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はぁ。異世界転生ですか・・・。  作者: まるくす
第2章『学校生活』
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第27話「道中」

「うぅ~!やっぱり風が気持ちいいね。」

「そうだね。こういう長閑(のどか)なのはいいよ。」


 シャルが馬車の操縦席に座っている俺の横に来てそう言う。

 俺たちは今、アスクポートを後にして王都に向かっていた。

 なお結構ゆっくり進んでいたので、本来ならば1週間で着く予定だがもうその期間を過ぎようとしている。

 まだ距離的には半分といったところだろうか。


「あ、クリスさん。ちょっと止まってください。」

「ん、分かった。」

 

 俺はソフィアに言われて馬車を止める。

 まぁ遅れている理由としてはこういう要望が二人から多いからだ。

 といっても俺自身も馬車を止めて休憩等をするんだけどな。

 

 あと何故俺が馬を操れるのかというと、それにはかなりの苦労があったからだ。 

 一応マルクさんから馬と馬車を借りる前に本で読んではいたのだが、やはり百聞は一見にしかず。ということらしい。

 なので最初の頃は随分と車体を揺らしてしまい、二人には申し訳ないことをしたと思う。


 俺が馬車を止めると、ソフィアは馬車から降りた。

 そしてそのまま街道沿いの少し離れた澄んだ水が流れる小川から水を汲む。

 どうやら水筒が空になっていたらしい。


 俺も操縦席から下りてソフィアの隣に行く。


「もうすっかり暖かくなってきたね。出発する頃はまだ少し寒いって感じてたんだけどなぁ。」

「そうですね。この辺りの地域は他よりも暖かくなるのが早いようです。」

「なるほどね。なんか、まだ2月だというのにもう春のように思っちゃうよ。」

「まぁ気温なんてその日その日で変化しますしね。もしかしたら明日はまた寒くなるかもしれませんよ。」


 俺はソフィアとそんな会話をしていた。

 だが俺はその会話中に何気ない感じで質問する。 


「・・・ソフィアのいたところはさ、この時期まだ寒かったのかい?」

「・・・。」


 ソフィアは答えなかった。

 しかしその顔は嫌そうというよりは無表情を貫こうとしている風にも見えた。

 それは即ち、どことなく我慢しているように俺は感じてしまった。


 とはいうものの、俺の発した言葉一つで場が一気に重くなったな。

 先ほどの和やかなムードはどこにいってしまったのやら。

 やはりこの話題は当分NGか・・。


 俺はそうして安易に口にしたことを後悔をした。



 だがそんな雰囲気の中、後ろから元気な声と共にシャルが俺の体に突撃してくる。

 まぁ突撃といっても後ろから抱きしめる形なんだけど。


「ほらほら。こんな良い天気で気持ち風も吹いてるんだからしんみりしちゃダメだよ。こういう日は元気でいなくちゃいけないんだからさ!」

 

 シャルはそう俺とソフィアに言った。

 

 たしかにシャルの言うことは的を得ている。

 人間、暗いより明るい方が良いことは周知のことだしな。

 

 だがしかし、その・・、あれなのだ。

 シャルはいいことを言ってくれた。

 それも限りなく良いタイミングで。

 おそらく俺とソフィアの雰囲気が変わったのを察して間に入ってきてくれたのだろう。 

 実に賢い子である。

 だから賢い子のはずなんだけど、シャルの体勢を見ていると何とも可愛らしいというか、少しおバカっぽいというかだな・・。



 というのも、シャルは俺に後ろから抱きついている。

 そして身長は俺の方が7,8cmほど高い。

(ちなみに言うと俺は今140cmぐらいだろうか。この年齢にしては高い方と言える。)

 なのでシャルは俺の右脇あたりからひょっこりと顔を出した状態でいるのだ。

 

 その様子を見ていると、シャルは真面目なことを言っているはずなのに俺もソフィアも笑いがこみ上げてきた。


「ふふっ、シャルったらまったく。女の子はそんなことするものじゃないですよ。」

「えー、私は別にいいんだもん。だってクリスの体だしね。」

「・・・シャル。今は良いけどな、絶対に人前では言ったらダメだぞ。」

「はいはい、ちゃんと分かってるよ~。」

 

 本当に分かっているのかな。

 たしかに俺は前に、体に抱きつくぐらいなら好きにしていいと言ったけどさ。

 その言い方だと限りなく誤解が多発すると思うよ?

