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【第十章前編 クリスマス】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第六章前編 ダブルデート ~お家デート~

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第302話 バスタイムと内緒話② ~怜の恋愛相談~

 その後、蕾華が風呂から上がったので次は桜彩が入る番だ。

 桜彩が浴室へと向かって念の為に五分ほど待ち、残る三人での話が始まる。


「さーて。それじゃあ怜」


 さっそく陸翔と蕾華が期待するような眼差しを向けて、テンション高く怜の方へと身を乗り出していく。


「ついに怜がさやっちに対する思いを自覚したわけだ」


「うんうん! それでさ、れーくんはサーヤにそれを伝えるんだよね!?」


 当然というか、あらかじめ陸翔からある程度話を聞いていた蕾華の言葉を受け、怜は少し考える。


「そ、それはまあな……。桜彩にはこの気持ちを伝えたいとは思ってるけどさ…………」


 改めて言葉にすると恥ずかしい。

 そんな顔を赤くする怜に親友二人は温かな視線を向けて来る。


「うんうん。当然りっくんだけじゃなくアタシも応援するからね」


「あ、ありがとな……」


 何はともあれこの二人がそう言ってくれるのは有難い。


「そうかあ。でもれーくん、やっとそれを自覚したのかあ……」


 感慨深げに蕾華が頷く。

 当然ながら怜『も』自覚したわけなのだがさすがにそれは話せない。


「良かったね。自分の気持ちを自覚出来てさ」


「やっぱ蕾華も分かってたんだよな……」


「親友だもん。そりゃあね」


 観覧車の後で陸翔が言っていたように、怜が自分で気が付くよりも早くこの二人は怜の気持ちに気が付いていたということ。

 それがとても恥ずかしい。


「それでさ、どうやってサーヤに伝えるの? なにかアイデアあるの?」


 怜が桜彩に気持ちを伝えたいというのであれば、陸翔も蕾華も全力で協力する。


「いや、まだ何も無い」


「そっか……。まあ確かにそうだよね。ついさっき自覚したばっかだもんね」


「そうだよなあ」


 そのまま三人でうーんと頭を抱えてしまう。


「っていうかさ、俺は桜彩にこの気持ちを伝えたいんだけどな……」


「え? なんか問題あるのか?」


「問題って言うかさ……、今の俺と桜彩との関係って、俺が桜彩に対して、何て言うか、男女としての気持ちを持ってないからこそ成り立ってきた関係だと思ってるんだよ」


 困っている桜彩に手を差し伸べた時、そこには少しも下心などなかった。

 一人暮らししているのに生活能力が皆無、しかしそんな自分から変わりたいと言った桜彩。

 その桜彩に対してあくまでも友人として、男女としての感情など一切持たずに手を差し伸べたからこそ桜彩はその手を取ってくれたと思っている。


「だからさ、桜彩に対してそういったことを思って接するってのは、その……桜彩に対する裏切りになるんじゃないかって…………」


 ふぅ、と一呼吸して虚空を見る。

 そんな怜に親友二人は呆れたような目を向けて


((いや、そんなことは無いって))


