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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第5部1章 ムツキと笑い合える仲間たち

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5-12. 準備は本人より適任者で

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 季節は雪深い頃から雪解けの頃へと変わる。世界樹の樹海は世界樹の力によって常に気候が一定に保たれているものの、一歩外へ出てしまうとその力の影響が及ばない。


 ムツキの家は樹海の外にある大草原の中にポツンと建っている一軒家のため、寒暖の影響があるのだが、ムツキもまるで世界樹のように自身の魔力で居住スペースや妖精たちが営んでいる牧場や田畑を保護している。


「遊べる雪はすっかり消えてしまったか。まあ、いざとなったら永久凍土の土地まで行って遊べばいいか」


 ムツキはまだ何とか原形を留めている雪だるまやかまくらを見て、しみじみと雪の楽しさを思い起こしていた。彼らは雪合戦も何度もしたし、この世界になかったウインタースポーツも彼が教えることで全員が楽しさを知った。


「1年前の静けさが嘘のようだな」


 ムツキは目の前にあるお気に入りのロッキングチェアに腰を掛けて、ゆっくりと前後に椅子を揺らしながら思いを馳せた。


 第二夫人であるナジュミネが家に来てから続々と増えて、今では7人もの妻ともパートナーとも言える女の子たちが彼の傍にだいたいいるが、彼女たちが来るまでの間はケットやクー、アルたちを含む妖精たちとユウが主な遊び相手だった。それでも足りなければ、樹海に棲む妖精たちと会話や遊びを楽しんでいたのだ。


 それがたった6人増えただけなのに、彼は樹海に行かずとも5倍も10倍も忙しくも楽しすぎる日々になっている。それまではどちらかと言えば、楽しいよりもゆっくりとしていてまったりともしていたスローライフらしいスローライフを送っていた。


「静かなスローライフもいいが、賑やかなのもいいことだな。落ち着かないこともあるが、家の中がより明るいのはいいことだからな」


 ムツキは誰に言うでもなく、独り言を暖かなそよ風に乗せるように呟く。言葉が遠くへ去っていった後に扉の開く音がした。


 彼が振り返ると、ケットが現れた。黒い毛並みは短く整えられていて、チャームポイントでもある唯一白い毛の胸元のフワモフの毛をちゃちゃっと整えながら、ケットが後ろにそこそこ大きなリュックサックを背負って彼の前まで歩いてくる。


「ここにいたニャ。ご主人、準備ができたニャ」


「あ、ありがとう。いつも準備までしてもらって悪いな」


 準備とはムツキが隔週で定期的に行っている樹海の調査である。樹海を24の区画に分けて、その1区画を2日から3日ほどかけて、異変や困ったことがないか見て回るのである。つまり、彼は10日ほど家に滞在し、2日から3日ほど樹海の調査をしたら、また10日ほど家に滞在して、という生活を繰り返している。


 もちろん、平時のことであり、非常時の際には日程をずらしたり、ある時期にまとめたり、アルに一任したりと融通を利かせて行っている。


 樹海の調査は、彼が樹海の守護者であり、樹海の管理人であることを示しており、また、その自負と自覚を彼に生じさせているものでもある。


「ご主人は荷物を詰め込むのが下手ニャ……オイラやニャジュミネさんがするとこれだけで済むのに、ご主人がするとこの2倍は必要にニャるニャ……」


 ケットが背負っていたリュックサックをくるりと器用に自分の胸の前で抱えるように持ち直す。その後に、ケットが「小さく収納できているでしょう」と言わんばかりにリュックサックをぽんぽんと叩いていた。


 一方のムツキは、「ありがとう」と「ごめん」の2つの意味で、両手をピンと立たせて自分の目の前でピタリと合わせている。


「ありがとうな。まあ、うーん……収納下手の呪いとかはないはずなんだが……」


「普通にご主人が不器用ニャだけニャ……服を畳んでいるのにいつの間にか全部丸まっているのは不思議でしょうがニャいニャ……」


 ムツキには一人で生活ができないレベルの様々な呪いが掛かっているが、それがなくとも彼は壊滅的な不器用さのため一人で生きることが難しいと自他ともに認めていた。


 彼の不器用さは転生前の前世のときもそうだった。ただし、前世では親元で暮らしていたこともあって、家事とはほぼ無縁の生活を送っていたので問題がなかった。


「なんか……呪いがなくても不器用過ぎて一人じゃ生きていけない気がする……料理も呪われていなくてもできないしな……掃除もな……」


 自分で言って自分で落ち込むという負のスパイラルにはまり始めたムツキに、ケットはロッキングチェアに座っている彼の上に飛び乗って、その柔らかくて大きな肉球を彼の鼻のてっぺんに押し付けた。


「ネガティブ禁止ニャ。ご主人はご主人ができること、オイラたちはオイラたちができること、お互いに協力し合って生きることが大事ニャ! ニャんでもできればいいってことでもニャいし、ニャんでもできニャきゃいけニャいこともニャいニャ。だから、一人……独りで生きていくとか寂しいことは言わニャいでほしいニャ」


 ムツキはケットの頭から背中までをゆっくりと撫でながら気持ちを落ち着かせる。


「そうだな。ありがとう。あ、話が変わるけど、ほかのみんなも準備ができているか、知っているか?」


「もちろん、バッチリニャ。というか、準備を人任せにしているご主人が言うことじゃニャいニャ……」


 ケットは優しいが甘いわけでないので、慰めることもすれば現実を無慈悲に叩きつけることもする。


「うぐっ……返す言葉もないな……この肉球も申し分ないな」


 ムツキは精神的なダメージを受けつつも肉球の柔らかさで幸せな気分にもなるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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