戸部とのデート・神戸への移動まで
さて、今日は研究所での特訓はなかったので普通に家に帰ってきた。
「戸部への返事はどうすっかな……」
姫乃や朧姉さんの話を聞くなら勿論デートなんてするべきじゃないんだろう。
「でもな……」
ここから離れるまえにちょっと思い出を残しておきたいっていうだけなら、断るのはかわいそうな気がするんだが。
「デートの一回くらいいだろ……たぶん」
決して俺がもてないから、こういう機会を逃したくないとか思ってるわけじゃないぞ。
俺はベットに寝転びながら、ガラケーのボタンをポチポチ押してメールの文章を作っていた。
”こんばんは。
デートの件だが日曜の昼ならなんとかなると思う。
そっちの都合はどうだろう”
俺がメールを送り返すとすぐに返信が来た
”ありがとうございます。
それでしたら日曜日の9時に
この前の福良バスターミナルで待ち合わせはどうですか?”
福良のバス停か、まあいいかな。
”了解。
じゃあ日曜日の9時に福良バス停だな。
当日はよろしく。”
俺がもう一度メールを送り返すとすぐに返信が来た。
”ありがとうございます
こちらこそよろしくお願いします”
・・・
さて、別の日のことだ。
俺が昼飯を食べ終わって、腹ごなしに適当に行程を歩いていたら、戸部がプールの脇でぽつんと何か考え事をしていた。
「おーい、戸部、こんなところで一体何やってるんだ?」
俺の声にハッとしたように顔を上げた戸部が俺の方に向き直って聞いてきた。
「あ、ちょっと一人で考えたいことがったから。
そういえば須王くんってあのロボットのパイロットでしたよね。
あれってどうやって動くんですか?」
「どうやってっていっても、基本は動けって思えば動くぜ。
いけ稲妻”って思えば稲妻が飛んでったりするしな」
「そ、そうなんですか、結構大雑把なんですね。」
「なんだよな、あれ、ちゃんと動くいみがよくわからん」
「あ、すみません、ありがとうございます」
戸部は俺の言葉を聞いて首をひねっている。
まあ、逆の立場だったら俺もそうしただろう。
・・・
そして日曜日当日、ユニクロで買ったマネキン衣装を羽織って俺は家を出て、待ち合わせの場所へ向かった。
バスターミナル前には30分前に到着、今日は戸部と、ほぼ同時だ俺は戸部のいる方へ歩いていって。
「よ、今日はまたせないですんだな?」
「あ、はい、私も今ついたばかりです」
戸部の服装は前に買い物をした時と同じ若草色のふわっとしたワンピースだな。
「さてと行くか」
「はい、行きましょう」
俺達はバスに乗り込んでしばらくバスに揺られ明石海峡大橋を渡った。
「ここが神戸か、やっぱ島と違ってハイカラなきがすんな」
俺の言葉に戸部がくすりと笑った。
「ハイカラですか、確かにそうかもしれませんね」
「ちぇ、笑うことはないのにな、どうせ俺は田舎もんだよ。
で、まずはどこに行く?」
「南京町にいって軽く食事なんていかがでしょう?
日本三大中華街のひとつで、おいしい豚まんや小籠包が食べられるそうですよ」
「ん、そいつはいいな、多分コンビニの肉まんとかよりずっと美味しいんだろうな」
「その後は一日中遊べる!神戸ハーバーランドに行きましょう
遊園地や映画館もありますし、レストランやショッピングセンターも
ありますから。
夜のイルミネーションはとても美しいそうですよ。
特に、大観覧車にのって眺める神戸の夜景は
きれいだそうです」
「よく知ってるなぁ」
「へへ、この日のために色々調べちゃいましたから」
そういって無邪気に笑う戸部は素直に可愛いと思えた。
「ケーブルカーで六甲ガーデンテラスにいくのもいいかも。
展覧台からの眺めはとてもきれいだそうですよ。
新鮮なミルクを使った濃厚なソフトクリーム
がとっても美味しいって書いてありました」
楽しそうに提案する戸部に俺は聞いた。
「じゃとりあえずは南京町に行くか。
軽く食事してから他に行っても時間は大丈夫だろうし」
「はい、じゃあ行きましょう」