 もし人前でそんなこと言われようものなら恥ずかしさで俺が死にそうだ・・。



「にしても風が気持ちいいですね。それにもう雪も溶けきったみたいですし、緑がきれいですよ。」

「そうだね~。こんな良い日は・・・あ、そうだ!」


 ん。シャルが何かを思いついたみたいだ。

 

「せっかくだしここで日向ぼっこでもしようよ!こんな良い天気なんだよ?ねぇ、いいでしょクリス。」


 そして上目遣いで聞いてきた。


 どうやらシャルも上目遣いの使いどころを学んだらしい。

 大抵の男ならそれで一発だろう可愛さだ。


 ふふふっ。

 よし、その可愛さをもってして俺から上目遣いの免許皆伝をあげよう。

 なんせ俺は僅か4歳にして上目遣いの効果と使いどころをマスターした子供だぞ。

 そんじょそこらのヤツらとは格が違うのだよ格が。

 

 といってもまぁ、男の俺が将来的に上目遣いをすることはないと信じたいな。

 いくらオリヴィア似とはいえ、この可愛らしさも幼いことによると思うものだし。

 今のペースで身長伸び続けてくれよ・・・。



「クリス・・?大丈夫?」


 おっと、いかんいかん。

 どうやらまたボケッとしていたようだ。

 俺の考え事をするときにこうなる癖も直さないとな。


「ん、大丈夫だよ。それよりも日向ぼっこね、全然いいよ。時間はまだまだあるし。」

「ホント?やったぁ!ソフィもいいでしょ?」

「ええ、別に構いませんよ。」


 シャルはソフィアの言葉をそれだけ聞くと、素早く俺とソフィアの手を取った。

 そして何をするかと思っている間にそのまま思いっきり後ろに倒れ込んだ。

 無論、手を繋いでいたので俺もソフィアもつられて勢いよく後ろに倒れる。



「えへへ。私ね、今すっごく幸せだよ。ありがとねクリス、ソフィ。」


 シャルはそう言って笑った。

 それを聞いて、俺もソフィアも笑いながら「こちらこそ」と言う。

 実になんとも和ましい雰囲気だ。


 なお俺たち三人は草むらの上で大の字になって寝転がっている状態だ。

 そして再び暖かい風が吹き、草々が揺れる。

 そこに日差しが雲の隙間から差し込む。

 眩しいが、それがまたいっそう平穏で幸せな空気を引きただせる。

 さらにその情景に、先ほどまでは意識してなかったためか聞こえなかった小鳥の(さえず)りが聞こえだした。

 もちろん小川の水が流れる音もだ。


 なんて気持ちが良いのだろうか。

 なによりこの自然もそうだが、握っているシャルの手が温かい。

 温もりを感じる。

 

 そう思ってシャルを見ると目が合った。

 シャルは俺に微笑む。

 そして俺の方に近づいてきて、頭を俺の肩に合わせた。


 俺はもうずっとこの時が続けば良いと思った。

 今日は移動せずにここにいたい。

 

 しかしそう考えていると、段々目を開けているのが辛くなってきた。

 頭ではこんなところで寝てはいけないと分かっているが、迫り来る眠気には俺は太刀打ち出来なかった。

 


 やがて、俺はそのまま意識を落としてしまった。

 




---





 目が覚めるともう夕方だった。

 さすがに寝る前は暖かかったとはいえ、日が沈みかけると気温が一気に下がった気がする。

 少し寒い。

 そうして何気なく隣を見るとシャルがいた。

 寝てしまう前と同様のシャルだ。

 淡い赤色の髪が背景の緑と対象的に輝く。

 その寝顔は安心しきった表情をしていた。

 

 少しはこういうところで寝ることに抵抗を持ってほしいものだが、今の俺が言える立場ではなかった。

 しかし何より着目すべきなのは、その体には俺と一緒に大きな毛布が掛けられていた。

 なので俺はそのことに対して忠告よりも感謝の念が先に出ていた。

 


「おはようございます、クリスさん。いえ、この場合はなんと言ったら良いでしょうね。」 

 

