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人質

 門のある場所から、俺とアルトの二人が先行して中庭を抜け、館の前までたどり着いた。

 それから残りの四人に手招きをして、呼び寄せる。


「中に何体のオークがいるか──いや、せめて館の中の構造だけでもわかれば、潜入ルートの目途もつくんだけど……」


 館の入り口の扉の前で、アルトが扉に耳を当てつつ、そんなことをつぶやく。


 ふむと思って、俺は『透視シースルー』のスキルを発動。

 館の壁や床を全部視界から取り除いて、スケルトン状態になった中の様子を確認してみた。


「ひーふーみー……オークの数は、全部で八だな。建物は三階建てプラス屋根裏。三階のホール的なところに、玉座っぽいのに座った一番でかいオークがいるけど、あれがオーク将軍ジェネラルか」


 俺がそう伝えると、アルトが驚いた顔で俺のほうをまじまじと見てきた。


「は……? 何だそれ、分かるのか?」


「難しいのは、召使いとして使われてるっぽい人間もいるってことだな。全部で五人。若い女の子ばかりだけど、どの子も元気なさそうだ」


「そんなことまで……でもそうか、その子たちを人質にされると厄介だな……できる限り救ってやりたいけど、最悪その子たちを見捨てるっていう方向性も……」


 アルトがぶつぶつと、物騒なことをつぶやき始める。

 そしてそこに、残りの四人が到着する。


「中の様子どう? せめてオークの足音や話し声ぐらい聞こえる?」


 アイヴィが俺たち二人に向かって聞いてくる。


「いや、カイルには中にいるオークの数まで分かってるらしい。でも人質にされる可能性のある人間もいるって。五人だったか?」


「あっちゃー、そうかぁ。その可能性は考えておくべきだったな。人質がいると、ミッションの難易度が何倍にも跳ね上がるっていうからね。どうしよう」


 アイヴィが参ったという様子で、うーんと悩み込む。


 そういえば、元の世界にいた頃も、人質立てこもり事件みたいなことがあると、数人の犯行グループに対して数十人の武装集団が攻めあぐねるみたいなことになっていたなと思い出す。

 人命救助は最優先という前提のもとでだが、人質っていうのがいかに厄介な要素なのかを物語っていると思う。


「人質かぁ……なぁダーリン、いつもみたいに、ダーリンの力でパパッと何とかなんねぇの?」


 率直に聞いてくるパメラに、俺はつい苦笑してしまう。

 でも、そう言えばあれか、竜の谷での出来事のときは、俺が一人で先行してたから、パメラたちは見てないんだな。


「いや、何とかなると思うぞ」


「そっかー。いくらダーリンでもなー……って、いまダーリン、何て?」


「一階の台所に二人、洗濯場に一人、二階に一人、三階の将軍ジェネラルの世話してるのが一人か。一人ずつ引っ張ってくるか」


「ね、ねぇ……ちょっと、ダーリン?」


 自分で聞いておいてうろたえるパメラをさて置いて、俺は『透視シースルー』を発動させたまま、同時に『救出レスキュー』のスキルを使用する。


 ひとまずは、一階の洗濯場にいた少女を、手元に引き寄せた。


「えっ……? あれ、ここは……」


「「「えっ?」」」


 屋敷の中の洗濯場にいた少女は、洗濯板で衣服をこする姿勢のまま、俺のすぐ近くに瞬間移動してきた。

 それを見たうちの娘たちが、一斉に目を丸くする。


「よし、やっぱり『透視シースルー』越しでもいけるな。残りの四人も──」


「はい?」

「あれ、ここどこ?」

「ふふっ、どうせ私なんて……おや?」

「きゃーっ、やめてぇーっ……って、あれ?」


 次々に『救出レスキュー』のスキルを使って、館の中にいた娘たちを引き寄せる。

 そうして、全部で五人の娘たちが俺のすぐそば──つまり館の入り口の扉の前に現れた。


 『救出レスキュー』のスキルは、視界内の任意の対象を、自分のすぐ近くへと瞬間移動的に呼び寄せる効果を持つ。

 『透視シースルー』を使って見るのは、「視界内」っていう条件に該当するのかどうかが若干の不安材料だったが、その点も問題なくクリアされたようだ。


 しかしこの『救出レスキュー』ってスキル、なにげなく取ったけど、結構ヤバいスキルなんじゃあ……。

 一応、対象が拒絶すれば効果が発動しないっていう条件はあるんだが、それにしたってなぁ。


「か、カイルさん……それ一体、どうやって……」


 そしてその光景を見て、一番俺と付き合いの長いティトまでもが、口をパクパクとさせている。

 ああ、えっと、言い訳考えてなかったな、どうしよう。


「あーっと……これは、アレだな。俺の固有スキルってやつで──」


「「「──固有スキル!?」」」


 この間聞いた言葉を何となく使ってみたら、全員からすごい食いつかれた。

 えっと、なんかまずったか……?


「お、おう。ちなみに俺は108の固有スキルを持っていて──」


「「「──108個!?」」」


 この際だから設定の風呂敷を広げておこうと思ったら、さらに全員から詰め寄られた。

 近い近い、全員顔近いから。


「固有スキルって……数万人に一人の天才だけが持って生まれるっていう、あの固有スキルだよね……?」


「お、おう。多分それだな」


 アイヴィの言葉に、そうだったのかと思いながら、適当に相槌する。


 するとうちの娘たちは、俺をハブにして、何やら五人で円陣を組み始めた。


「──なぁなぁ、固有スキルって、持ってても普通1個じゃねぇの? 108個の固有スキルもってるとかあり得るの? ダーリンが言うと、あってもおかしくないって思っちゃうけど」


「ああ、ほかの人間が言ったら妄言もほどほどにしろと思うが……何せ言っているのがカイルだからな……」


「うん。カイルさんならあり得ますね」


「……とても人間と思えないあの力を見せられれば、悔しいけど信じるしかない。むしろ納得材料」


「ちょっと信じられないぐらい人間離れしてるもんね、カイルって」


 お、おーい、お前らー……?

 除け者にされて盛り上がられると、お父さんちょっと寂しいんだけど。


 ──まあとにかく、これで人質の心配はなくなったわけだ。

 あとはもう、正面衝突のガチンコ勝負ってことだな。


活動報告にて、キャララフの公開やってまーす。

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/449738/blogkey/1786541/

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