4-Ex15. 外だから抵抗があった
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楽しんでもらえますと幸いです。
こうしてナジュミネ&サラフェと狐ナジュミネ&狐サラフェのビーチバレーによる戦いが始まるかと思いきや、話は服装に至って、難航していた。
「このままじゃダメなのですか?」
「ダメに決まっているのじゃ。ビーチバレーは水着でやるものだと、前にユウとハビーが言っておったのじゃ」
狐サラフェはカラフルなビーチバレーボールをくるくると指の上で回転させながら、ナジュミネとサラフェに水着に着替えるよう強く念押しをしている。
「と言っても、水着など持ってきていないですし、誰が見ているわけでもないのですからいいじゃないですか」
その押しの強さにナジュミネとサラフェは目をぱちくりとさせながら、どうしたものかと唸っている。水着など用意しているわけもない2人はどうにか今の格好でできないものかと説得材料を探している。
「じゃあ、暑苦しいから下着でしてもらおうかのう?」
「なんで下着姿にならなきゃいけないのですか! さっき、あなた自身が水着って言っていましたよね!」
サラフェは下着姿の自分を想像して断固拒否の姿勢を取る。強行されてしまうと、彼女は自分の髪や瞳の色よりも淡い感じを持つ水色の下着姿という出で立ちで動き回らなければならなくなる。
「誰が見ているわけでもないのじゃろ? それに水着も下着も似たようなもんじゃ」
「待て、待て……下着は隠すもの、水着は見せるものだ。それに、さすがに乙女が下着姿で外を動き回るのはな……仮に他の目がなくとも嫌だろう……」
ナジュミネは自分の髪や瞳の色と同じ真っ赤で派手めな下着を身に着けていた。彼女は命の危険がある戦闘時こそ下着だろうが裸だろうが羞恥を捨て、目の前の戦闘や敵を優先させることができるだろう。
しかし、今はビーチバレーをしようと言うのだからそこまでの覚悟は持てなかった。
「じゃあ、狐火に【変化の術】を使って水着にしてやるから、それでいいじゃろ?」
ナジュミネ、サラフェ、メイリの時間が一瞬だけ止まった。
「……それで騙して裸にしないだろうな?」
「そんなこと誰もせんわ」
ナジュミネの問いに、狐ナジュミネは小ばかにするようにナジュミネにそう返事をした。すると、ナジュミネは首を横に振る。
「誰もではない。そこに前科持ちがいる」
「……えへへ」
ナジュミネとサラフェが綺麗な瞳で睨む先はメイリだった。メイリはバツが悪そうな様子で薄ら笑みを浮かべている。狐ナジュミネも狐サラフェもいぶかし気な面持ちだ。
「メイリがか? 我は知らんが?」
「コイハがいないタイミングだったな。急にファッションショーをしようとか言って、旦那様を審査員にして、ちょうど妾とサラフェの2人にだ……リビングでしかも旦那様の真ん前で裸にしたのだ……」
ナジュミネとサラフェが思い出して怒りが込み上げてきたのか、2人の拳が若干震えている。
「えっと、姐さんとサラフェが、きゃあああああ、って滅多に出さない声を出していたよね。ダーリンだって、かわいい声が聞けて良かったって言ってたじゃん」
「あれはメイリを庇うために旦那様が優しさで言っていたんだぞ……。まあ、旦那様とここにいる3人以外がいなかったし、さっきも言ったように旦那様がメイリを庇ったから、妾はまだ許したが、サラフェなんかメイリの頭を丸めようとしていたよな」
「ええ。あの時は殺意すら覚えましたよ……ムツキさんに懸命に止められていなければ、メイリさんの髪は今よりかなり短かったでしょうね」
ムツキはその時に苦労した。
ナジュミネは彼が言いさえすれば、大抵のことを水に流せるし、さらに彼がその分だけ甘やかすなら機嫌もすぐにご機嫌になる。しかし、サラフェの方はそう簡単ではなかった。その当時の彼女はまだ素直になれていないため、彼もどう落ち着かせようかと思案したのだ。
結局、何故か彼がメイリと一緒になって謝り倒したため、サラフェも彼にそこまでさせておいて許さないわけにもいかないという気持ちになって許したのだ。
「も、もう過ぎたことだし……」
さすがに2人のキレっぷりに、メイリは2度とそういう種類のイタズラをしないと心に誓った。ただし、そういう種類だけである。
「それはされた側の言えるセリフだからな」
「サラフェもそう思います」
「ううっ……」
「ええい、進まん。お主らは早くハビーを取り戻したいのか戻したくないのか、どちらなんじゃ!」
痺れを切らした狐サラフェが声を大きくして3人の会話を中断させる。
「仕方ない。【変化の術】で水着を用意してくれ」
「よしきた。2人とも、前と同じでいいか?」
「そうだな。それでいい。あ、あと、簡易更衣室も出してくれ。誰もいないからって外で遮蔽物もなく着替えるのは」
「ええい! やかましい! 分かった、分かった! それも用意してやる!」
その後、ナジュミネとサラフェは簡易更衣室も用意してもらって無事に水着に着替え終わるのだった。
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