑い
首筋を叩く かたい祖父の手
冷蔵庫に走る 妹の足音
ちり紙を持つ 母の温かい手
上を向いて 喉の奥に入って行く血の塊を飲み込みながら
雑巾を持って来た 父親の頭を目の端に止める
ずいぶん白髪が増えたなぁ
祖母が氷に巻いてくれたタオルを 眉間に押し当て
凍り付く顔面に 安堵の途息を吐く
昼下がりの突然の主役に 演じることも忘れて飛び出した言葉
ありがとう 助かったよ
家族の安心を浮かべた笑顔が ささくれていた心をやわらかく抱きとめてくれた




