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少女たちとオークの戦い

本日二話目の更新です。

 カラッと晴れた空の下、

 畑と畑の間のあぜ道で、一つのバトルが行われようとしていた。


 俺の位置から見て背後には、農夫のおっさんと娘。

 正面の少し離れた場所にオークたちがいて、そのさらに少し先にパメラとティト、その向こうにアイヴィ、フェリル、アルトの三人がいる。


「ブゥーヒヒヒヒッ! さあ始めるブヒッ」


「もう泣いて謝っても許さないブヒよぉ~」


 三体のオークたちはそう盛り上がりながら、手をワキワキさせてパメラたちのほうにゆっくりと向かってゆく。

 一体があぜ道をまっすぐ歩み寄り、二体が左右に分かれて畑に足を踏み入れ、パメラたちに向かって包囲網を作るような動きを見せる。


 ……いや、にしてもこの完全に多勢に無勢の状況で、どうしてあれだけ強気になれるのか分からんのだが。

 知性が足りないのか、知性を欲望が上回っているのか、その両方なのか。


「ひっ……! だ、ダーリン! なんかこいつら怖い!」


「パメラちゃんダメっ! きっとカイルさん、私たちのことを試してるから! 私たちだけでやらないと……!」


「えぇーっ!? で、でも前に出てるあたしの身にもなってよティトっち! あいつらなんか怖い! 目が血走ってる! よだれたらしてる! じゃあティトっち前出てよ!」


「そ、それは嫌! だって私メイジだもん!」


「ずっりぃー! ティトっちずるい! 汚い!」


「ああもう分かった! ──カイルさん!」


 やんややんやとパメラとやり合っていたティトが、オークの向こう側からまっすぐに、俺のほうを見てくる?


「ん? なんだ、ティト」


「約束してください! 私たち二人でこいつらに勝ったら、私たちにご褒美くれるって!」


「ご褒美? え、いいけど、どんなの?」


「いま、いいって言いましたね!? 約束ですよ!」


「お、おう……」


 内容を聞く前に押し切られた。

 まあよっぽど無茶な内容じゃなければ、聞いてやってもいいと思うから、別にいいけど……。


「ほら、パメラちゃん、ご褒美の約束取り付けたから、これで頑張れるでしょ」


「え、ティトっち。ご褒美って、ダーリンに何頼むつもり?」


「私は私! パメラちゃんはパメラちゃん! パメラちゃんがカイルさんにやってほしいことお願いすればいいでしょ!」


「ダーリンにやってほしいこと……? ──おっけー、やる気出た!」


 パメラはそう言って、急に乗り気になった。

 やる気満々な顔で、オークたちに向かって構えを取る。


 一方のティトは、その背後で「計画通り」と言わんばかりの悪い顔をしている。


 ……えっと、ときどき、ティトって実は結構腹黒いんじゃないかって思うときがあるんだけど、多分気のせいだよな……。


「さあ、どっからでもかかってこいよザコ豚ども。このパメラさんがまとめてぶっ飛ばしてやんよ」


「ブゥーヒヒヒヒッ! 生意気なメス人間ブヒッ! 屈服させ甲斐があるブヒッ! ──ブッシュ! ブヒンガ! ブッヒストリームアタックをかけるブヒ!」


「「おうブヒ!」」


 三体のオークたちは、パメラを正面と左右から取り囲む。

 パメラは正面と左右に忙しく視線を這わせながら、油断なくそれを迎え撃ち──


「くらえ! ブッヒストリームアター──」


「えっと、ウィンドスラッシュ」


「ギャパーッ!」


「「ブヒンガぁあああああっ!」」


 三体で一斉に襲い掛かろうとしていたオークたちだったが、パメラの背後のティトからの魔法で、畑にいた一体があっさり切り裂かれてばったりと倒れた。


 お、おう……あのオークとかいうモンスター、本当に知能大丈夫か。

 野生の獣とかのほうがよっぽど賢い気がするぞ。


「お、おのれブヒぃ! ならばメイジの娘、貴様からブヒ! とっ捕まえてひん剥いて人に言えないようなことしてや──ブフォアッ!」


「……よそ見してんじゃねぇよ。つかあたしのこと忘れてただろいま」


 畑にいたもう一体のオークが、ティトに襲い掛かろうとして、横手からのパメラの蹴りで吹き飛んだ。

 数メートルほど吹っ飛んでから、畑の上をごろごろと転がり、動かなくなる。


 そうして残ったのは、あぜ道にいるオーク一体。


「くっ……くくくっ……やるな小娘ども。だが我らオーク三兄弟の中で最強と謳われたこの俺、ブヒアを倒せるかな……? ゆくぞブヒィッ!」


「そらよっと──ティトっち!」


「うん! ウインドスラッシュ!」


「ブギャアアアアッ!」


 パメラが回し蹴りでオークのあごを蹴り上げ、それで上へと吹っ飛んだところに、ティトの魔法攻撃が炸裂さくれつした。

 空中でずたずたに切り裂かれたオーク三兄弟最強の豚さんは、そのまま地面に落下、ぴくりとも動かなくなった。


「イエーイ! ティトっちナイス!」


「パメラちゃんこそ、やるぅ!」


 パンとハイタッチをするティトとパメラ。

 それから二人で俺のほうへと向いて──


「それじゃあご褒美、お願いしますね、カイルさん」


「お、おう」


 ティトが満面の笑顔を向け、パメラが餌を期待する犬みたいにキラキラした目を向けてくるので、俺はそう答えるしかなかった。


 うちの嫁たち、いろんな意味で強くなったなぁ……。


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