表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第十章 アフターストーリー(冬:クリスマス)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

499/503

第483話 ディナー③ ~お待ちかねのスイーツタイム~

 怜と桜彩は何度もビュッフェコーナーへと足を運び、特にローストターキーは何度もおかわりをした。

 少しずつお腹が満たされつつも、二人にとってスイーツを外すことはできない。

 まだ満腹にならないタイミングで足を運ぶと、目の前のスイーツコーナーに思わず息を呑んだ。

 広々としたスペースにはまるで小さなクリスマスマーケットのように、色とりどりのスイーツが並んでいる。


「わぁ……凄い……!」


 本日何度も繰り返された桜彩の驚きの声に怜も頷く。

 カラフルなクリスマスカップケーキは、赤いベリーや緑のピスタチオで飾られ、星形のチョコやシュガーが煌めいている。


「見てるだけで楽しくなるな」


「うん。リュミエールとはまた違って……」


 雪化粧したチョコレートブラウニーや、カラメルソースがかかったクレームブリュレ。

 表面のカラメルはガリッと音を立てそうなほど焼かれ、甘い香りがふんわり漂う。


「うわあ、クレームブリュレもある……。焦げ目が綺麗」


「焦がされたカラメルの香りって、なんか良いよな」


「あ、それ分かる」


 桜彩は嬉しそうに小さく笑うと、怜の肩に軽く触れた。

 奥には、チョコレートファウンテンがあり、苺やバナナ、パイナップル、マシュマロが串に刺されて並んでいる。

 温かいチョコがゆっくりと流れ落ち、光に反射してきらきらと輝く。


「見て、怜! フルーツもいっぱいだよ!」


「ほんとだ……。チョコレートファウンテンは普段食べないからなあ……」


 向かいの棚には赤や緑のクリスマスゼリー、ラズベリーソースがかかったチーズケーキ、ホワイトチョコのムースカップ等が並ぶ。

 それぞれに小さな飾りやシュガーで模様が施され、見ているだけでも夢中になる。


「わぁ……。ゼリーの色も鮮やかだし、ツリーの形に見えるのもある!」


「このチーズケーキ、上に雪みたいに粉砂糖がかかってる……。まるで雪景色みたいだな」


「まさにクリスマスだよね」


 小さなトレーに並ぶミニパフェは、カップの底にチョコソースやベリー、スポンジが層になっており、上にはホイップクリームと金色の星型チョコがちょこりと乗っている。


「これも可愛い……。食べるのもったいないくらい」


「だけどせっかくだし、全部少しずつでも味わいたいよな」


 更にパンナコッタやモンブラン、ピスタチオのロールケーキ、キャラメルナッツのタルトなど、さまざまな種類のケーキがぎっしりと並ぶ。

 ビュッフェということで一つ一つは小さいのだが、それでも全種類食べるとなればかなりの量になるだろう。


「これ全部一度に取ったら、皿が大変なことになりそうだね」


「うん、でも少しずつ取れば、二人で分け合って楽しめるな」


 桜彩は怜を見上げ、にっこり笑った。

 楽しくスイーツを選び、皿に載せていく。


「このモンブラン、しぼりたてだって」


「ピスタチオのロールケーキも美味しそう……。色合いがクリスマスカラーだ」


「パンナコッタは、表面に雪の結晶の砂糖がかかってる」


「ほんとだ……。こういう細かい演出もいいな」


 デザートコーナー全体には天井からライトの光が反射し、ガラスのプレートやクリアカップに入ったスイーツをきらきらと照らしている。

 窓の外には舞い落ちる雪と街のイルミネーションが見え、特別なクリスマスの世界が演出されている。


「ねぇ、怜……。こうして選んでるだけでも幸せだね」


「そうだな……。二人で選ぶ時間も含めて、特別な思い出になるな」


「うん」


 桜彩は小さく頷き、皿を抱えてゆっくりとスイーツを選ぶ。

 怜も桜彩と並んでスイーツを盛り付けて行き、次第に二人の皿はスイーツでぎっしりと埋まってしまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 席に戻りトレーをそっとテーブルに置くと、桜彩は嬉しそうに頬をほころばせた。


