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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第5部2章 毒蛇の王ニドの計画始動

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5-26. 種明かしは全部より一部で(1/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ニドの「感謝」という言葉に、ニド以外の全員が不思議そうな表情を浮かべる。


 特にムツキは名指しされてしまったので、周りを見渡すようにきょろきょろと目を動かして状況を確認し、恐る恐る口を開いて声を出す。


「……え? 俺に……感謝?」


「そう、感謝ですとも。私の考えをムツキ様は証明してくれましたから」


「考え? 証明?」


 ニドの口から出てくる言葉がムツキにとって非常に難解で複雑だったために、彼は頷くこともできず、聞いた言葉をオウム返しにすることがやっとだった。


「ええ。そんな顔をなさらずとも、私の言いたいことはそう難しいことではありません。強大な力をもってすれば、奪われることも失うこともなく、ハッピーエンドになるということをムツキ様がその力で示してくださいました、と言いたいだけなのですから」


「そ、そうか」


 ムツキは自他ともに認める最強である。それがスローライフや自身のハッピーエンドにある程度役立っていると言われてしまえば、彼は納得せざるを得なかった。


「だからこそ、私は誰よりも大きな力を手に入れればいいと確信できました」


「ちっ……若干、面倒そうな話になってきたな。ニド、何を考えている?」


 クーはニドの言葉に嫌悪感を乗せた声色で会話に横入りする。


「クー様の言う通りで間違いないですな。あなた方にとっては大変面倒な話でしょう」


「クーの言っているとおり、ニド、どうするつもりニャ?」


「ふーむ……」


 クーとケットの問い詰めにも、ニドは焦る素振りもなく、時折考え事で上の方に視線を向け、やがて考えをまとめられたのか、ゆっくりとした動きで再び話し始める。


「まあ、まあ、お待ちください。結論を急ぎたいのは重々承知ですが、これは報告ではありません。そう、お話です。お話は流れに沿って話さねば分からなくなりますぞ」


「本当は、俺たちはお喋りに来たわけじゃないんだがな」


「はっはっは。急いては事を仕損じますぞ。それとも、私のすることに興味がなければお帰りいただいても結構」


「ちっ」


「ふふふ……では、続けましょう。まず、私は最近、実に素晴らしい能力を得ました」


 ニドがそう話し始めてから、何もなかった場所にうねうねとした触手が1本また1本と生え始める。色とりどりの触手は鮮やかさよりも不気味さを映し出していた。


 何もない所から触手だけが生成される。


 本来、【触手生成】を持つアニミダックがいなければ起き得ないことが起き、そのあまりの衝撃にムツキ、ケット、クー、アルが身構えた。


「え……それは触手か?」


「ええ、その通り。アニミダックの【触手生成】です」


 ニドはムツキたちの驚きの顔に少し快感を覚えたのか、先ほどよりも口の端が上がりつつ、そのしたり顔で触手の変化を続ける。


 色とりどりの触手がそれぞれ単体もしくは複数が集まって、自身の形をぐにゃりぐにゃりと変化させていく。そうしてできあがったのは、単色もしくは複数の色が散りばめられた毒蛇のような姿に変形した触手だった。


 うねうねとした動きは触手よりも毒蛇の動きに近くなり、いつの間にかムツキたちを取り囲むように動き回る。


「触手が変化して蛇のようになった?」


「ええ、これはレブテメスプの【創造の両腕】を変えた【創造】によるもの」


「他人の固有能力を真似ることができるのですか?」


 アルがそう訊ねると、ニドはフッと小さく息を吐いた後に笑みをさらに色濃くして頷く。


 ニドの持つ【適応】の範囲は固有能力に限らないが、アルのその一言で苦も無くミスリードを生まれさせることができた。


「まあ、だいたいそのようなものです」


「真似るにも何か条件があるんだろう?」


 クーの問いに反応し、ニドは視線をクーに向けた後、目を閉じて笑う。


「はっはっは。さすがに種明かしはしませんな。あくまで話の流れを説明するために必要な情報だけ」


「……厄介なやつだ」


 クーは履き捨てるように言葉を言い放つ。


 中途半端な情報を与えられることは、全く知らない状態よりも事態が複雑化しやすい。対策を打たなければいけないと思わされつつ、情報が不足しているために下手な対策を打ちやすくなったり、必要以上の対策を練って時間や体力、資源を浪費したりするためだ。


 だが、同時にクーは内心安堵していた。ニドから十全な情報を得たと思って対策してしまえば、それこそニドの思うつぼになる可能性もあるからだ。情報が不足していると頭の片隅に置いておけば、とっさの対応もまだ打ちやすくなる。


 ニドもまた、嘘の情報を加えようかとも考えたが、嘘を吐き続けることでボロが出て計画が狂う可能性も考慮した結果、嘘を吐かずに中途半端な情報を出すだけに留めた。


「ですが、欲しい固有能力だけは教えて差し上げましょう」


「……はっ! まさか、俺か?」


 ムツキはニドからの攻撃がくるかもしれないと思い身構える。最強である自分の何らかの真似をされてしまうと、明らかに不利になると警戒を強めた。


「……いえ、ムツキ様の能力ではありませんね。というよりも、私の見立てでは、あなたに固有能力はありません」


「……へ?」


 ニドの口から出る予想外の言葉に、ムツキは思わず素っ頓狂な声が出た。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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