3-33. 竜王の所に来てみたが女神様は来ていなかった(3/3)
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「なんやの……それ……あかんなあ……ほんま、あかんわ! 足りんもんなんてなあ、誰しもあるんや! なんや、自分、足りんもんなんてない完ぺきを目指して生きてはんの?」
「いや、そういうわけじゃないが……」
ムツキは首を横に振って否定をするが、レヴィアはさらに言葉を続ける。
「せやったら、そんなしょーもない言い訳せんとき! そんなん言うたかてな、いっこもええことないんよ! こういう時はムツキはん、へたれなんやなあ……もう、へたれの世界代表やわ……見た目シュッとしてんねんから、中身もシュッとせんと!」
「って言われても……」
レヴィアは呆れた顔で深い溜め息を吐く。彼女はムツキのことを割とひどく言っているが、これは彼女なりに親しい人への歯に衣着せぬ物言いである。彼もそのことはなんとなく口ぶりから理解しており励まされているのだと感じるが、まだ自信に繋がらなかった。
「あー、もう、あんさんは……難儀な人やなあ……。わかった、これも言うとくわ。よう聞いとき。ユースアウィス様は、元カレ4人おんねんけど」
「4人!? 始祖が全員元カレなのか!?」
ムツキが別の所で反応するので、レヴィアのこめかみに青筋が立つ。
「あんなあ……今、その話ちゃうやろ……話の腰を折らんといてくれる……?」
「あ、ごめん……」
「話し戻すけど、その4人が互いにユースアウィス様のことでよう喧嘩しよるから、嫌んなってたはずなんよ。もしかしたら、なあなあになってるんかもしれんけど……ユースアウィス様は別れはったんとちゃうかなあ。せやから、元カレがムツキはんやムツキはんの他の奥さんらにちょっかい出さんように釘刺しに行ったんとちゃうかなあ。もし、ウチがユースアウィス様やったら、そうするわ」
レヴィアの予想は実際と若干異なるが、ムツキがその話の流れを納得するには十分だった。彼は彼女が話し終わったことを確認し、話の中身を吟味してからゆっくりと口を開く。
「……そ、そうかな」
「もう、しっかりしなあ。さっきも言うたけど、これまででユースアウィス様の旦那はあんさんだけなんや。元カレとか関係なく、ドーンと構えてなあかんよ! そこまで心配してるんやったら、会った時にちゃんと、愛してるって、直接、言葉にして、はっきり言いなあ!」
「わ、わかった! 励ましてくれて、ありがとう」
ムツキのパっと明るい笑顔にレヴィアは満足そうである。この頃には暗雲の雨も雷もピタリと止んでおり、彼は水の滴るいい男になっていた。
「かまへんよ。ウチはな、ユースアウィス様の味方なんよ。そのユースアウィス様がムツキはんのこと好きで好きで仕方ないんやから。あ、せやけど、いちびったら、あかんよ? あくまで謙虚でないと、いつか……刺されるえ? なんなら、そん時に刺したろか?」
レヴィアはニヤリと笑い、ムツキが調子に乗らないように釘を刺した。
「わ、わかってる!」
ムツキが少し焦った様な表情であたふたしているのをレヴィアは楽しんで眺めていたが、あることに気付いて彼に急に言い放つ。
「ムツキはん! はよ、戻り! 今、気付いたけど、アニミダックかディオクミスの気配が……世界樹の辺りにぎょうさん出てる! こないにぎょうさん出るんやったら、アニミダックやわ! きっと、ちょっかい出しに来たんやわ!」
「な、なに!? 急がないと!」
ムツキの家には、ケットやクーもいるが、非戦闘員の妖精族や戦闘には向かないメイリやコイハもいる。全員が無事でいる保証はどこにもない。
「あと、これも今分かったんやけど、ムツキはんの気配や魔力と似ている部分があるから、普段からムツキはんと一緒におるケットやクーは意識せんと気付けんかもしらん!」
「そうか! すまん、また今度ゆっくりと! 【テレポーテーション】」
「ほんま、けったいな人やなあ……。まあ、きばってもらわんとなあ……」
レヴィアは微笑みながら、海へとすーっと戻っていった。海は穏やかなものに戻り、何事もなかったかのように太陽が砂浜を照らし始めた。
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