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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第七章前編 夏・プール・水着

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第351話 水の掛け合い

 ゆらゆらと流れる水に身を任せて流されていく。

 ただそれだけの事なのにとても楽しいのは、大好きな人が隣で手を繋いでくれているからだろう。

 そう思って隣を向くと、桜彩もこちらへと顔を向けたところだった。

 お互いにクスリと笑い合って、顔を見合わせたまま流れて行く。


「わっ!」


 しばらくすると流れるプールの幅が変化する。

 故に二人が身を任せている水流もいきなり変化して、それに桜彩が驚く。


「桜彩ッ!」


 仰向けで水に揺られていた怜が一瞬にして立つように体勢を変え、プールの底に足を着けて水の流れに逆らうように立ち止まる。

 そのままバランスを崩してしまった桜彩の手をぎゅっと引き寄せる。


「あっ……」


「大丈夫か?」


「う、うん。ありがとね、助けてくれて」


 桜彩も怜に掴まったまま底に足を着けて怜の横に立つ。


「このくらいお安い御用だって。ってか別に危険ってわけでもないしな」


 もちろん流れの速さが変わったからと言って、いきなり溺れるような危険な感じではなく軽いアクシデントのようなものだ。

 冷静に考えれば怜が助けようとしなくとも何も問題はなかっただろう。


「そ、それでさ……その……」


「ん?」


「あのね。また同じようなことが起きると危ないから、こ、こうしてても良い、かな……?」


「え?」


 一体どういうことなのかと問いかけようとした怜だが、それよりも先に腕にぎゅっと桜彩が抱きついて来る。


(う……。や、柔らかくて……)


 先日のダブルデートで腕を組んで以来、たまにこうして桜彩から腕を組んでくることがあった。

 当然怜の腕には柔らかな感触が、具体的には桜彩の胸についている二つの双丘の感触が水着とラッシュガードを隔てて伝わって来る。

 とはいえこれまでは普段着だったり制服だったりで、ノーブラで当てられるのは当然ながらこれが初めて。

 これまでで一番、桜彩の柔らかさが伝わってしまう。


「え、えっと……ダメ……?」


 桜彩の必殺技でもある上目遣いでのおねだり。

 使用者である桜彩本人は意図して使っていないとはいえ、この必殺技は怜に対して絶大な攻撃力を誇っている。

 当然ながら今回もこれまで通り、桜彩のおねだりを断ることなど出来はしない。


「わ、分かった……」


「うんっ、ありがと!」


 満面の笑みで桜彩がお礼を言ってくれる。


(い、いや、もちろん嫌ってわけじゃないし、望むところなんだけど……)


 とはいえ右腕に伝わる感触が意識から離れない。


(う、嬉しいんだけどな……)


 怜とて思春期の男子であり、このシチュエーションは確かに嬉しく感じてしまう。


「そ、それじゃあそろそろ先に進むか」


「うんっ!」


 邪な考えを隠すように、プールの底を蹴って再び流れに身を任せる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(わ、私、ちょ、ちょっと大胆だったかな……?)


 水流の変化に驚いていたら、急に怜に引き寄せられた。

 心配をかけてしまったのは申し訳ないのだが、それがとても嬉しい。

 そして嬉しいついでにそれを口実として、怜の腕をぎゅっと抱きしめた。


(だ、大丈夫だよね……?)


 見たところ怜もいつも通り(を装っているだけなのだが)であり、引かれているようには思えない。

 いや、いつも通りだというのもそれはそれで少しばかり悔しく思ってしまうのだが。


(で、でも、こうやって怜にくっつくのって、やっぱり幸せぇ……)


 そのまま桜彩は幸せを嚙みしめるように怜の腕を掴んで先へと流されていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 手を繋いでいた先ほどとは違い、今は桜彩が腕を掴んでいる為に仰向けではなく立ち泳ぎのような体勢で先へと進んで行く。


