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ベアー家

ハルトは当主を引きずりながら叫ぶ。


「動いた奴から倒す!俺の言う事を守れ!」


「ひ!ひいい!」

逃げ出そうとした熊族をハルトが斬り倒す。

この行動により逆らったらまずいと分からせる狙いがあった。


「もう一度言う!動いた奴から倒す!俺の言う事を守れ!武器を地面にゆっくりと置け!」

皆が従う。


「両手を頭の後ろにおけ!」

「手はそのままであお向けに寝ろ!俺が気絶させる!命の保証はする!」


ハルトは熊族の腹を殴り気絶させていく。


「ギルドを取り戻した!エステルと他の者はここを守ってくれ!」

ハルトは外に出ていく。

熊族当主を引きずって。


倒された当主を見た熊族は戦意を失い逃走を開始した。


1人逃げ出すと10人、100人とどんどん逃走者は増えていった。

こうすることで犠牲を最小限に抑え熊族を殺さず助ける作戦をとった。


ロックは素早く兵に指示を出し、町の安全を確認した後、逃げていった熊族に追撃を仕掛ける準備を始めた。


「追撃して倒すのか?俺は脅すだけで済まそうとしたんだが?」

熊族の性格には問題があるのは分かっている。

だが殺すほどかどうかは分からない。


「ハルト、今王都は余裕が無い状態だ。西はレッド家、東はブルー家、南はベアー家3方向から足を引っ張られ続けて今の衰退を招いた。今南だけでも潰しておかねば今王家が助かってもまた民が苦しむ。」


確かに他の獣人族は苦しんできた。

だが、


「今王都も危ないんだろ?ブルー領の兵が攻めてくるって話だ。そっちに行くのが良いんじゃないか?」


「確かに王都が危なくなるが、ベアー家を潰せるチャンスは今しかない。今を逃せば機を失う!」


分からない。

王都に行くのが良いか、ベアー家を潰すべきか、・・・・・。


「ロックの考えは分かった。他の獣人族の意見を聞いてくる」


「言っておくがベアー家を倒せるなら今倒しておきたいという考えが多数派だ」


「それでも自分で聞いてくる」




俺はニャムの元へ向かった。

「ニャム、ベアー家について聞きたい。ロックはベアー家を皆倒そうとしているがどう思う?」


「私もベアー家は好きじゃないにゃあ。当主が変わってもきっと同じことを繰り返すにゃあ」

ニャムがここまで言うなら熊族はよっぽどひどいのだろう。

だが、一人だけの話じゃ分からない。


俺は色んな獣人族に意見を聞いて回った。


「熊族は自分に甘くて他人に厳しい人が多数だぴょん」


「僕も今殺した方が良いと思う」


「俺はロックについて行く!」


「熊族は倒しておくべきだよ」


何人にも話を聞いて回ったが、熊族の悪い話が多すぎる。

テイカーの集まりのようだ。


決めたぞ。








俺はロックについて行く。


ただ行く前にリコを見てこよう。


リコの様子を見に行くと、まだ恐怖で震えていた。


両腕で自身を抱き丸まり、エステルとメイが落ち着かせている。

きゅうはリコに引っ付き離れない。

きゅうもリコを慰めようとしているのだろう。


リコに近づくと、リコは俺の服を両手で掴み離さない。


「リコ、落ち着いて聞いてくれ、今から出かけてくるが、帰って来る頃には怖い者はいなくなっている。だからここでエステルたちと一緒に居てくれ」


リコの手の力が弱くなる。

俺はリコの手を引き離し、ロックとともに行く。


リコが何をされたかは分からない。


だが、


リコの反応を見て決めた!


俺は熊族を倒す!




ロックの部隊と共に俺は熊族の追跡を開始した。


熊族は先行して南に逃げたが、数時間準備をし、ビックピヨに騎乗した状態のロック部隊に追いつかれ、熊族はヘロヘロになりながら走る。

交代で休憩を取りながら熊族を追い込み、疲弊させた。



「来るな!お前らに人の心は無いのか!」


「助けろよお!」


「お前ら人間じゃねえ!」


熊族は俺達を罵倒してくる。

なるほど、テイカーにそっくりだ。

お前らはホワイト領に襲撃を仕掛けて人を殺してるんだぞ。

自分に甘すぎる!



「なあ、考えがある。ダークスフィアの大きさを見てきたい。小さめなら叩き割って熊族にぶつける」


「・・・・・分かった。合図があれば部隊を撤退させる。俺は奴らを南に誘導する」


「ああ、頼んだぞ!」

こうして俺はダークスフィアへと向かった。





「少し小さいが大きすぎるよりはいいか!」

俺は躊躇なくダークスフィアを斬り壊し、魔物を引き連れて熊族の元へと向かう。


「ロック!撤退しろ!」


「総員撤退いいいいい!」

ロックの部隊は素早く撤退する。


ダークスフィアを破壊した魔物はきっちり熊族になすりつけた。


これ以上走れなくなった熊族が他の熊族の肩を掴み我先に前に進もうとする。

肩を掴まれた熊族は掴んだ腕を武器で斬り落とし、腹に蹴りをいれて置き去りにする。


逃げ遅れた熊族が魔物に囲まれあっという間に殺される。


強い熊族が弱い熊族を斬り、魔物のターゲットを押し付けていく。


更に南に残った熊族のキャンプに走り仲間を犠牲に逃げ延びようとした。


その場にハルトはおらず、すでに北へと向かっていた。






俺は走ってロックに追いつく。


「ロック、熊族を全部倒したか見てはいないが、多分熊族は助からない。皆で足を引っ張りながら逃げていた。協力すれば魔物を全滅させることも出来たと思うが、そうじゃなかった」


「そうか」






この出来事があった頃、ブルー領の王都襲撃が行われていた。






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