93 とても大切なプレゼントだから
「オリド、リビオ、成人おめでとう」
「ありがとう、ルージュ」
「ルージュぅ! ありがとなー!」
ついにこの日がやってきた。
オリドとリビオの成人祝いの日。というか、町に住む成人みんなのお祝いの日なんだけどね。
町全体が飾り付けられていて、露店が賑わい、お祭りは盛況な様子だ。
毎年こんな感じだけど、身近に成人を迎える人がいると特別感が増すなぁ。神殿でちょっとした儀式をするから、着飾っているっていうのもあるかも。
今は二人がその儀式を終えたところで、神殿の外で待っていた私は二人が出てきたところにお祝いの言葉を伝えたってわけ。
だって、終えたら一番に祝ってほしいっていうから。そのくらい、叶えてあげなきゃと思ってさ。
これは、前の人生の時と違う点かもね。前は屋敷で待ってて、その後一緒にお祭りを見て回ったから。
あの時も楽しかったから、今日も実はワクワクしているんだよね。
……ノアールの下に旅立つ前の、思い出作りをしておきたいからさ。
さ、気持ちは切り替えていこう。楽しむ時はしっかり楽しむんだから。
でもこのままお祭りに行く前に二人には渡す物がある。これも前の人生ではやらなかったことだ。
ただ、ちょっと……戸惑う。
「ん? どうした、ルージュ?」
「何か気になることでもあった?」
もじもじしている私に気づいて、リビオとオリドが順番に聞いてくる。
ええい、せっかく用意したんだから渡しちゃえ!!
私は返事より先にバッと二人の前に紙袋の包みを差し出した。
「な、なんか豪華なプレゼントがたくさんだろうから、その、ちょっとあげるのを躊躇っちゃうんだけど……」
「え……も、もしかして、プレゼント!?」
「わぁ、ありがとう、ルージュ。この後の時間がプレゼントだと思っていたのに。驚いたな」
リビオとオリドがまた順番に驚いた声を上げるので無言でこくこく頷く。
すると、二人が同時にがばっと抱きついてきた。わぁ!
「ルージュがくれるものならなんでも嬉しいよ? 本当にありがとう」
「そうだぞ! なんなら一番嬉しいし一生大事にするし!」
は、わわわ。ちょっとそこまで言われるともっと恥ずかしくなるんだけど!!
私は慌てて二人の腕の中から抜け出すと、二人が手に持つ紙袋に手を伸ばした。
けど、当然ながらひょいっと避けられてしまう。
「へ、下手っぴだし。やっぱり返して!」
「だーめ。これはもう僕のものだから。ずっとずっと大事にするし、持ってるから」
「俺も! 肌身離さず持つ! ありがとな!」
「ひぃ、せ、せめて誰にも見せないようにしてぇ」
恥ずかしがる私をよそに、うきうきと紙袋の中身を確認する二人。ああああああっ!
二人は私が作った歪なお守りをまじまじと見ている。
エルファレス家の家門を刺繍した小さな袋なんだけど……一応、中に私の魔法が込められた魔法石が入っている。やっぱ石だけ渡せばよかったかな。
「大丈夫。言われなくても誰にも見せないよ。そのくらい大切な宝物だから。っていうか上手にできてるじゃない。」
「ほんとそれ! 自信持っていいのに! でもルージュの手作りなんて貴重なもん、他の奴らに見せらんねーし!」
「それなら、まぁ。えっとね、中には魔法石が入ってるの。二人が大きな怪我をした時、一度だけ全回復するやつ。だからずっと持っててね? 発動しないにこしたことはないんだけど。だから、お守り」
「えっ、すげぇ! 作るの大変だったんじゃ」
「ん、ドゥニに手伝ってもらったから。でも、魔法を込めたのは私だよ」
「本当にすごいね、ルージュ。僕よりもリビオのほうが発動させる確率は高そうだね」
「お、俺だってそう簡単に大怪我なんかしないし!」
「僕は小さな怪我だって滅多にしないよ」
まぁ、それはそう。オリドは基本的に本部で作戦を練るのが仕事だからね。
でも人生って何が起こるかわからないし、魔王が復活したらそれこそどこにいたって危険だもん。
……そんなことは起こらないのが一番ではあるんだけど。
本当はこれ、二人が重傷を負った際に自動的に発動して、一度だけ全回復する強力な魔法だったりする。
前の人生の終わりがさ、ほら。リビオが大怪我を負った時だったでしょ? あの時は気が動転していたこともあって時間を巻き戻そうと必死だったけど……今回はちゃんと回復するような魔法をしっかり考えた。
体力を多少奪うことにはなるけど、絶対に全回復できるように。
そして……その時本人に回復するだけの体力がなかった場合、私から体力が奪われるようにした。
だから万全だ。絶対に一度は助かる。ま、当然ながらこのことだけは秘密だけど。
だって、私の体力を使うなんて知られたら絶対に怒られるし、受け取ってもらえないもん。
バレた時に恨まれたっていい。ものすごく叱られたって、嫌われたっていいの。
二人を失うことに比べたら、多少私の体力が奪われるくらいなんてことないんだから。
それに、同じ立場だったら二人だってそうするってこと、知ってるもん。
「あのね、夜になったらまた時間をもらえないかな? ベル先生と、ママと。家族みんなに話したいことがあるの」
「それはもちろん。っていうか、祭りが終わったらどうせ屋敷でお祝いするじゃん」
まぁそうなんだけど。
絶対に、みんな揃っていてくれないと嫌だからさ。
返事をせず曖昧に笑っていると、リビオは片眉を下げながら言葉を続けた。
「……なぁ、ルージュ。俺、ちょっと嫌な予感がする」
勘がいいなぁ。でもまだ言えない。
「大切な話だからね。心して聞いてほしいことではあるかな」
「ん……わかった」
納得していない様子ではあるけど、どのみち今日の夜には伝えることだと引き下がってくれたリビオ。
でもそのままぎゅっと抱き締めてきたのでぽんぽんと背中を撫でてあげる。
「ちゃんと話すよ?」
「わかってるよ。でも今はルージュをぎゅってしたい気分だった」
「いつもじゃん」
「今は特にそーなの!」
やっぱり鋭いよねぇ、リビオは。オリドもどことなく心配そうにはしているけど。
「ほら、お祭りに行こ? 私ちょっとお腹空いちゃった!」
「そうだな! オリドも行こうぜ!」
「うん。ほら、ルージュ。手を繋いで」
「俺も! 俺も!」
はいはい。私は右の手をリビオ、左の手をオリドと繋いで歩きだした。もう小さな子どもじゃないんだからちょっと恥ずかしいけど……。
今しかできないことだからね。兄弟仲良く、お祭りを楽しんでこようかな!




