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ルージュの巻き込まれループ人生〜誰なの!?何度も死に戻ってるのは!〜  作者: 阿井りいあ
2章

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91 もうすぐ十五歳になります


 森を駆ける。私は普通に走っただけではそこまで足が速くないから、風の魔法と身体強化を使ってスピードの補助をしていた。


 その分、障害物を避けるのも難しくなるんだけど、それももう慣れた。

 今回の人生ではしっかり身体も鍛えてきたからね。思うように動くようになってきたと思う。


 女剣士時代より魔法が使える分、強くなっている自覚もあるよ。さすがにあの頃のような剣術は使えないけど、要は戦う力があればいいわけだし。


「ルージュ!」

「わかって、る!!」


 ジュンの声が響き、それに答えながら宙返り。その瞬間、さっきまで私がいた場所にかまいたちのような攻撃が通過した。

 けど、それは悪手だよ、魔物さん。おかげでようやく居場所がはっきりした。


「止まれっ」


 時間停止の魔法を飛ばし、魔物の動きをピタリと止めた。まだその姿は見えないけれど、手応えがあるから間違いなくそこにいる。


 今、私たちが討伐しているのはガメレオンという名の大型の魔物。

 姿だけでなく気配も消すことのできるこの魔物はまずその居場所を特定しないことには話にならない。


 ま、逆に言えば場所さえわかればこっちのもの。大型だから狙いやすいし、今は時間停止をしているから攻撃に使った長い舌も伸びきった状態のはず。


「ジュン!」

「わかってるって!」


 今度は先ほどとは逆のやり取り。でもほら、連携を取るには一応確認しておかないとね。

 ジュンは返事をするのとほぼ同時にガメレオンめがけて手刀を振りかぶった。


「せぇいっ!!」


 ジュンの手刀がガメレオンの伸びきった舌を簡単に切り落とす。

 ガメレオンは大きな鳴き声を上げながら姿を現わし、その場に倒れた。


 地響きがすごい。

 それにしてもこの魔物、舌を切るだけで絶命するってのも不思議だよね。急所だってわかってはいるけど死因ってなんなんだろうっていつも考えちゃう。


「よし、これでボクとルージュどっちも魔物を十体ずつ討伐したな!」

「そうだね。強い魔物の気配ももうないし、魔塔に戻ろう」

「しっかし、ルージュに手助けしてもらう日が来るなんてなー。悔しいやら成長が嬉しいやら」

「年寄りみたいなこと言わないでよ。まだ若いのに」

「うるせー」


 倒したガメレオンを収納魔法でしまいながら、軽口を叩き合う私たち。


 魔塔のメンバーとはわりと満遍なくコンビを組ませてもらってきたけど、ジュンやクローディーとは一番やりやすさを感じるね。魔力的に相性もいいのもあるけど、信頼関係も築けているって思うし。


「けどさ、やっぱ嬉しいよ。ルージュももう最高位の魔法使いだなんてさ」

「ふふん。もうすぐ十五歳になるもん。当然でしょ」

「普通は成人前の子どもは最高位になれねーの。嫌味かっ」


 初めて会った時は好戦的で、すぐ張り合ってきたのに、今では私の強さを認めて褒めてくれるだなんてね。私のほうこそ感慨深いよ。

 ま、ジュンが張り合うのをやめたのも、私がノアールたちのとこに攫われて、何度もループを繰り返してるって聞いた後だから、心境が変化したのもわからなくもない。


「いよいよ、魔王討伐に向かう日が近づいているからね。急ぐ必要があったんだもん」

「それはそうだけどさ、全部一人で抱える必要なんてねーんだぞ?」

「わかってるよ。少しでも力になりたいだけ」


 心強い味方がたくさんいるのもわかってる。私だってこれでもみんなに頼ってるつもり。

 私がそう付け加えると、ジュンはくしゃくしゃっと私の頭を撫でながら「生意気っ」と困ったように笑った。


 ああ、居心地がいいなぁ。このままずっとみんなと一緒にいたい。一緒に戦いたい。


 でも、私はもうすぐノアールの下に帰らなきゃいけない。そのためにも、絶対に強くならなきゃいけなかったんだ。

 みんなに伝えるのは……どうしようかまだ迷ってる。ベル先生にだけ伝えるか、ちゃんと他のみんなにも直接伝えるか。


 士気が下がるのは避けたいから、私の秘密を打ち明けた人だけにはなるけど……しんみりさせてしまうのもね。

 それに、伝えた瞬間に私は転移してしまうわけだから全員に聞いてもらうのだとしたら集まってもらう必要がある。

 みんなのスケジュールを合わせるというのは無理に近いから、どうしても直接伝えられない人は出てきちゃうんだけど。はぁ、どうしようかな。


 かといって、いつまでも迷っている暇はない。

 そろそろ期限の五年が経つし、いつ呼び戻されるかわからないから。十五歳までには言わなきゃ、とは思ってるけど。


 だから、たぶん。

 リビオとオリドの成人のお祝いをするだろうその日に言うことになるのだろう。


 うぁー、気が重い。二人のめでたい日に、幸せでいっぱいのその日にどん底に突き落とすようなことを言わなきゃいけないなんて! ノアールやサイードなんかの下に行くなんてー!!


「おーい、どうした? 置いてくぞー!」

「ジュンが速いんだよ! 今行く!」


 足首につけられた魔道具に憎々しげな視線を向けてから、私はジュンの後を追う。


 足首の魔道具は、その時が近づくにつれて重みを増し、私の足を文字通り引っ張っているような気がした。



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