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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第3部4章 ムツキと戻ってきた楽しい日々

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180/360

3-50. 強さを示した家の主だがやはり威厳はそんなにない

約4,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 とある朝。20歳前後の男がダイニングテーブルの椅子に座りつつ、黒い瞳を持つ切れ長の凛々しい目を右へ左へと忙しく動かす。彼は紫の短髪に前髪だけを少し長くして下ろしている髪形で、彫刻のように整っている顔がかなり困惑したような表情をしている。


「……みんな、ちょっと落ち着いてくれるか?」


 彼の名前は、ムツキ。この世界で最強にして唯一の転生者である。


 彼の名前を漢字で書くと1月を意味する睦月だ。男で睦月というのも中々なさそうなものだが、前世の両親からの、誰とでも仲良くできるように、また、尽きることが無い熱意を持ってほしい、という願いによって、至って真面目に付けられた名前である。本人もとても気に入っていて、転生後もそう名乗っている。


 彼のこの世界での目的は、スローライフを送ることである。それもモフモフやハーレム付きのかなり贅沢なスローライフなのだ。


「意見がないなら、ムツキは静かに待っていて!」


 語気を荒げるのは、この世界の唯一神である女神ユースアウィス、普段、ユウと呼ばれる幼女である。


 背中が隠れるくらいの長い金髪、透き通るような白い肌、ぱっちりなお目目の中には綺麗な青い瞳、お人形さんと呼ばれても遜色のない理想的で綺麗な姿である。


「そうよ! ムッちゃん、これは大事なことなの!」


 次にムツキにそう言い放つのは、リゥパという白い肌と長く尖った耳が特徴的な見目の美しいエルフである。


 若干スレンダーな体型、優しそうな丸みを帯びた目の中にある瞳の色や髪の色は淡い緑色、その淡い緑色の髪はショートボブで短く綺麗にまとめられている。


「というか、ダーリンも何か言ってよ!」


 ムツキに意見を求めているのは、耳、尻尾、肘から先の腕と手先、膝から下の脚と足先が狸のようになっている黒狸の半獣人であるメイリだ。


 彼女の肌の色や髪の色は黒く、少年のようなショートヘアに真ん丸な顔、真ん丸な目、真ん丸な茶色の瞳は小動物的な可愛さがある。ただし、その幼い顔立ちと低身長には似合わない大きな胸もあった。


「あー……」


 ムツキはユウ、リゥパ、メイリの言葉に思わず体を小さくし、その後、3人に見つめられる中、ゆっくりと口を開いた。


「……いや、俺は……家でゆっくりしていたいかなーって……」


「却下!」

「却下よ!」

「却下だよ!」


 ムツキの提案は即座に却下されてしまった。彼はがっくりと肩を落とす。


「そこは息ピッタリなんだな……そこまで強く言わなくても……」


「お出かけをするって言っているのにそんなこと言うからでしょ! ムツキがまたお出かけしてくれるって言ったんじゃん!」


「言ったけど……そうなんだけど……」


 ユウは容赦なくムツキを責め立てる。


「ちょっと! 最近、ユウ様の意見ばかり聞いてズルいわ! 私たちだってムッちゃんとイチャイチャしたいとか、一緒に行きたい場所にお出かけしたいとかあるのに!」


「そ、そうだよな……うん、そうだよな」


 リゥパはムツキの方を見て、最近の不平不満をぶつける。


「もう! ダーリンがそうやってなあなあにしようとするから、今こうなってるんだよ!」


「め、面目ない……」


 メイリは頬を膨らませて腕組をしながら、プンスカと怒っている。その状況で、アニミダックが現れ、遠巻きに眺めているナジュミネ、サラフェ、キルバギリー、コイハの方に寄っていく。


「ナジュミネ……なんだありゃ?」


 アニミダックはムツキによく似た魔人族の始祖の1人である。


 彼はムツキよりもひょろっとしていて背が高く、色白の顔、黒い瞳、瞳の色に負けないほどに目元の濃いクマをしている。


「アニミか。お出かけの場所をどこにしようかってことで議論が白熱している」


 ナジュミネは、元・炎の魔王で、角のない鬼族の女の子である。


 彼女は、きめ細やかな白い肌で陶器の人形のような華麗な姿で、ウェーブの掛かっている真紅の長い髪に真紅の瞳と釣り目がちな目と全体的に紅い。彼女の胸の張り方や腰回りの大きさを見れば、スタイルの良さが容易に分かる。


 なお、アニミダックは名前が長いということで、ユウ以外からはアニミと呼ばれるようになった。これは彼も「好きに呼んでくれ」という感じで了承している。


「あ? ムツキか、一番目のユースアウィスの意見が絶対じゃないのか?」


「うちは序列がなく、あくまで合議制だ。主に妻どうしで決めている」


「は? ムツキは?」


 アニミダックは当然の疑問を投げかけると、ナジュミネは肩をすくめている。


「まあ、旦那様にも発言権はあるのだが、だいたいモフモフ以外の意見がないから、採用されづらいというか、基本的に却下だ。こういう場合だと、妾もよく旦那様の意見を却下している」