「どれも可愛すぎて、選ぶの大変だったね」


「ほんと。どれから食べるか迷っちゃうよな」


「うん。まあ、あとで全部食べる予定だけどね」


 いたずらっぽく笑う桜彩。

 怜も苦笑しながら、湯気を立てるティーポットを手に取った。

 二人が選んだのは特製のフレーバーティー。

 カップに注がれる琥珀色の液体から、柑橘とハーブが混ざった甘い香りがふわりと立ちのぼる。


「わぁ……良い香り。ちょっとオレンジっぽい?」


「うん。多分シトラスティーだな。ほら、ミントも少し混ざってる」


 桜彩はカップを両手で包み込み、ゆっくりと口を近づけた。

 一口含むと、ほっとしたように目を細める。


「温かい……。なんか、体の中までぽかぽかするね」


「うん、美味しい。ケーキと合いそう」


 二人の前には取り分けたデザートが美しく並んでいる。

 苺とラズベリーのタルト、ピスタチオのロールケーキ、ホワイトチョコのムース、しぼりたての小さなモンブラン。

 皿の上でそれぞれのスイーツが、まるで宝石のように輝いている。

 桜彩はフォークを手に取り、目を輝かせながらタルトを一口。


「……うん、美味しい! ベリーが甘酸っぱくて、下の生地がサクサク」


 頬を緩める桜彩の表情を見て、怜もつられるように笑みをこぼす。


「こっちはチョコムース、食べてみるだろ?」


 怜が皿を少し傾けると、桜彩がスプーンを伸ばした。

 ふわりとした舌触りが広がり、すぐにとろけて消えていく。


「わ……、これ、凄く滑らか。甘いけど、くどくない」


「ホワイトチョコだから優しい甘さなんだろうな」


 怜も一口食べ、軽く頷く。

 桜彩は今度は小さなモンブランに手を伸ばす。

 栗のクリームの上にフォークを入れると柔らかく沈んだ。


「これも……上品な甘さ。中にちゃんと栗のかけらが入ってる」


「こっちはフルーツのタルト。ちゃんとナパージュされてて綺麗だよな」


 タルトの上に盛られているフルーツは、専用のシロップで光を反射し輝いている。


「ねえ、怜。これ、半分こしよ。はい、あーん」」


 そう言って桜彩は自分のフォークで一口分を掬い、怜へとそっと伸ばす。

 怜は一瞬だけ照れたように笑い、素直に口に運んだ。


「あーん。……うん、確かに。甘すぎないのがいいな」


「でしょ? こういうの、凄く好き」


「それじゃあ今度はこっちだな。あーん」


「あーん」


 タルトを差し出すと、桜彩は嬉しそうに笑って口を開ける。

 続いてピスタチオロール。

 緑のクリームの中にベリーソースが差し込まれていて、フォークで切ると中から赤が覗いた。


「これ、すごい綺麗……。ツリーみたいな色合いだね」


「まさにクリスマス仕様って感じだな」


 桜彩は一口食べて、ふわりと目を細める。


「ピスタチオの香ばしさに、ベリーの酸味が合ってる……。怜、これ好きそう」


「お、よく分かってるな。じゃあ一口もらう」


「それじゃあ、あーん」


「あーん」


 ティーポットからもう一杯ずつ注ぎ足しながら、二人でスイーツを少しずつ分け合い、温かい香りに包まれた静かな時間を過ごしていく。

 周囲のテーブルからは低く穏やかな話し声とカトラリーの小さな音が混じり合い、心地よいBGMのように響いていた。


「怜、見て。窓の外……。まだ雪が降ってるよ」


 桜彩の言葉に怜が顔を上げる。窓の外では、白い粒がライトに照らされてゆっくりと舞っていた。


「ほんとだ。ホワイトクリスマス、だな」


「ね……。なんか、今日一日が夢みたい」


「夢じゃないよ。ちゃんと現実。俺達のクリスマスだ」


「恋人として初めてのクリスマス。こんなに素敵だなんて……。本当に良いのかな……?」


 怜が微笑むと、桜彩の顔も自然とほころぶ。


「良いんだって。ほら、桜彩。あーん」


「あーん……。美味し~い! はい、お返し。あーん」


「あーん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