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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
ギルドとモンスター
62/83

退治してみた

テイマーいいですよね。

可愛い女の子がモンスターに囲まれているのとか、超和むはずですよね?

 まだ戦えるモンスターを残していたのか。

 アンナと戦いながらもリラインの様子を窺っていたリーダーは歯噛みした。一度剣を大きく盾にぶち当ててアンナのバランスを崩すと、距離を取る。それに合わせてスキル【招き猫】で引き寄せられたガストも戻ってきた。


「何をされたか分かるか」

「全然。一撃加えられるって所で、急に横に引っ張られるような感覚だった。風魔法って感じでもなかったから、多分特殊なスキルじゃねえかな」


 リーダーはガストの判断に厄介だという考えを強める。ソロプレイヤーを一人PKするだけだったはずだ。戦闘特化のパーティーではないにしても、おそらくはほとんどレベルの変わらないはずのソロプレイヤーにこうまで翻弄されるとは考えられない。


「猫さん、置いてかないでなの~」


 リーダーがアンナを牽制しながらこの状況を打開する次の一手を考えている時、その緊張感をぶち壊す能天気な声が聞こえた。

 油断しないままにリーダーはその声の主を見る。


「妖精……だと。妖精をテイムしたって言うのか!」

「ふぇっ! い、いえ、あ、あの、それ、は、違っ、違い、ます」

「レベルを読み違えていたのか? いや、それにしては装備している品のランクが……。くそっ、分からん」

「えっと、で、ですか、ら、あ、あの、子は、関係、な、ない」


 リーダーは妖精に目を奪われていた。今まで妖精をテイムしたなどと言う話は聞いたことがなかったからだ。誤解を解こうとしているリラインの声はまったく届いていない。

 さっきのガストを吹き飛ばしたのも妖精のスキルか。戦力が足りない。


(くっ、テイマーがここまで強い物だとは思っても見なかった。何よりもモンスターの動きが戦い方を知った動きだ。どうやったらここまで的確にモンスターを動かせられるんだ)


 リーダーは幾つも誤解していた。ナナがリラインにテイムされているというのもそうだが、何よりもリラインがモンスターに命令して動かしているという点である。

 ファング達はリラインのお願いを聞いているに過ぎない。戦いの動きはあくまでも学習して得た戦闘経験によるものだった。他のモンスターと足並みをそろえた戦闘が出来るのは日ごろから共に戦っているからだ。これは【命令(オーダー)】によって動かされていては絶対に出来ない行動である。

 リーダーはどうにか突破できないかとガストと共にアンナに攻め寄る。

 そして、その瞬間はやって来た。


「弾けろ、弾けろ、弾けろ。そして、燃え盛れ」

【フレイム・ボム三連】


 それはファングの風刃をかいくぐり、ウィルの熱波をロックがどうにか止めたことで放たれた魔法使いの援護射撃。威力よりもその爆風でアンナの動きを止めることが狙いの一撃だった。

 そしてそれは上手くはまる。近くでの爆発によってアンナは防御を余儀なくされた。その瞬間、リーダーとガストが横を走り抜ける。


「ガチャっ!」


 怒りをあらわに鎧を震わせるアンナだったが、振り返って追いかけようとしたところに遅れて二発の爆発が襲う。


「アンナっ! 待ってて、今癒すから」


 モンスターになると普通にしゃべれるらしく、リラインは自分の事を放っておいてアンナにスキル【癒し】を発動させる。

 それはリーダーにとって好機に思えた。標的はスキルの発動中で動くことができない。護っているのは妖精と、もう一匹黒猫。


「妖精はお前が抑えてろ。俺がとどめを刺す」

「了解。殺しちまうのはもったいないから、捕まえて高く売ってやるさ」


 リーダーとガストはそれだけ言葉を交わすと、さっと二手に分かれて手に持った武器を構える。リーダーは左回りに走りながら大剣を真横に、ガストは右回りに走りながら短剣を逆手持ちに。いつでも攻撃を放てるようにして、挟み撃ちを狙う。


『猫さん、敵が私を狙ってるなの! 怖いなの~』

『俺は無視か。まあ、油断してくれるなら、ありがたいと思いますかね』


 リーダーはリラインの評価をかなり上に修正していた。それでも、目の前で護るのは妖精が一匹。黒猫もいるがモンスターには思えない。二面攻撃をどうにかできるとは思えなかった。だから、


「スキル【横一文字】」

「スキル【パラライズブレード】」


 スキルを発動して切りかかった。


『残念でした。スキル【猫騙し】』


 それは最初意味のない特攻のように思われた。どこからか現れた黒猫が足に噛み付いてきたのだ。


(この程度じゃ止まらないぞ)


 あと一歩で大剣の間合い。スキル【横一文字】を放てば、ちゃちな防御魔法では防ぎきれないはずだった。しかし、リーダーの足は動かなかった。なぜなら、噛み付いてきた猫が一匹ではなかったから。そして、小さな黒猫ではなかったから。

 スキル【猫騙し】で生み出された猫たちは、リーダーに噛み付くとその姿をさらに変化させた。それは大きな猫型のモンスターだ。


『名づけるならキャットバインドって所か。まあ、可愛い鳴き声にしか聞こえていないだろうけど、一つ言っておくよ。集団で女の子を襲うのは良くない』


 ポチは体中を【猫騙し】によって生み出された猫に噛み付かれているリーダーにそう鳴くと、もう砥ぎ終わって攻撃力を増している爪で一気に切り裂いた。


『やっぱり岩で砥いだだけだと、攻撃力が低いな』


 リーダーがHPを零にするには十数回切り裂く必要があった。

 そして、リーダ同様猫たちに噛み付かれて動きを封じられているガストも切り裂く。


『えっと、シェルナーラで見た猫さんですか?』


 そこでようやくリラインがポチに話しかけた。何が起きたかは分かっていないようだが、助けられたことだけはわかったようで、茫然としながらありがとうございますと頭を下げた。そうすると、頭の上の葉が可愛らしく揺れる。

 ポチはお礼の言葉に恥ずかしそうに尻尾をくねらせた。


『この前食べさせようとしてくれたブイヤベースの代金分だから、気にすんな』

『照れてるなの~。猫さん、照れてると可愛いなの』

『うるせえな! さっさと向こうも終わらせてくるぞ』


 ポチはそう叫ぶと、残りの四人のプレイヤーを殺すために動いた。

 ファングとウィルの二匹にギリギリだった残りの四人はポチが入って来た事ですぐさま光になって散るのだった。


読んでいただきありがとうございました。

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