5-6. 雪合戦は遊びよりも本気で(2/4)
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楽しんでもらえますと幸いです。
三つ巴戦は難しい。敵の敵もまた敵であり、どちらか一方を攻めている隙に別方向から攻められる可能性もあれば、一時的に仲間のようになってまずは1チームをとにかく当てるように動く可能性もある。
さらに、雪玉ヒットによる途中退場がないとなおのこと難しい。一度当たったら終わりというわけではないために攻めに攻めて攻めまくる手段も残されているが、当たり過ぎれば勝ちを逃すことは必至である。
「試合開始いいいいいっ!」
アニミダックの叫び声とともに試合開始となり、十分に広いフィールドの中で各々が動き出す。
ユウとコイハはひとまず中央へと近付いていき、リゥパとキルバギリーもまた中央に近付いていく。ムツキとナジュミネはこの2チームがまずぶつかることになりそうだと思う。
サラフェとメイリは、メイリがサラフェに何か耳打ちした後に、サラフェが少し考えている様子を見せてから首を縦に振っていた。
「ナジュはどう見る?」
ムツキに急に話を振られたナジュミネは少し考えてからゆっくりと口を開く。
「ふむ。難しいところだが、手堅いのはリゥパとキルバギリーかな。遠距離を得意とするリゥパの命中精度は高いと見る。キルバギリーも遠距離攻撃は扱うから悪くないだろう。だが、正攻法しか手段を持たない点では、以前のビーチバレーの時と同様に難しい戦いを強いられるかもしれないな」
ムツキとナジュミネは戦場に視線を移す。
「リゥパさん、ユウさんとコイハさんを発見しました!」
「分かったわ。作戦を決行するわよ」
「承知しました! スノーボール、ラピッドファイア!」
キルバギリーはユウとコイハを見つけると雪玉仕様にした射出装置を2つ構えて、直線的な剛速球を次々と撃ち放っていく。それらがすべて雪壁に阻まれるものの、ユウとコイハが雪壁から出にくい状況を作り上げていた。
そこにリゥパの上空から落ちてくるようなロブショットが雪壁を悠々と超えて隠れている場所へと降り注ぐ。
「あわわ!」
「ユウ、一旦、退くぞ!」
ユウとコイハはいくつかの雪玉に被弾しつつ、一旦、雪壁を間に挟むようにして後退していった。
「ふむ。ユウとコイハは?」
「うーむ。ユウは魔法の使い方次第だな。コイハだと正直難しいが、ミクズだと狐火による分身が手強いだろうな」
ナジュミネが一旦後ろへと退いたユウとコイハを見ていたところ、ある場所で2人が足を止めていた。
「リゥぱんとキルちゃんの戦法は分かったから、これから反撃するよ!」
「おう! ミクズ! 頼むぞ!」
ユウは【レヴィテーション】で雪玉をいくつも浮かして戦闘準備を始め、コイハは雪のように真っ白な仮面を装着する。
白面の装着がミクズへの交代の合図だった。
美しい体毛を全身に纏っていた白狐から、白銀の長髪と狐耳を有して金色の尻尾を9つも広げる見目美しい白狐の半獣人が姿を現した。
「ユウ、気取られるでないぞ?」
「もっちろん!」
ミクズは【狐火】を使い、自分とユウの分身を作った上で、リゥパとキルバギリーの周りを素早く取り囲む。【狐火】の雪玉はヒットに含まれず、【狐火】の分身体が当てる雪玉もヒットに含まれない。
しかし、ヒットに含まれないだけで、当てていけないことはない。
「ま、まさか……」
「くっ……本物の特定が追いつきません!」
リゥパとキルバギリーの顔がみるみるうちに青ざめていく。
「さっきのお返しだよ! 【ホーミング】!」
「雪に埋もれるほど雪玉を喰らうがいい!」
ミクズやユウ、2人を模した数十人の分身体が一斉に四方八方から、リゥパとキルバギリーに向かって想像を超える数の雪玉を投げつけていく。【ホーミング】の魔法が付与された雪玉たちはたとえ明後日の方向へと投げられても自動で彼女たちを追尾していった。
「あたたたたたっ! 当たる数が半端ないわね!」
「リゥパさん、一旦引きましょう!」
実際に当たった雪玉の数よりも当たったと判定される回数はかなり少ないものの、一旦視界から外れたユウとミクズの本物を特定することがリゥパとキルバギリーにとって難しく、逃げるしか手段がなかった。
リゥパとキルバギリーは応戦しつつ、一点突破でユウとミクズの包囲網から脱する。ユウとミクズは再度取り囲もうとして動きを変えていく。
「なるほど、ミクズがカギか。サラフェとメイリは?」
「普通に考えれば、一番勝ちが薄いチームだが、メイリの奇抜なアイデア次第では十分に渡り合えるだろうな。サラフェは素早いから、その素早さが雪上でも発揮できればあるいは、ってところだろう」
「イタズラ隊長メイリの本領が発揮されればって感じか」
そこでふとナジュミネはあることに気付いた。
「あれ? メイリとサラフェはどこへいった? 旦那様、2人を見ていたか?」
「いや、あれ? 戦場に見当たらないな」
ユウとミクズ、リゥパとキルバギリーの戦いを見ている間に、サラフェとメイリがいつの間にか戦場から見えなくなっていた。
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