4-Ex9. 限度を超えたから許さなかった
約3,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
フレスが騒ぎながら逃げ去った後、ムツキはリゥパを抱えて、花畑に降り立とうとしていた。リゥパはすべてが終わった感じがして、普段の様子にすっかりと戻ってしまう。
「ところで、子ども状態のムッちゃんにお姫様抱っこされるなんて、嬉しいなー♪ 逃げちゃった私が悪いけど、この衣装もちゃんと楽しんでなかったし♪」
リゥパはムツキにギュッと抱き着いたり、自身の腕を彼に絡めたりとせわしなく動き始める。
「ちょっと、そんなに動かないでくれよ」
「このままキスしちゃおうかな♪ ちょっと体勢が大変だけど」
「お、おい、今は、そういうのはダメだって言ったろ?」
「えー、知らないな♪」
少し暴走し始めているリゥパを嗜めるようにムツキが諭すも、彼女はとぼけた様子で彼の困った顔を楽しんでいた。
「ちょ、ちょっと、ダメだって……優しく言っても聞かないなら怒るぞ?」
「んふふ……怒るってかわいいー♪ 子どものムッちゃんが怒っても怖くないわよ? ほーら、チュー♪」
ムツキがリゥパを落とさないように必死になっている中、一方の彼女は手を彼の頬に当てて、唇を近づけようとする。
「リゥパ……そろそろ……俺も怒るぞ?」
ムツキの声色が少し低くなるが、リゥパにとっては子どもの声で多少低くなっても怖くなく、ちょっと怒って可愛らしい程度にしか思えなかった。
しかし、それは彼の最後通告だった。
「えー……ふふっ……そうなの? 怒らせちゃおうっかなー♪」
「…………」
ムツキの表情が冷たい笑顔に変わり、花畑に降り立った途端に、リゥパを組み伏せた。彼は彼女の身体の上に乗り、その小さな右手で彼女の両手首を押さえている。
「え、ちょっと……え、え……え、ちょっと、ビクともしない……」
リゥパは足をじたばたとさせるものの、ムツキには攻撃が無効化されるためか、せっかくの長い脚も彼に当たる様子がない。
しまった、やりすぎた、と思う彼女は遅すぎた引き際を少しばかり後悔する。
「いつも優しくしているからって……子どもだからって……侮ってもらっちゃ困るな……」
「な、なにをするの……? え、制限の指輪を外した……の……?」
ムツキはいつの間にか、制限の指輪を外し、【友好度上昇】の制限を取り払った。彼はそのまま冷たくも優しい笑顔でリゥパの顔に至近距離まで近づける。
彼女の鼓動が早くなり、彼女の劣情は目の前にいる少年姿の伴侶に向けて徐々に増幅されていく。彼女の顔は赤くなったままに動けない身体がもじもじと動き出す。
「俺だって……今、ムラムラしているのをすごく我慢しているんだぞ? でも、いろいろと気を遣っているんだよ……なのに、そっちからは何も気にせずに挑発してきて……ひどいと思わないか? 俺が男だって忘れているのか?」
「我慢していたのね? てっきり子どもになったから、そういうのはないのかと思ったんだけど……そうとは知らずにごめんね……」
リゥパはこの状況下に少しでも懐柔できないかと模索するも、気持ちがどんどんと昂っていく。今すぐにでも目の前のムツキを好きなようにしたいが、そうならないもどかしさに身体がさらによじれていく。
「謝っても許さないぞ?」
「え……」
「さっき俺のことをSって言ったよな? まあ、そういう部分もあると思うぞ? だから、ちょっとだけお仕置きだ。リゥパをちょっと操るぞ」
ムツキはナジュミネの時に油断と焦りから彼女を制御できずにされるがままになっていたが、【友好度上昇】を最初から制御できていれば、劣情を催させながらも手を出させないこともできることに気付いた。
普段の彼ならこういうことをしようとも思わないが、怒りが勝ち、意地悪な笑みを零す。
「あ……ふ……くふぅ……こんなの……ひどい……」
リゥパは理性と本能の均衡が崩れ去ろうとしており、少しばかり息が荒くなるも身体を自由に動かせない。
徐々に甘い息が零れていく。
彼女は激しい劣情を催し、ムツキ以外が見えなくなり始めるも、何故か手を出そうという気持ちになれずにもどかしさが彼女自身の中でぐるぐると巡っていた。
「……よし、まずは、これくらいでいいか。というか、これ以上は危険だな。さて、リゥパ、この後は俺が元に戻るまでリゥパから俺に触れるのは禁止だ。これはお願いじゃないからな。絶対だ。それで、俺が元に戻ったら、俺の好きにさせてもらう」
「……好きにって……どんな……」
ムツキの意地悪な笑みがまだ残っている。
「詳細なんて聞いてどうするんだ? リゥパに拒否権はないんだから、その時でいいだろ……いいな? その時は俺の言うことを絶対に聞け……」
普段されることのない命令口調にも、リゥパは嫌悪感がなく、むしろ、どこか高揚感を覚えていた。
「う、うん」
「返事が違うぞ? はい、だろ?」
実はこのムツキの行動はリゥパの親友であるルーヴァの入れ知恵でもあった。ルーヴァはリゥパの年下から責められたい欲に気付き、彼にそっと入れ知恵をしていたのだ。彼は当初それをする気にならなかったが、怒りも手伝ってか、役者のつもりで演じている。
つまり、この状況がリゥパにとって、夢にまで見たシチュエーションであり、彼女はほぼ恍惚状態に陥っている。
「は、はひ……強引なムッちゃんも……いい……これ、本当に……現実なの?」
「強引なのが好きか、それはよかったな。だけど、子ども相手に何もできないのはちょっとした屈辱だろ? されるがままになったら、リゥパはどうなるかな?」
ムツキはリゥパの表情と様子から上手くいったと確信したのか、少しだけ意地悪さが薄れた優しい微笑みになっていた。
誰も困ることのない状況だが、彼女はこれから彼が良しと言うまで悶々としなければいけないことを失念しており、これから彼女にとって地獄のような日々が待っている。
「ムッちゃん……」
「ん?」
「責める時は名前じゃなくて、貴女って呼び方でちょっと雑めに言ってほしい……あと、丁寧な口調だともっと素敵……」
「……注文が多いな。丁寧な口調ってアルみたいな感じでいいのか。……意外と余裕があるのですね」
2人はシチュエーションに酔っていて、ムツキもリゥパのリクエストに応じ始めている。お互いにいつもと違う状況に高揚しており、周りに誰もいないために留まることなく加速していく。
「でも、もう終わりにしてくれるなら、どいてほしいな?」
「……誰がもう終わるなんて言いましたか? お楽しみはこれからですよ? 貴女も私の今の悶々と過ごさなければいけないもどかしさをもっと味わってください。そう、私が戻るのだけを待ち侘びるように、ね」
ムツキはリゥパの手を解放するも、まだ組み敷いたままで抵抗できないままの彼女のいろいろなところをそっと触り始める。ただし、直接的な場所に触れることは避けた。
「え、まさか……こんなところで!?」
「みんな、逃げたのでしょうから、誰も見はしませんよ。それに、大丈夫。仮に見られても問題のない場所しか触りませんから。ほら、たとえば、そのエルフ特有の長いお耳とか、ね」
「あふっ……あ、そんなところ……あ……」
太陽が天頂まで昇る頃まで、誰も近付いて来ない場所で2人きりを存分に楽しんだムツキとリゥパだった。
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