4-2. 季節も変わってきたから少し体調が崩れた(2/2)
約3,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
「おー! ナース服なんてよく知ってるね!」
「……なんでナース服?」
「ナース? みんな、その格好は一体?」
ユウはナース服に感動し、ムツキはナース服に疑問を持ち、ナジュミネはナース服そのものを知らないためになぜそのようなものを着ているのかという表情になる。
「昔、ユースアウィスに教わった病人を看護する際の作業服らしいからな。異世界ではそうだと。さっきそれを教えたら、全員分を用意したらしい」
女の子たちの後に出てきたのはアニミダックというムツキによく似た魔人族の始祖の1人である。
彼はムツキよりもひょろっとしていて背が高く、色白の顔、黒い瞳、瞳の色に負けないほどに目元の濃いクマをしている。
彼はユウの元カレの一人であり、今でもユウのことを愛している。以前、彼がユウを取り戻そうとした。その時にムツキや周りの女の子たちに迷惑を掛けたことの反省が必要ということになって、現在は更生中の身としてムツキの家で使用人のようなことをしている。
なぜか彼までナース服を着ており、その膝まで伸びた黒い髪や男性的であるものの少し整った顔もあって、そこまで違和感のない仕上がりになっていた。
「ぷっ……アニミダックも着ているの? ナース服は女の子が着るもので、アニミダックは着なくていいんだよ?」
ユウはアニミダックのナース姿にこらえきれずに吹き出す。ただ、単純に異質な面白さというよりは、妙に似合っているところに面白さを感じている。
「そうなのか! って、俺は着たくて着たわけじゃねえんだよ……。看病のための荷物持ちで作業服を着せられたんだ。間違ってもコイツを看病する気はねえ!」
ユウに指摘を受けて、自分の誤解に気付いたアニミダックは顔を真っ赤にしている。
「ご主人、おかゆ持ってきたニャ!」
おかゆを持ってきたのは、黒猫のケット・シーだ。普段はケットと呼ばれている。
彼はほとんどの毛が黒色で、ただ胸元にだけ白いふさふさの毛を蓄えている。さらに、キラキラとする金色の瞳と、感情表現が豊かな2本の長い尻尾を持っている。2本の後ろ足で器用に二足歩行をしており、2本の前足はまるで人族の手のように動かしている。
彼もまた黒色のナース服に身を包んでいた。
「まだちょっと熱いから少し待った方がいいかもしれニャいニャ!」
ケットはただの猫ではなく、猫の姿をしている妖精であり、妖精族を束ねる王様でもあった。なお、エルフも妖精族の1種であるため、エルフは彼の傘下である。
彼はムツキのことをご主人と呼んで慕っていて、百匹以上の妖精たちとともに、ムツキの生活をバックアップする生活を続けている。
「主様、大丈夫か?」
ケットの後ろから現れたのは、碧色の毛並みをした長毛種の犬クー・シーである。普段はクーと呼ばれている。
彼はケットと同様に人語を理解できる上位の妖精で、犬の姿をした妖精たちのリーダーでもあり、ケットと旧知の仲で親友である。
彼はいつも笑っているような表情をしているが、特に何かが面白くて笑っているわけではない。彼は家の中だと大型犬くらいの大きさだが、象と同じくらいの大きさにはなれる。
彼もまた濃い緑色のナース服を着せられていた。
「マイロード! 樹海より薬草を持ってきました! 今からリゥパに薬を作ってもらいます」
クーの隣で薬草を高らかに掲げているのは、鋭く黒いツノを生やした山吹色のウサギのアルミラージである。普段はアルと呼ばれている。
彼もケットと旧知の仲で親友であり、普段はケットやクーが樹海にいない分、樹海の不法侵入者を取り締まる警備隊の総隊長としての役割を果たしている。
彼は黄色のナース服を着ていた。