「ムツキは肩身が狭いのか?」


「そういうわけではない……と信じたいが、まあ、旦那様の優しさが仇になって、妻の意見が通りやすいというのはあるかもしれん」


「それは優しいで片付けていいのか? まあ、いいが、それで、ナジュミネ、サラフェ、ラ……キルバギリー、コイハは何をしてるんだ?」


「妾はどこでも良い派だから待機中だな」


 ナジュミネはさらっとそう答えた。


「サラフェもです」


 サラフェは、元・水の勇者の人族の女の子である。


 彼女は着せ替え人形が動き出しているかのような可愛らしい顔、透き通るような青い髪を両サイドにツインテールにしてまとめ、垂れ目がちな目の中にある瞳の色がその髪の色と同様に綺麗な青色である。また、彼女の肌は健康的な褐色で、体型がとてもとてもスレンダーで真っ直ぐスラっとしていた。


「俺もだな」


 コイハは白狐の獣人族で、白銀色のキツネである。


 彼女は白銀の毛並みが美しく、すっと伸びたマズルや尖った耳、ムツキ同様の切れ長の目に茶色の瞳、ふさふさの尻尾と高い身長が特徴的な美しい白狐である。


「私もそうでしたが、今、活火山が良いと思いました」


 キルバギリーは人族の始祖レブテメスプに造られた兵器である。


 彼女は灰色のポニーテイルに、瞳も同じように灰色であり、肌とも言える表面は薄橙をベースに少し光沢のある薄い虹色が掛かっているかのようである。


「おいおい、アニミを捨てる場所を選ぼうとするな……」


「言い間違えで殺す気か!」


 急にキルバギリーがアニミダックを睨み付けながら物騒なことを言い始めるので、ナジュミネが宥めようとする。


「いえ、捨てるだけですよ? 溶岩の中に。最期は合意ということでサムズアップでもいいですよ?」


「やめろよ……いろいろと想像させるなよ……」


 アニミダックは後ずさりして、キルバギリーから離れようとする。その姿を見つけたユウが彼を指差した。


「こうなったら、アニミダックに決めてもらおう!」


「あ、ユウ様、ズルい! 自分の意見を通すためにアニミを引っ張り出すなんて!」


「そうだ! そうだ! ユウ、ズルいぞ!」


 リゥパとメイリが軽い非難の声をあげるが、ムツキが宥めようとする。


「ま、まあ、良いアイデアがあるかもしれないから、聞いたらいいんじゃないか?」


「まあ、聞くだけなら」

「そうね」


 アニミダックに視線が集まる。彼は今まであまりなかった光景に溜め息を吐いた。


「俺かよ……。俺だったら……ユースアウィスと2人きりでいろいろなところを散歩して、他愛ないことをいろいろと話をして、森で木々のささやきを聴いて、川べりで水のせせらぎを聴いて、砂浜で夕日を眺めて、山頂で星を眺めたいな……それでいい雰囲気になったら……て、手を……手を繋ぎたい……」


「子どもみたいなピュアピュアのデートプランだな……」


 全員が思わず静かになるほど、アニミダックのデートプランは純粋だった。


「……む。アニミは今、良いことを言っていたぞ」


「どういうことですか?」


 ナジュミネが解決策を思いついたようでニヤリと笑みを浮かべている。サラフェはその様子に疑問を投げかけた。


「まあ、簡単な話だが、何も全員で一緒にじゃなくてもいいんじゃないか? 無理せず、2人きりで楽しめるようにすればいいと思うぞ。それぞれが1日貸切デートプランを考えてみたらどうだろうか」


「え……」


 ナジュミネは満面の笑みでそう言い終える。対照的なのはムツキである。彼はすべてのデートプランに対応する必要があるからだ。それはつまり、モフモフの時間が少なくなるということでもある。


「確かに……」

「確かに……」

「それもいいですね」

「それが喧嘩にならないかもな」

「確かに……」


「まあ、皆さんがそれでならサラフェはなんでも」


 女の子たちはそれぞれ自分の理想のデートプランを頭の中で描き始める。


「そうと決まったら、皆で各自デートプランを練って、順番だけ決めよう。ふふっ。1日ごとに旦那様を独り占めだな」


 ナジュミネは嬉しそうにしている。ムツキはそーっと手を挙げて、口を開いた。


「あの……俺は……家でゆっくりしていたいかなーって……」


「却下!」

「却下だ!」

「却下よ!」

「却下です!」

「却下!」

「却下だよ!」


「だそうです。サラフェも周りに合わせます」


 サラフェの言葉がムツキにとどめを刺した。ムツキはがっくりと肩を落としている。


「うっ……分かった……」


「ハーレムもなんだかんだで大変だな。ま、どうでもいいがな。仕事に戻るか」


 アニミダックはその優しさ故に威厳の見えないムツキに軽く同情するも、ユウを取られているので手助けまでするつもりもなく、事の顛末を見終えたと判断して仕事へと戻っていった。


「……まあ、よかった」


 ムツキは戻ってきたいつも通りの生活にホッと一息、小さな溜め息とともにゆっくりと息を吐いた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

これにて第3部は完結です!


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