3-39. かわいいがそれだけじゃない!(2/3)
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大きな穴が開いた次の瞬間、全員の身の毛がよだつ。穴から漏れ出た魔力に恐れをなしたわけではなく、想像よりも遥かに気持ちの悪い光景が目の前に広がっていたからだ。
そこは自然の洞窟とは思えないほど大きく広く奥に伸びた空間で、ナジュミネの想像通り、床、壁、天井のすべてを埋め尽くさんばかりの触手が存在していた。その数は幾万にも下らない数で、100匹弱のモフモフ軍隊とは比べ物にならないくらいだった。
「ふっ……妾の予想通りだな……しかし、うにょうにょ、うじょうじょ、ぐねぐね、くねくねと気持ち悪いやつらだ……嫌悪感しかない」
序盤での待ち構えを予想していたナジュミネもさすがにこの光景には、勝ち誇った満面の笑みとはいかず、引きつった笑顔をしている。
「うげっ……家での比じゃないわね……動きも色々あるから、バラバラ過ぎて、逆に気持ち悪い……」
「正直、おぞましい以外の何物でもないですね……」
「これは……ちょっと……な……」
「男のハビーでもそう思うのか……」
「いや、コイハ、これに男かどうかって関係ないと思うぞ……」
「ニャー……」
「ワン……」
「ブゥ……」
他の面々も顔が引きつり、中には吐きそうな顔さえする者もいた。その後、何かを思い出したかのように、リゥパがムツキの前に立つ。
「ムッちゃん、そう言えば、聞きたかったことがあるの。真面目に答えてほしいんだけど」
「ど、どうした、急に……そんなに大事なことか?」
「そうよ……」
姿はメイリだが、リゥパの真剣な眼差しと神妙な面持ち、重々しい口振りにムツキは思わず無言になって喉を鳴らす。
「その……ムッちゃんって緊縛とか触手とかに興味ある?」
ナジュミネとサラフェがズルっとコケる。コイハやモフモフ軍隊はキョトンとした瞳でリゥパを眺めている。ムツキは一瞬、頭が真っ白になった。
「……きんば……え? き、緊縛? それ、今答えなきゃダメなのか?」
「ええ。とても、そう、とても大事なことなの。私たちはムッちゃんのしたいことなら受け入れるわ。でも、少し特殊なものは受け入れるのに覚悟がっ……ちょっと、サラフェ、引っ張らないでよ!」
リゥパが不安でそうなってしまうのだろうな、とムツキは思って特に責めはしなかった。
「さすがにそう来るとは思いませんでした。メイリさんの格好でそう言うのはやめましょうね。全部終わってからにしてください」
「メイリでも言うと思うわ!」
「いや、さすがのメイリでも空気は読むぞ……」
ムツキ以外からすると、リゥパがメイリの姿であることで、タガが1つ外れているのだと思っている。自分ではない誰かがしてしまっているという感覚が彼女の中に潜んでいるのではないかと推測している。実際、彼女の中でそういう部分がないわけではなかった。
「……まあ、気持ち悪さが少しだけ和んだところで先へと進めよう。コイハ、とびきりの強化魔法を頼む」
「おうさ。全員に掛けるぞ! 【ワイドエリア】【リインフォースメント】」
ナジュミネの要求にコイハは即座に応じる。彼女は、強化魔法の中でも全体的に大幅な能力アップを図る【リインフォースメント】を全員に掛けた。
彼女が強化魔法を得意としているのは、微調整を施せるために魔法を受けた側に違和感を覚えさせないことができるからだ。つまり、勢い余って何でも壊すようなことは起きない。
彼女の魔力は命の危険がない程度に空っぽになったが、全員が強化状態になったことで士気も上がった。
「ふふっ……力が漲るな。さて、次は私の番だ。【ラージ】【ストレート】【ファイアライン】! さらに【ダブル】【コンティニュアス】【ブレイズウォール】!」
ナジュミネは入り口から奥まで一直線に高熱の炎を放って、大きな一本道を作るために触手を焼き尽くす。次に、その道に触手が入り込まないように両側に燃え上がる炎の壁を創り出した。
「すごいですけど、炎で爆発とか起きたらどうするのですか?」
サラフェの問いに、ナジュミネは右の人差し指を振る。
「たしかに最初はその心配もあったが、あそこを見てくれ。暗がりでちゃんと色は分からんが、あそこの赤色と思われる触手、僅かに炎を吹いている。そういった類の触手なのだろうな。で、だ。ここが爆発するような環境であれば、奴らの方は損害が大きいだろう。つまり、炎が使えると判断したまでだ。まあ、炎の程度によるところはあるだろうがな」
「なるほどね」
ナジュミネの説明にサラフェは無言で納得し、リゥパは呟きながら肯いた。
「さて、奥までの道は作った。旦那様、サラフェ、メイリゥパ、健闘を祈る」
「え」
「【ライト】。ありがとう、ナジュ! さあ、行くぞ! サラフェ! メイリゥパ!」
「ちょっと! 変な名前を作らないで! せめて、間違ってもいいから言い直して!」
リゥパのそんな非難めいた言葉が響きながら、ムツキ、サラフェ、リゥパが奥へと走り抜けた。
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