 前からそうソフィアの声がした。 

 俺はその声に反応し、ソフィアの方を振り向き顔を見る。

 ソフィアはそう言いつつ微笑んでいた。


 淡々としているソフィアが、時折俺に対して見せてくれるこの笑顔は可愛い。

 ソフィアの笑顔はシャルとは別の何かを感じる。

 これは前の冒険者ギルドに入る前に感じたあの感情だ。

 しかしながら、相変わらずそれが何なのかはまだ俺には分からなかった。

 そのことに俺は自分にやるせない思いを抱いた。


「はは、この場合はどうしたらいいんだろうね。俺も分かんないや。」


 だが俺はその感情を考えるのを後回しにしてソフィアと話すことにした。

 俺はソフィアに微笑み返してそう言う。


「あ、あと毛布ありがとね。助かったよ、このまま寝ていたら間違いなく風邪引いちゃってただろうし。」 

「いえ、私も心配だったので。といっても私自身起きたのがつい先ほどなので毛布を掛けてからそんなに時間も経っていませんけどね。」

「いや、そうだとしてもだよ。毛布を掛けてくれたことが大事なんだ。ソフィアは優しいね。」


 しかしソフィアは俺のその言葉を聞くと何も言わずに顔をそらした。

 そしてその顔はいつの間にかまた無表情に戻っている。


 あれ。

 こんな反応されるとは思っていなかったな・・。  

 やはり俺なんかからこんな事を言われても迷惑なだけなのだろうか。

 次からは自重することにしようか・・。  



 そうしてその後、俺たちはシャルを起こして夕食を食べた。

 ちなみに夕食も含めて全ての用品は俺の指輪に入っているため、準備から後片付けは万全だ。

 あと寝るときは馬車の中で寝ることにしていた。

 なので今回も夕食を食べ終わると馬車に戻る。

  

 あとはまぁ今更になるが、馬車は中型クラスだった。

 そして馬は黒馬だ。

 また、これは余談になるのだが、馬の種類はよく分からないが一番早いとされる馬は、あの赤兎馬だろうなと思う。


 ちなみに赤兎馬とは、簡単に言うと名の通り赤色の馬だ。

 経緯としては三国志の時代で呂布という強い武将がいたが、その武将は暴君と言える存在であったため他の勢力から孤立したいたのだ。

 そしてその際、逃げるときに呂布の馬であった赤兎馬は他の名馬という名馬を突き放して進んだと言われ、武将で一騎当千と言われるならば赤兎馬は数千年に一度といえる馬だろうとする評価だ。

 あとさらに言うと、その呂布を倒した曹操が関羽を部下にしたいがために関羽の愛馬となるのだが・・・。

 まぁこれはマニアックすぎるので割愛しよう。


 さて要するにだが、俺はこの世界の馬事情は知らない。

 だがもし赤兎馬がいるならば会ってみたいものであるということだけは言っておこう。

 

 もしかしたら成人した後の旅に馬が必要になるかもしれないしな。

 一度でいいから赤兎馬の早さを体感してみたいものである。 

 


 

 とまぁこんな感じに、俺はそう考え事をしながら馬車の操縦席のところで毛布に包まっていた。

 操縦席は馬車の内部とは土台でくっついてはいるものの、独立した形となっているため内部を締め切ると外に位置することになる。

 そのため寒いのだ。


 ちなみに何故俺がこんなことをしているというとだが、率直に言うと見張りだよ。

 マルクさんも言っていたが、盗賊には注意しろとのことだったしな。

 此処は王都からもアクスポートからも離れている。

 盗賊が出るとすれば、まさにこの付近であるだろう。

 

 もっとも、幸いにも先ほどまで寝ていたので眠気はない。

 しかしあんな場所で暢気に寝ていたのに、今さら盗賊の警戒をするということには我ながら矛盾していると思う。

 だが今は夜だということもあるし、できる限り警戒は怠ってはいけないのだ。

 それに盗賊じゃないとしてもシャルやソフィアを狙った暴漢がいないとも言えないからな。


 なので今二人には馬車の内部で休んでもらっている。

 まぁ就寝前に数時間ごとに交代という話も出たが、俺が却下したという経緯もあったりする。

 理由としては、ソフィアに俺の男らしいところを見せないといけないということもある。

 だけど、そもそもこれは男の仕事だしな。

 女の子にこんな寒い中で長時間起きさせてるのは俺が嫌なのだ。


 