「おー! もふもふがナース服なのはかわいすぎるだろ! コイハとメイリの時も思ったけど、これは我慢できない! 元気になるしかない!」
ムツキは無類のモフモフ好きであり、このモフモフたちのコスプレに自身の体調も気にせず起き上がろうとする。
「ムッちゃん! 病人はじっとしてなさい!」
「はい……」
しかし、リゥパが語気強めにムツキを制止したため、彼はすごすごとベッドの中に潜り込んだ。
「アル様、ありがとうございます。さーて、私の腕の見せ所ね」
リゥパはすり鉢とすりこぎ棒をどこからか取り出して、アルから薬草を受け取り、小瓶に入った液体を垂らしながらすりつぶしていく。途中で乾燥させた別の薬草を混ぜ合わせながら、ゆっくりと丁寧に工程を重ねる。
ムツキはじぃーっと見つめながら、ゆっくりと口を開く。
「……練れば練るほど」
「……毎回言うけど、色は変わらないわよ? たしかに色が変わるものもあるけれど」
ムツキの言葉に、リゥパは短く否定する。彼女は今、彼のために真剣に薬を作っているからである。もちろん、薬の配合はある程度適当でも薬効をあまり損なわない。
しかし、彼女は最高に効く薬を作るべく薬草と闘っているのである。
「うんまい?」
「苦いと思うわよ? ムッちゃん、いつも言うそれは掛け声か何かかしら? 異世界のルールなの?」
「いや、ルールってわけじゃないけど……名残ではあるかな……」
ムツキはリゥパに問われて口ごもった。
「ふぅん……さて、できたわ。これは食前の方が効果も高いから、おかゆをいただく前に白湯と一緒に飲みましょ。ムッちゃん、ちょっと起こすわよ。ナジュミネとコイハは支えていて」
「承知した」
「分かった」
「あぁ……二人ともありがとう」
リゥパは薬の出来が上々だったようで満面の笑みだ。彼女はナジュミネとコイハに指示を出し、二人はその指示に従ってムツキをゆっくりと起こす。
「サラフェとメイリ、薬と白湯を飲ませるの手伝って」
「はい。ムツキさん、白湯です」
「ダーリン、これが薬だよ。しっかり飲んでね」
「……うっ……苦い……」
メイリが薬をムツキの口の中にそっと入れ、サラフェが適温の白湯をゆっくりと彼の口にふくませていく。
「良薬は口に苦し、しっかりとした薬効のある薬草を持ってきてもらっているからね。はい。よく飲めました。偉い!」
「まるでお母さんだな」
思わずアニミダックはそうツッコむ。
「まだ何もやってない私がおかゆを食べさせるよ!」
「じゃあ、私はマスターの口に入る前のおかゆをフーフーします!」
ユウがおかゆを食べさせようとして、キルバギリーがそのおかゆを少し冷ます。
「無理に役割作らなくていいだろ……」
「みんな何かしらで旦那様と関わりたいんだ」
再びツッコむアニミダックにナジュミネは答える。彼女たちはムツキのために何かしらをしてあげたい気持ちが強いのだ。
「そういうものか……」
「モフモフ応援隊が来たニャ! 家の中だからポンポンフリフリで小さく応援するニャ!」
アニミダックがその光景を見て、理解したような理解できないような難しい顔をしていると、モフモフ応援隊がやってきた。
モフモフ応援隊とは、ネコさんチーム、イヌさんチーム、ウサギさんチームの3組で構成される歌って踊れるムツキを鼓舞するために結成された応援特化の妖精たちである。
「ニャ!」
「バウ!」
「プゥ!」
モフモフ応援隊は、家の中なので小さく両手を動かしながらムツキが元気になるように精一杯に応援していた。
「皆に看病してもらえて幸せだなあ……」
「いや、看病なのに賑やか過ぎるだろ……」
ムツキが感激のあまり、涙をほろりと出している中、アニミダックが冷静にこの状況にツッコんでいた。
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