情報収集してみた
次からバトルへと話が動きます。
楽しく書けたと思いますので、明日から二話ほどお楽しみに。
まず敵討ちをしようとしてポチたちが行ったのは情報収集だった。敵であるユーリスの居場所を突き止めることが必要だった。
『姐さん、すいません。こんなこと頼んじまって』
『いいのよ。それより、今度こそどうだい』
姐さんがすりすりと体を寄せてくる。
ポチが頼ったのは始まりの街に暮らす猫たちだった。ポチに猫としての生活を教えてくれた姐さんに頼んで、縄張りのボスたちに話を通してもらったのだ。街中の至る所で生活している猫たちは、余所者が入り込んでくるのに敏感だ。街の中限定なら、彼らに探し出せないプレイヤーはいないはずだ。
そして思った通り、結果はすぐに出た。
『おい、若造。俺ん所の下っ端から話が上がってきた』
情報を持って来たのは武闘派で知られる巨猫のイワノフ。ポチよりも三回り以上の巨体を持ち、熊と戦った時についたという左目を縦に貫く傷跡が男らしさを象徴している。仁義に厚いことでも有名だ。
『あら、あんたの縄張りってことは……。そりゃまた、薄暗いところに』
『それで、その場所ってのはどこなんです』
ポチは前のめりになる。今にもイワノフに跳びかかりそうな勢いだ。
落ち着け、とイワノフはその大きな手を前に掲げる。
『その男はどうもスラムに身を隠しているようだぞ。アントンっていう黒猫が、スラムの路地で違う奴から同じ臭いを嗅いだらしい。それで気になって着いていったら、途中で姿を変えてどんどんスラムの奥に入って行ったらしい。途中で姿を消しちまったらしいから、アジトまでは分かってねえがな』
それは十分すぎる情報だった。
ポチはさっとイワノフに頭を下げる。
『イワノフの旦那。この借りは必ず返しますんで』
『気長に待つとするさ。覚悟を決めた猫っていうのは悪くない』
イワノフは悠然と自分のシマに帰って行った。
ありがとうございます、と心の中で礼を言い、残念そうな姐さんに別れを告げ早速そこへ向かう。スラムについてもイワノフが手配しておいてくれたのか、猫たちが代わる代わる新情報を持って来てくれる。
連絡を送ったからローズたちともう一人も急行しているはずだ。
ユーリス、待っていろ。俺はお前を許さない。
ポチは内から湧き出る感情に押されるように、どんどんと足を速めた。
***
そこはまた暗い闇の中。覗き込む者がいたとしてもそこに誰かがいるなどとは思いもしないであろう場所に、その男はいた。
見た目は寸分たがわず刹那と同じである。ただし、その声の響きは、全く違った。刹那にはない妄執染みたおぞましさがあった。
「ははは、遂に私はやったのだ。モンスターのくせに忌々しくも人気を集めていた白虎を殺し、私の美しい顔に傷をつけた猫を絶望させた。あと残っているのは、もう用済みになったお前だけだ……」
狂気の入り混じる声音で、また宙に浮かべた自分と同じ姿の映像に真っ赤な×を付ける。何度も何度も。その姿が見えなくなるまで。
「待っていろよ……刹那、そして我が愛剣、エクスカリバー」
一瞬ラグが走ったかと思うと、闇に立つ者は光り輝く一人の騎士へと姿を変えていた。
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