「ふふっ。こうやって怜の手を掴んでると安心するよ」


「そ、そっか。それなら良かったよ」


 桜彩の言葉にドキリとしながらも、なんとか平静を装って言葉を返す。

 進んで行くと、前方の広めのスペースで陸翔と蕾華が立ち止まってこちらを待ってくれているのが見えた。


「あっ、蕾華さん達が見えて来たよ!」


「ホントだ。それじゃあ俺達もあそこまで行くか」


 そのまま桜彩と共に二人の元へとたどり着く。


「お待たせ」


「そんな急がなくても良かったんだぞ」


「うんうん。もっとゆっくり来ればよかったのに」


 ニヤニヤとした視線を送りながら、親友二人が怜と桜彩を出迎えてくれる。

 この辺りは広く作られており、水の流れもそんなに早くない。

 どうやら流れに身を任せずに遊ぶことの出来るスペースらしい。

 四人の他にもこの辺りで遊んでいる者も何人かいる。


「二人共待っててくれたのか。先に行っても良かったのに」


「うーん、まあそう思ったんだけどな」


「うん。まあまあ二人共、ちょっとここに立って」


「「え?」」


 蕾華の言葉に疑問を抱くが、ひとまず蕾華の言われた場所で底に足を付けて停止する。

 もちろん右腕は桜彩に掴まれたまま。


「立ったぞ。これで良いか?」


「うんっ。もう少しそのままでね。あとちょっと」


「いったい何を……」


 企んでいるのか、と聞こうとしたところでそれが来た。

 流れるプールの内側にある噴水。

 そこから勢いよく水が放出されて、怜と桜彩へと降り注ぐ。


「わぷっ!」


「きゃっ!」


 不意打ち気味に訪れたその水撃により、二人揃って驚いてしまう。

 もっともそれでも怜の腕を掴む桜彩の手は離されることはない、どころかさきほどよりもぎゅっと強く腕を掴んでくる。

 当然ながら桜彩の胸の感触もより伝わることになってしまう。


「あははははっ! 作戦成功!」


「イエーイ!」


「いえーいっ!」


 怜と桜彩、二人が水を被ったのを見て親友二人がハイタッチを交わす。

 これはみごとに嵌められた形だ。


「むーっ! や、やったなーっ!」


「あははははっ! なにサーヤ、アタシ達とやろうっての!?」


 笑いながら桜彩を挑発する蕾華。

 とはいえ桜彩と蕾華では戦闘力に差がありすぎて勝負にはならないだろう。


「えいっ! ……あっ!」


 一旦怜の腕を離しプールの水を掬って蕾華目掛けて浴びせようとする桜彩だが、それより早く蕾華はプールに潜って攻撃を躱してしまう。

 桜彩も運動が得意ではあるのだが、それでもやはり蕾華の方が一枚上だ。


「あはははははっ! サーヤ、どこ狙ってるのーっ!?」


「むうーっ!」


 水面から顔を出した蕾華が再び桜彩を挑発する。

 それに対して桜彩が顔を真っ赤にする。

 もちろん本気で怒っているわけではなく、じゃれ合いの一環だろうが。

 とはいえ桜彩は完全に冷静さを失っており、これでは蕾華の思うつぼだろう。

 そんなわけで怜はトントンと桜彩の肩を叩く。


「怜? ちょっと待って! 今忙しい……わぷっ!」


 両手で水を掬い、頭に血の昇った桜彩の顔へと不意打ちで水を掛ける。

 当然ながら桜彩は思い切り顔に水を浴びてしまう。


「ちょ、ちょっと怜!?」


「ほらほら桜彩。もっと冷静にならないと蕾華に攻撃は当たらないぞ」


 これで桜彩も一度冷静になるだろう。

 そう思った怜だが完全に読みが外れてしまったことにすぐさま気が付く。

 桜彩をクールダウンさせるはずが、桜彩は目を吊り上げて怜を睨んでくる。


「れーいー!? よくもやってくれたなあっ!」


「ちょ、ちょっと待った! 俺はもうちょっと桜彩に冷静になって欲しくって――わぷっ!」


 標的を蕾華から怜へと変更した桜彩が至近距離から怜目掛けて思い切り水を浴びせてくる。


「お返しだ! お返しだ!」


「ま、待った! 狙う相手は蕾華……わぷっ!」


 もはや完全に聞く耳を持ってくれていない。

 怜目掛けてどんどん水を掛けてくる。


「むっ! だ、だったらこっちも、そらっ!」


「え? きゃっ!」


 このまま一方的にやられてなるものか。

 桜彩へと反撃を開始した。


「れ、怜!? ま、またやったね!?」


「桜彩が俺に水を掛けてくるから……わっ!」


「このっ、このっ!」


「だ、だったらこっちもだ! そらっ!」


「ひゃんっ……! えいっ!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そんな二人を陸翔と蕾華は呆れたように眺めている。

 蕾華に復讐するはずだったのだが、いつの間にか怜と桜彩の間で水の掛け合いが始まってしまった。


「ねえ、アタシ達蚊帳の外じゃない?」


「なんでこいつらで水を掛け合ってんだよ」


「ん-、でもまあ楽しそうだからいいけどね」


「結果オーライかな?」


 当初はお互いのカップル同士で水を掛け合って遊ぼうと思っていたのだが、その目論見が外れてしまった。

 とはいえ目の前で水を掛け合っている怜と桜彩も、いつの間にか笑顔が浮かんでいる。

 お互いに水を掛けて、そして水を掛けられることが本当に楽しそうだ。


「わああっ! も、もう!」


「ちょ、ちょっと。だ、だったら……!」


 お互いに笑いながら水を掛け合う二人。

 親友二人はまあ良いか、と温かな目で怜と桜彩を見守っていた。

次回投稿は月曜日を予定しています

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