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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第5部2章 毒蛇の王ニドの計画始動

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5-21. 疑念は曖昧より明瞭で(2/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ニドが棲む地底湖のある場所は、高さも広さも十分にあり、洞窟内といえども閉塞感は通路より断然少ない。本来、その広い空間にはニド以外に数多の毒蛇たちが棲みつき、何かあればその毒蛇たちがぞろぞろと幾重にも重なりながら出現する。


 しかし、静かな空間は静かなままで、ムツキ、ケット、クー、アルがおり、そして、ニドが彼らに相対するように見合わせている。


 ムツキとケットは微笑みながら口を開く。


「ニド! 久しぶりだな!」


「これは、これは、ムツキ様。お久しぶりですな」


「ニド! 元気そうだニャ。変わりはニャいかニャ?」


「ケット様まで。はっはっは、いやはや、おかげさまで特段の問題もなく過ごしておりますとも」


 ニドは全員をまとめて丸呑みできるくらいに大きな口を開けて笑う表情を見せつつ、静かな口調で答える。


「今日は突然来て申し訳ニャいニャ」


「ええ。来ていただくことは構いませんが、予想だにしておりませんでしたから、来客用の茶請けなどはご用意しておりませんでね」


「そんニャ気遣いは無用ニャ」


「そんなもの一度も出してもらった覚えはないがな。一応気に掛けるだけの素振りは見せるんだな?」


「お、おい、クー」


 ニドは舌をチロチロと出しながら、ケットと流れるような会話をしていく。ニドは嫌みにも聞こえるちょっとした冗談を挟む話し方だった。クーとも似たような部分はあるものの、見た目のせいか、クーよりもニドの方が強く当たっている口調のように思えてしまう。


「はっはっは、クー様も律儀に反応なさる。冗談ですよ、冗談。私も冗談くらいは嗜んでおりますからな」


「笑える冗談だけならいいが、余計なお喋りをする舌は切り取った方がいいんじゃないか? まあ、お前は何枚舌があるか分からんけどな」


「はっはっは、それこそご冗談を。私の舌はこの通り1枚っきりですな。先端は少し分かれておりますけどね。それよりもクー様こそ、その開けば皮肉と悪態ばかりの言葉ばかりが出てくる口を少し閉じてみてはいかがかな?」


 ニドはクーの目の前まで顔を寄せて、再度大きな口を開いて、舌を見せつける。傍から見れば、大きな毒蛇に大型犬が今にも食われてしまいそうな雰囲気だが、クーが動じた様子もなく、ニドの舌を一瞥してから少しも変わらない口振りを披露する。


「たしかに、見える舌は1枚のようだな。あと、喜べ、皮肉と悪態だけの口はお前専用だ」


「なんと! きっちりと使い分けられているようで安心しました。誰彼構わずそのような物言いなのかと思いましたが、普段はその笑った表情に合わせた口をしているようで何より」


「そこまでニャ! 話が先に進まニャいニャ。楽しいお喋りは終わってからにしてほしいニャ」


 ケットもまた皮肉を利かせた口ぶりで、ニドとクーの熱を下げようとする。


「…………」

「…………」


 すっかり冷めきったように見えるニドとクーはそれぞれ1歩ずつ下がる。代わりにケットが一歩前に進む。


「オイラたちが言いたいことは要望1つと質問1つニャ」


「さようでございますか。なんなりと」


 ケットの言葉を聞き、ニドは恭しく頭を垂れて次の言葉を待つ。


「まずは毒蛇がご主人の家やその周りに近付かニャいようにしてほしいニャ」


「そうなんだ、ニド、頼むよ。俺も困ってしまう」


「いやはや、そうでしたか。ナジュミネ様でしたかな? その方に悪いことをしてしまいましたか?」


 ニドは頭を上げることなく、少し驚いたような言葉を発した後、申し訳なさそうな言葉で繋げる。


「よく分かっているじゃないか」


 クーは「それくらいは理解しているのか」と続けて言いたげな言い回しをする。


「もちろん。ムツキ様にも言われておりましたからな。すみませんね、おそらく若い同胞が誤ってそちらの方へと行ってしまったのでしょう。血気盛んな若者はどうしても禁じられたものを追い求め、禁じられた場所に入ってしまいますからな」


 ニドは謝りつつも悪びれた様子がなく、にたっとした湿度の高い笑顔を貼り付けている。


「そうだとしても、毒蛇の王たるあなたにしっかりしてもらわねば困ります」


「アル様。そうですな。再度伝えておきましょう。で、それが要望とすると、質問とはなんでしょう?」


 クーは引っ掛かる。ニドは伝えるとは言ったが、取り締まったり、改めたりするという確約をしていない。ニドお得意のはぐらかしであり、何かを企んでいるときのクセであった。


「この洞窟、いつもみたいに毒蛇の気配がしニャいニャ。何か大変なことや困っていることが起きているニャら言ってほしいニャ」


「いえいえ、大変なことも困っていることもございません。ただ、彼らには準備をしてもらっています」


「準備ニャ?」


「そうです。準備です。ちょうどいい。まだ時間もありますし、ムツキ様もおりますから、少し昔話でもしましょうか。ケット様、よろしいですかな?」


 ニドがわざわざケットに訊ねる。このことが昔話の内容が何かを確定させて、ケット、クー、アルに衝撃を与えた。ムツキは聞けずじまいの「あれ」のことなのかもしれないと勘繰っている。


「ニド!」

「ニド!」


 クーとアルが威嚇にも似た叫び声を上げてニドを睨み付けると、ケットはゆっくりとした動作で制止する。


「……オイラは構わニャいニャ」


「ありがとうございます。では、昔話をしましょう。私がここに来ることになった発端を」


 ニドは時間つぶしとばかりにムツキに語り掛け始めた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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