5-31. 有事の際は敵より味方で(2/2)
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楽しんでもらえますと幸いです。
三角巾を取り払うと、アニミダックが持つ漆黒の長い髪が見える。ムツキよりも身長が高く、ひょろっとしていたモヤシのような体格は使用人の業務の中で少しずつながらも確実に引き締まった肉体へと変わっていた。
ムツキに似た顔立ちだが、面長で目元の決して消えることのない濃過ぎるクマが特徴的なアニミダックは、ユウを危機から救えたことで自然で屈託のない笑顔を彼女に見せる。
ユウは不意にドキッとした後、ドキッとした自分を戒めるためにバチンと両手で自分の両頬を思いきり叩いた。
「ど、どうした? 大丈夫か?」
「なにも!」
ユウはヒリヒリした痛みと赤くなっているだろう頬の熱を感じつつ、何事もなかったかのように強く答える。
「そ、そうか。なあ、ユースアウィス、俺の制限を外してもらえるか?」
「うん!」
アニミダックは自分の手に嵌められている手甲に視線を移してから再びユウの方を向き、制限を解除してもらうようにお願いした。
ユウは細かい理由を訊ね返すこともなく二つ返事で制限を解除する。
「うし。お前ら! ここは任せろ! ユースアウィスと一緒に世界樹に向かえ!」
アニミダックは触手を生成してあっという間に増やし、自身の足場を強固にした上で、自分の眼下にいる敵を蹴散らしていく。
「そうしたいけど、さすがにこの量じゃ、アニミだって……あれは?」
リゥパが迫り始めた敵に向かって魔法の矢【マジックアロー】を放っていると、上空から何かがもの凄い勢いでやって来る。
「ジャジャジャジャーン! そういう時こそ、呼ばれてないけど、レブテメスプ様もバッチリタイミングで登場さ☆」
それは、この世界において異端とも言える機械仕掛けの飛行物体、レブテメスプの搭乗するUFOだった。
自身の発明で10歳程度の少年の姿となった彼は、黄緑色のマッシュルームカットを揺らしながら、白衣に通した腕を組みつつ、UFOの中でドカッと座り込んだ状態で足を投げ出すようにして組んでいる。
その姿は居丈高の子ども科学者と言った風体で、絶対的な自信を持った不敵な笑みで登場した。
「レブテメスプ様!」
「キール! お友だちと一緒になって、ユースアウィスを世界樹まで連れて行ってあげなさい!」
「はい! 承知しました!」
キルバギリーがレブテメスプに向かって嬉しそうに笑顔を振りまくと、レブテメスプもまた笑顔を見せた後に、UFOの中で立ち上がった後に真剣な眼差しで世界樹の方を指差す。
「サラフェ、私たちも行きましょう!」
「そうしましょう」
キルバギリーは意気込んだ様子で変形し、外装モードとなってサラフェに重なった。
最終兵器魔法少女サラフェ、通称、マジカルサラフェはキルバギリーの外装モードを着こなしたサラフェのことである。
彼女は、フリルやリボンの多すぎる青と白のミニスカワンピースと黒色の膝上までのスパッツを身に着け、さらに虹色金属の軽装鎧として胴部パーツ、肘パーツ、膝パーツ、冠のような頭部パーツ、膝下までの脚部パーツがあり、極めつけに6枚の機械的な見た目の翼までついている。
元々の褐色肌、青髪のツインテールと組み合わさったマジカルサラフェはさまざまな要素を詰め込んだいろいろな意味で特異な存在である。
「この短い時間の中で情報量が多すぎるだろ……」
レブテメスプの登場と、マジカルサラフェの爆誕に、アニミダックは思わず呆れ混じりに呟く。
「アニミ、中にナジュミネさんとコイハさん、メイリさんがいます。お願いしますよ!」
「……ちっ! 仕方ねえなあっ!」
「にゃー!」
「わん!」
「ぷぅ!」
「準備が終わったモフモフ軍隊も登場ね。みんな、任せたわよ!」
マジカルサラフェはリゥパを背中に乗せ、途中でユウを両手で拾い上げて颯爽と樹海の上を飛んでいく。
女の子たちがいなくなったところで、触手の上に乗るアニミダックとUFOの中にいるレブテメスプがムツキの家の屋根で並び立つ。
「……おい、何でこんな所にタイミングよく出やがる」
「娘のピンチに父親が出るのは当たり前だろ? 娘が宿無しになったら困るしね☆ そっちこそ、どうしてかな?」
理由を答えたレブテメスプはニヤニヤして、アニミダックに聞き返す。
「……嫌な聞き方しやがる。ムカつくことに、俺はここの使用人扱いだからな! それこそ宿無しになったら困るだろうが!」
「別に使用人をやめちゃえばいいじゃん? 理由にならなくない?」
レブテメスプが身も蓋もないことを言ってのけると、アニミダックはズッコケそうになりつつもレブテメスプの方を向いて大きく口を開く。
「……うるせえ! ユースアウィスを取り戻すまではやめねえ! ムツキをぶっ飛ばすまでやめねえ! お前こそ、キルバギリーを取り戻せば済むことだろうが!」
「ま、それもいいけど☆ どうせならさ」
レブテメスプがUFOの中のボタンを勢いよく押すと、UFOが上空へ浮上し始めて変形し始めた。
ガシャン、ガチャン、ギュイーン、ガチャガチャといった様々な金属音だけでなく、どこからともなく効果音やBGMがし始め、変形していくUFOから煙幕が出るわ光が出るわの大騒ぎである。
さらには、どこからともなく別の乗り物のようなものまで登場し、煙幕の中でさらに金属のぶつかり合う音がする。
「急にガチャンガチャンってうるせえなあ……」
アニミダックがうんざりした声色で反応する。
「このエニアード・ハーミット・ラグナレックの性能も見たいじゃん☆」
やがて、ド派手な演出の中から出てきたのは、全体的にレブテメスプの髪色と同じ黄緑色をした人型兵器だ。前回より改良を重ねられたエニアード・ハーミットは、ラグナレックという名前がさらについていた。
「名前がなげえ……」
「じゃあ、ラグナレックでいいさ☆」
「最後の単語だけじゃねえか!」
「案外細かいね……こんなの放っておいて、ほら、ワルキューレたち! 君たちも出番だよ☆」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「細かくねえだろ……モフども! 各自、適当にな! 絶対に守り通すぞ!」
「にゃー!」
「わん!」
「ぷぅ!」
全方位を囲まれたムツキの家だが、アニミダック、レブテメスプ、モフモフ軍隊、キルバギリーに似た9体のワルキューレたちという強固な戦力が集まった。
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