5-45. 生き方は諦めるよりしがみつくで(3/3)
約2,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
ムツキや女の子たち、ユグがウロの中から出る頃には、太陽が落ち始めて赤ら顔になりかけていたときで、アニミダックはウロの動きが止まったために休憩中とばかりに足を放り出して座っていた。
ムツキがユグと手を繋ぎ、その後ろをユウやナジュミネ、リゥパ、サラフェ、キルバギリー、ミクズ、メイリと続いていく。
「ムツキ!」
アニミダックはムツキを見るやいなや立ち上がった後、右手にムツキのスキルや魔力を無効化する触手を纏って彼の顔面を強く殴打しようとする。
魔力が少なくなっていた上に疲れきっていたムツキはどうすることもできず、アニミダックの殴りをまともに受けて一歩下がった。
もちろん、アニミダックが本気であれば、これで済むわけがなかった。
「アニミダック……」
「手間ぁ、掛けさせやがって……バカか、てめぇ……大事なもんの守り方も分からねえのか……」
「そうだな……すまなかった」
「ははっ……どうした? シュンとしやがって、らしくねえ! 悔しかったら殴り返してみろよ? まだこっちは腹の虫が収まってねえん、ぐぶべえっ!」
アニミダックが挑発していると、ムツキの後ろにいたはずのナジュミネが大きく跳躍し、彼女はアニミダックの顔面に勢いよく一切の加減もなく回し蹴りを食らわせた。
地面に降り立ったナジュミネの髪の毛は、彼女の魔力の高まりを受けて、まるで炎のように揺らめいている。それは彼女が怒り心頭のときに見せる姿だった。
「貴様、弱っている旦那様に何をしてくれている……?」
その後、残りの女の子たちがムツキを庇うかのように、ムツキの前に立ち始める。
「疲れているところを狙うなんて最低ね!」
「アニミ? 状況を分かっていますか?」
「見直したのに、見下げ果ててしまいますね……」
「なんで今すぐにそのような仕打ちをするのじゃ……狭量な奴じゃな……」
「アニミ、最悪……」
予想外の展開に、アニミダックはきょとんとしていた。
「えっ? はっ?」
「……アニミダック、最低っ! バカっ! 人でなし!」
トドメはユウの言葉だった。アニミダックは立っていられる力もなくなったのか、膝を地面につけ、ぺたりと座り込む。
「そ、そんな……これは……」
「問答無用! 許さん! 袋叩きにしてくれる!」
何か説明をしようとしたのか、アニミダックの口がゆっくりといくつかの言葉を出していくも、激昂したナジュミネがアニミダックの言葉をピシャリと閉じさせた。
ナジュミネの袋叩きという言葉とともに、ナジュミネ、リゥパ、サラフェ、キルバギリー、メイリの5人がアニミダックにかなり強めの攻撃を加える。
「ぎゃああああああああああああああああああああっ!」
「あーあ……バカじゃないの? 男の友情っぽい演出しようと思ったんだろうけど、ムツキ大好きな女の子たちにそんなの分かるわけないじゃん☆ ま、ムツキはなんとなく分かっているから反撃しなかったみたいだけどね☆ ボクは後にしとこ」
レブテメスプはワルキューレたちにお世話をされながら、アニミダックの袋叩きにあっている場面を甘い飲み物やお菓子とともにじっくりと鑑賞していた。
「何をしているニャ……日が暮れるまでに時間がニャいニャ……」
「ケット!」
「思ったより元気そうだな」
「よかったです」
「クー! アル!」
声のする方向にムツキが顔を向けると、そこには少しばかりのケガで済んでいるケット、クー、アルがいた。
タウガスとディオクミスの姿はなかった。
「ほかのみんニャもいるニャ! さあ、ユウ様! 世界樹をどうするニャ?」
ケットがそう訊ねると、ユウが大きな声を張り上げるために息を大きく吸い込んだ。
「みんな、力を貸して! 世界樹をバッサバッサと剪定していくよ!」
「みんニャ! 魔力が少なくて疲れているところで申し訳ニャいけど、もうひと頑張りニャ! 樹海のみんニャも頼むニャ!」
ユウの言葉が響く。その後、ケットが樹海からぞろぞろと現れる妖精たちや世界樹から下りてくる妖精たちに向かって、それ以上の大きさで言葉を伝えていく。
「にゃー!」
「あおーんっ!」
「ぷぅぷぅ!」
「きゅー!」
「ぴぃっ!」
「きっ!」
「ぴぴっ!」
いつもは木々の枝どうしが風でこすれるような音しかしない静かな場所で今まで経験したことのないような大音量が響く。
ユグはその音量の大きさに驚きつつも、たくさんいる妖精族たちを楽しげに眺めていた。
「ここで、この光景が見られてよかった」
その後、剪定ポイントをユウが示し、妖精族全員で一斉に世界樹を全体的に小さくしていく。日もすっかり暮れて、夜が挨拶を始めた頃までかかったが、最後の最後にユウがその大きさに合わせた世界樹の設定に作り変えることで誰の命も失うことなく、無事に全てが終わった。
「ねえ、ムツキ。オレ、スリムになったかな?」
「ああ、とても素敵だ」
「えへへ……そっか、そっか」
実際のところ、世界樹の化身であるユグ自体に変化はまったくなく、実に幼女だったが、リゥパの肘鉄を瞬間的に思い出したムツキはスッと褒め言葉が出ていた。
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