 しかし俺がそう思いながら辺りを見渡していると、遠くの王都の方角の道沿いで何かが光った。


 俺はとっさに立ち上がる。

 そして同時に電気で目の虹彩を刺激し、水晶体の焦点を遠くに合わす。

 こうすることで視力が格段に上がるのだ。


 そのおかげで俺は瞬時にその光が発生した地点をハッキリと見ることが出来た。

 

 だがその場所には何もなかった。

 いや、変哲がないと表現した方が正しいだろうか。

 とかくそこは今俺がいる街道と大凡変わらない風景が広がるのみであった。


 俺は最初、天然の雷かとも思ったが、上空を見てもその地点には雲が広がっていない。

 空にはきれいな月明かりが見えるだけである。


 果たしてあの光はなんだったのだろうか。

 俺の目の錯覚だったのか。

 

 俺にはその疑問だけが残った。

 しかしその後は依然として夜の冷たい空気が凜と漂うばかりである。


 俺は立ち上がっていた体を元の場所に座らせる。

 そして再び毛布に包まって白い吐息する。

 してその吐息には様々な感情が交じっていたことだろう。

 

 だが俺はそのことについて、そのとき深く考えなかった。


 ただただ俺は、翌日の朝まで一人その地点を見つめていたのみであった。

 




---




 

 やがて日が完全に顔を出した。

 凜とした空気が僅かに緩む。

 鳥の囀りが鳴り出す。


 そしてそれを感じ取ったのか、馬車の内部からシャルとソフィアが出てきた。


「おはようクリス。昨日は大丈夫だった?」

「おはようございます。すみませんね、昨日はご迷惑をおかけして。」


 二人はそう言って俺に見張りのことを(ねぎら)ってくれた。


「うん、おはよう。あ、あと昨日は何もなかったから大丈夫だよ。」


 俺もそう軽く笑って返答する。

 

 俺は昨日の光のことを二人に言わなかった。


 だがこれは別に秘密にしようというわけではない。

 しかしながら、これは言ったとしてもその説明のしようがないのだ。

 事実、俺自身が何なのか分かってないのだから。

 なのでその出来事を打ち明けたところで二人を不安がらせるだけであるだろう、と俺は判断をした。

 それに、多少気がかりではあるが、もし問題が起こったならばそのときは俺がすぐ対応すれば良い。

 俺はそう考えていたのだ。



「さ、朝食を食べようか。今日は何がいいんだい?」


 しかし俺は思考を切り換えて二人にそう言う。


 ちなみにだが、俺の指輪の機能である異次元空間は物質を入れると、その物質の時間が止まるらしい。

 よって食品等も品質を新鮮なままに保っておけるのだ。

 だからその日その日の気分で様々な物が食べられる。


 まぁ時間が止まるといっても、生き物は怖くてまだ試したことがないけどな。

 取り出したときに、見るも無惨な状態とかになってたらその後指輪を使いずらくなると思うし。


「んー、私はクリスと同じ物がいいな。」


 シャルは少し迷った後、そう言った。


 なお、ご飯時にはいつもシャルが手料理を作ってるのだが、朝食は出発する前にアクスポートで買った品物を食べるようにしていたのだ。

 これは俺がシャルの負担を減らすためにそうしたのだ。

 だけどシャルは少しばかり残念そうな顔をしていた。

 おそらくは俺とソフィアの役に立ちたいと思っているのだろうと俺は推測する。

 

 だが休みは大事だ。

 俺も前世ではほぼ一人で家事をこなしていたから分かるが、特に朝の眠いときに作る料理はかなり大変だったりする。

 それにシャルは普段、自分のやりたいように物事を進めているように見えるが、実はその逆で俺のことをかなり気遣ってくれている。

 だから俺もシャルを気遣ってあげなければいけないと思ったのだ。


「私はクリームパンがいいです。」


 一方でソフィアは自分の要望を言う。


 自分の思うことをハッキリ言うのは良いことだ。

 ソフィアはそのあたりがブレない。

 数あるソフィアの長所の一つだろう。

 

 言わば俺がソフィアを見習う箇所パート2だ。


「了解っと。はい、ソフィアにはクリームパン。シャルには俺と同じウエハースだよ。」

「・・ありがとうございます。にしても朝からお菓子ですか。」 


 む。

 ソフィアに突っ込まれた。

 まぁ確かにウエハースっていうのは洋菓子の一つで焼き菓子の一種だよ。

 でもこれって朝食にも食べたりしない?