 何しろ間違いなく両想いなのだ。

 怜の気持ちを桜彩が裏切りなどと思うわけが無い。

 とはいえそれをそのまま伝えることが出来ないのがとてつもなくもどかしい。


「それにさ、これはあくまでも俺の気持ちであって、桜彩がどう思っているかはまた別だしな」


 怜としても自分が桜彩に一番近いという自覚はあるが、だからと言って同じ気持ちを桜彩が持ってくれるかはまた別の問題だ。


「だからさ、俺は桜彩にこの気持ちを伝えたいとは思ってるけど、実際に伝えるのは桜彩にとっては迷惑なんじゃ……痛っ……!」


 バアンッ、と。

 陸翔が怜の頭を強くはたいた。

 不意打ちの一撃に思わず頭を抱えてしまい、痛む頭にてを当てながら正面を向くと、ムッとした表情で陸翔と蕾華が睨んでくる。


「うるせえチキン野郎。さやっちの気持ちを勝手に決めつけてんじゃねえ」


「うん。れーくんがサーヤのことを大切に想ってるのは分かるよ。でもさ、だからと言ってサーヤの気持ちを勝手に決めつけるのは良くないって」


「桜彩の気持ちを勝手に…………?」


 対面の二人がコクリと頷く。


「一応聞いておくぞ。お前はさやっちのことが好…………その、そう思ってんだろ?」


「ああ。それは間違いない」


 桜彩のことが好き。

 その気持ちに偽りはないし、恋人になりたいと思っている。

 素敵な笑顔をもっと見ていたい。

 恋人としてデートもしたい。

 これまで以上に一緒にいたい。

 これからの人生を桜彩と一緒に新しい形で歩んで行きたい。 

 無意識の内にキーホルダーとネックレスに手を当てる。


「怜、さやっちに一番近い相手ってのはオレでもなく蕾華でもなくお前ろうが。そのうえで聞くけどよ、さやっちはさ、お前がそうやって自分の気持ちを隠されて嬉しいと思ってんのか?」


「いや、それは思わないけどな……」


「そこで答えに詰まってたらもう一発キツイのくれてやったけどな」


 ふぅ、と笑いながら陸翔が右手をひらひらと振る。

 その隣では蕾華もあははと笑っている。

 そんな二人を見た怜は心が少しは軽くなった気がして二人と同様に笑みを浮かべる。


「そうだな。ありがとな、二人共」


「いや、こっちこそ悪かったな。思いっきり叩いちまって」


「叩かれるようなことを言った俺が悪いさ。むしろ感謝してる」


 本当にこの二人には頭が下がる。

 優しくて、厳しくて、でも厳しさの中には確かな優しさがあって。

 この二人の親友でいられたことが怜にとっては本当に自慢だ。


「うん。桜彩にこの気持ちを伝えるよ。例え桜彩がどう思っていようが、ちゃんと話をしてみる。どういう結果になるかは分からないけどな」


 この気持ちを受け入れてくれないかもしてない。

 それどころか、今の二人の関係が大きく崩れてしまうかもしれない。

 だが、この気持ちを隠したまま桜彩と今までの関係を続ける事こそ桜彩に対する裏切りだろう。

 そう決意を新たにする。

 そんな怜を見て親友二人はテーブルの下で小さくガッツポーズを決める。


((まあ、悪い結果になることは絶対に無いだろうけど))


 それだけは絶対の自信をもって断言出来る。


「とはいえだ、だからと言って焦って伝えるのはやっぱり違うと思う。その、何て言うかさ、やっぱり……それを伝えるのって、それなりの……シチュエーションが大事だと思うんだよ…………」


 恥ずかしさから語尾が小さくなってしまう。

 とはいえそれはそれで重要だろう。

 それこそ桜彩と一緒に『今日の夕飯は何を食べたい?』なんて雑談レベルで伝えられることではない。


「まあそれは分かるけどな。でもよ、後にすればするほど伝える難易度は高くなるぞ。いきなり関係が変わることに繋がるんだからな。これまでの絆が深いほどこれまでの関係で固定されちまうからそれを変えるのは難しいぞ」


「だよね。そりゃあロマンチックなシチュエーションで伝えるのはエモいけどさあ」


「ああ。それは分かってるけどな……」


 うーん、と頭を捻る三人。

 するとリビングの扉が開いてそこから湯上りの桜彩が出て来た。


「お風呂上がったよー」


 そいう桜彩の頬がお湯で温まり血行が良くなった為か、少しばかり上気している。

 加えてこの後に陸翔が入る為に急いで出て来たのか髪も乾ききっていない。

 初めて見るその桜彩の姿に、なぜか色っぽさを感じてしまう。


「怜? どうしたの?」


「え?」


 不思議そうな顔で桜彩が覗き込んでくる。

 声を掛けられて自分が桜彩に見とれていたことに気が付いた。


「い、いや。それより桜彩、髪が渇いてないんじゃないか?」


「あ、うん。でも早くしなきゃなって」


 陸翔をちらりと見て桜彩が答える。


「あ、じゃあドライヤーだけ取ってくるぞ。そしたらオレも風呂入るわ」


 そう言ってすぐに陸翔がドライヤーを持って来る。

 それを桜彩へと手渡して、陸翔は風呂に入る為に戻って行った。

 すると桜彩の手にしたドライヤーを見て蕾華が一言。


「あ、そうだ。自分で髪を乾かすのって難しいでしょ? せっかくだからさ、れーくんに髪を乾かしてもらえば?」


「「え?」」

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