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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第5部2章 毒蛇の王ニドの計画始動

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5-36. 邪魔は阻むよりまるで誘うようで

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 場所が変わって、樹海、木よりも少し上の高さほどの位置。キルバギリーの外装モードを着こなしたサラフェはユウを抱えてリゥパを背負いつつ、樹海の上空を華麗に舞っていた。


 樹海の中から狙いすましたかのように飛び出てくる触手たちが単体でトゲのように突き刺そうとしてくることもあれば、いくつもの触手が組み合わさって獣型や鳥型になってサラフェの前後左右上下から襲い掛かってくる。


「数が多いですね! 無音なのがより腹立たしいです!」


「サラフェ! まだまだ来ます!」


 サラフェも最初は反撃をしていたが、触手が無数に現れる状況を鑑みたようで攻撃に魔力を割かなくなる。彼女は触手たちの攻撃を僅かな風切り音を頼りに寸分の差で躱し、確実に目指す先、世界樹の下へと近付いていた。


 ユウは世界樹に何かあった時の応急処理用として魔力を温存しており、一方のリゥパは得意の【マジックアロー】や【ビリオンアロー】が現れようとした瞬間にかき消されるために、攻撃を諦めた上でキルバギリーへの魔力供給役として魔力を注ぎ続けていた。


「まさか【マジックアロー】も使えないなんて」


 リゥパは口の端を噛みしめる。


「どうやら、樹海全体が魔力を吸収しようとしていますね。まだ生物の外に存在する魔力、空気中にある魔力を吸収するだけに留まっていますが、この状況が続けば、樹海にいる生物の体内にある魔力も吸い出し始めるかもしれません」


 キルバギリーが外装モードでどこからか声を出す。彼女は魔力をエネルギーに変換し推進力を生みだしたり、周りの状況を把握してサラフェに叫んだり、この異常な状況を分析したりと忙しく並列処理を行っている。


「魔力が足りていないってこと?」


「おそらく。もちろん、局所的な事象ではそこまで判断がつきませんが、世界樹によって樹海自体も異常であることに間違いないですね」


「くっ……ちょっとずつ進めていますが、このままでは」


 サラフェは進み具合と魔力の残存量から、少しばかり弱った言葉を口にする。


「サラフェ。後は頼めますか?」


「……何か策が?」


「ええ。ただ、リゥパさんから魔力をかなりいただくことになります」


 キルバギリーの言葉は、彼女自身とリゥパの戦力外と引き換えに世界樹へ辿り着くということを意味していた。


 この後、きっと来てくれるであろうムツキが来るまで、ユウを守れるのはサラフェしかいないことも意味する。


 サラフェとリゥパがそれぞれ小さく肯く。


「……状況が良くなるなら! 受け取って!」


「承知しました。外装モード、突撃モデル! サラフェ、そのまま世界樹の方へ!」


 リゥパの大量の魔力を吸って、キルバギリーの外装モードが変形する。6つある翼の内の4つの翼がサラフェの前に展開され、四角錐状となって高速に回転し始め、近付く触手たちを巻き込んで勢いよくバラバラにしていく。


 すると、すっと前方から迫る触手たちが減っていき、後方から追いかけるような触手たちばかりになる。


 サラフェは少し気になったものの、長い時間を気にもかけていられず、気にしたことを捨て置いた。


「さあ、このまま、世界樹まで行きますよ!」


「すごい……尖った部分が高速で回転して、近付く触手を微塵にして飛ばしているわね」


「ですが、皆さんを守りつつ、高速に動かすので魔力の消費が大きいです!」


「ええ、いいわよ! キルバギリー、気にせず使って! サラフェ、突っ込めえええええっ!」


 サラフェが樹海の上を世界樹に向かってただひたすらに真っ直ぐ飛び、みるみるうちに近付いていくが、それに伴うかのように勢いよく回転していた四角錐は徐々に回転力が落ちていく。


「着きます! なっ!」


 やがて、どうにか世界樹に辿り着いて降り立とうとしたとき、突如キルバギリーの外装モードが解除される。放り出されるかのように空中に浮いたサラフェはユウをしっかりと抱きしめ、着地の衝撃を背中で受ける。


「あぐあっ! ユウさん、大丈夫ですか?」


「サラべえ、ありがとう。おかげで万全だよ」


 キルバギリーは人の姿に戻って樹海の木に激しくぶつかるが、兵器ゆえの頑丈さで逆に樹海の木がへし折れてクッションになる。


「到着ですね……うっ……」


「キルバギリー!」


「大丈夫ですよ」


 リゥパはなんとか動く身体を捩って、しなりやすい枝に手を掛けて着地の衝撃を和らげる。彼女は尻餅をついた程度で済んだが、魔力の枯渇で息も絶え絶えといった様子だ。


「私ももうヘトヘト……」


「リゥパさん!」


「サラフェ、私はいいから、世界樹の方、ユウ様についていって」


「分かりました」


 サラフェがキルバギリーやリゥパに声を掛けて無事を確認した後、辺りを見回すと世界樹の方へと寄っていくユウが見えた。


 ユウは世界樹に近付くも触れることなく、じっと目を凝らして、世界樹の様子を見る。


「世界樹が……魔力の減り過ぎで苦しんでいる?」


「これは、これは……思ったより早いですな。お待ちしておりましたよ」


 ユウが世界樹の以上の原因に気付いた頃、世界樹の裏側から毒蛇の王の声がした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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