 前世では普通に朝食べてたんだけどどうなんだろうか・・。


「まぁそうは言ってもさ。ソフィアのクリームパンだって菓子パンじゃん?」 

「そりゃそうですけど・・。シャルはいいんですか?朝からお菓子で。」

「え、私?私はクリスの食べるものなら何でも良いの。そして出来るなら食べかけが・・。」


 シャルはそう最後の方は小さな声で言って、にやにやし出した。


 しかしソフィアはそれを見て小さなため息を吐いた。

 そしてそのまま無言でシャルのにやついた頬を人差し指でうりうりと押す。

 

「うぅ・・。分かった、分かったよ。もうにやにやしないから止めてぇ。」

 

 だがシャルはそう言いつつも、どこか楽しそうに笑った。

 ソフィアもシャルとじゃれ合っているうちに少し笑っていた。


 二人とも可愛いよ。

 だけどメリハリは大事だぞ。

 

 俺は二人が遊んでいる間に自分の食事を済ませて言った。


「はい、そろそろおふざけも止めて早く食べて。そして食べたらすぐ出発しちゃうよ。いくら時間があるといっても、この辺は盗賊が一番遭遇しやすいところだから。できるならすぐ移動しちゃいたいんだよ。」

「ですね。」

「そうだね。」


 二人は俺の言葉にそう真面目に反応した。

 俺の言葉通り、おふざけモードは終わりになってくれたらしい。


 しかし二人はいつの間にか、草々に倒れ込みお互いに(もつ)れ合っていた。

 なのでその体勢や服の角度からしてかなりきわどい。

 特にソフィアに押し倒されているシャルなんか、そのスカートの隙間から純白の布が見える。

 まぁそうは言っても、ソフィアもシャルに反撃を喰らって色白の肩が服から出ている。

 所謂えっちぃ状況だ。 


 うっ。

 いかん、俺も何処とは言わないが反応してしまいそうだ。

 落ち着けクリス。

 ここは冷静にだ。

 もし二人に気付かれるものならいろいろ大変なことになるぞ。

 シャルが気付くと俺は襲われそうだし、ソフィアに気付かれてもどん引きされるだろう。


 それはどちらも俺にとって避けたい事態である。


「あー、うん。やっぱご飯は馬車の中で食べてていいから、とりあえず乗って。もう移動しながらの食事でいいよ。揺れるかもしれないけど()せないでね」

「クリス、早口だし顔も赤いけどどうかしたの・・?」

「・・・。シャル、とりあえず馬車に乗りましょう。」 


 シャルは相変わらず鈍感だが、ソフィアが自分たちの状況に気付いてくれた。

 毎度察しが良くて助かるよ。




 俺は二人が馬車に乗ったのを見届ける。

 そしてこれから頑張って馬車を牽いてくれる黒馬くんにも朝食を与えた。   

 まぁ朝食と言っても水と人参なんだけどな。


 そして俺は昨日に進むはずだった距離を含め馬車を飛ばして移動させた。

 なお、もちろん最初の数分はシャルとソフィアのことを考えて、ちゃんとゆっくり進んだよ。

 噎せて酔われても困るしね。





---





 馬を進ませてしばらく経った。

 結局、昨日見えた光が発生していた地点を通ったが、特別変わった様子はなかった。俺は逆に気を張り詰めて馬を進めたが、数キロ進んでも異常はなかったので、昨夜の出来事自体、実際にあったのか不安になった。



 また数日経過したが、我らが道中は盗賊とは無縁のどこ吹く風だった。

 豊かな自然を堪能しつつ、小川があれば水を汲み、日差しが良ければ日向ぼっこする。なんと健全な少年少女であろうか!

 馬車という密室で性的葛藤を抱えた思春期なのだからと、何か過ちが起きようものかと期待しているそこの諸君。残念ならが期待には答えられない。やはり俺のソフィア加入作戦は功を奏したようだ。

 シャルはソフィアと仲良しこよしで、後ろでキャッキャウフフしている。...あれ、何かちょっと寂しいぞ。。





---





 そして明くる日、とうとう俺たちは目的地に到着した。


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