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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第5部1章 ムツキと笑い合える仲間たち

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321/360

5-16. 世界樹は平常より微かな異常で(2/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 お喋りリスがいなければ風の流れることによって奏でられる音やその風で揺れたときの葉音くらいしかないような静かなはずの世界樹の根元で、普段は聞き慣れない甘ったるい声がする。


「んっ……んんっ……あはっ……くすぐったい……んうっ……あっ……あっ……んんっ!」


 声の主はユグだった。世界樹の精霊であるユグが痛覚や触覚を持ち合わせていることも、その場にいる全員が驚きを隠せないものの、それ以上に少女のような姿にはあまり相応しくない艶やかな嬌声が小さく響いている。


 その声をあげている理由がムツキの触診である。


「……この絵面は中々ひどいですね。いえ、むしろ、ひどいという言葉だけで片付けてよいものか……」


「サラフェに同意します……さすがにちょっと……」


 サラフェとキルバギリーがなんだか見てはいけないものを見てしまっているような強張った表情を浮かべており、その視線の先には真剣な眼差しでユグに触診を行っているムツキがいた。


「…………」


 ムツキはムツキで気を抜けばすぐにでも泣きそうなほどに自分の現状を嘆いていた。


「ムッちゃんが……木の精霊とはいえ、裸のように見える少女の身体をぺたぺたと触って、変な声をあげさせている成人男性にしか見えないものね……。それに木の精霊がユウ様を模しているから、私にもキルバギリーにもそこそこ似ているってところが、ちょっとだけこう……何とも言えない気分になるわね」


 リゥパは目の前の光景に少なくとも笑顔を浮かべることはしなかった。


「旦那様がそういう嗜好を持つ変態にしか見えないな……そうじゃないはずだが……」


「ダーリン……やっぱり……ちょっと幼い方が? でも、違うよね?」


「ハビーはそうじゃない……多分……そうじゃない……」


 ナジュミネもメイリもコイハも信じると疑うとの狭間で揺らいでいる。


「…………」


 言われっ放しのムツキは最愛の女の子たちの口々からそのような言葉を言われて傷付いていた。彼が一番絵面にこだわっていて、そういう風に見えないようにユウには厳しく、幼女姿で夜の営みをしないように忠告している。


 しかし、ユグが急に大人の姿になれるわけでもなく、それでも彼が世界樹の異変の可能性を放っておけるわけもないためにこのような絵面になってしまうのだった。


「……ユグ、早く成長してくれよ?」


 ムツキは泣けるものなら泣きたかった。


「んふっ……あふっ……お、おう! オレの成長速度は……あんっ……いっ……んんんくっ……中々だからな!」


 ムツキは今の絵面ばかりを気にするが、ユグが今の少女のような姿から成人の女性の姿になったところで、女性に触診をする成人男性として冷たい目で見られることは間違いなかった。彼は世界樹の管理人である限り、この状況を避けることができないのである。


 本当は世界樹そのものに触れればいいだけなのだが、ユグの全身を触ることで世界樹の全体を触っていることと同義になるため、極めて効率が良い。加えて、目の前にユグがいることで、全員の目と注意がユグに向けられてしまっていることもこの状況をつくっている。


「……それはそうと、たしかに世界樹の魔力の流れがいつもとちょっと違う感じがするな……。特に足の方ってことは、世界から魔力を吸い上げる方か……そうすると、世界樹や樹海だけじゃなくて、ほかの地域で起こっている異変かもしれないからな。ちょっと調べてみるよ」


 ムツキの触診が終わり、危ない絵面は終了する。一番ホッと安堵で胸を撫で下ろしているのは他でもない彼自身である。


「本当に終わって喜んでいるのかしら?」


「そういうパフォーマンスの可能性も……」


「それはあり得ますね。マスターは美しい女性やかわいらしい女性の守備範囲が広すぎますから」


「いや、待て待て、旦那様に限って、そんなことは……」


「ダーリンは大丈夫……きっと! うん……きっと……」


「みんな、ハビーを信じようぜ? もちろん、俺も……信じている……」


 女の子たちの視線はまだ冷たい。


 それとは逆にユグは、自分のことを心配してくれているムツキに全幅の信頼を寄せて、満面の笑みで彼を見ている。


「助かるぜ! またよろしくな!」


「またはちょっと……いや、まあ、それじゃ、今回はこれで調査をおしまいにするか。さて、時間もあるから、たっぷりお話をしよう」


「本当か!? やった! こんなに大勢なんだから、そっちの話を聞かせてくれよ」


 ユグはラタとのお喋りに慣れてしまったためか、自分から話すよりも人の話を聴くことに興味を持っていた。


 ムツキはユグの求めに応じて、自分も話をしつつ、ほかの女の子たちにも話題を振って、ユグの笑顔が絶えないように気を配って陽が沈むまで話を盛り上げていた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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