ベアー家の侵攻
【ホワイト領】
キュキュクラブとアリス・ニャムはダンジョンから帰ってきた。
「ギルドの方がパタパタしてるね」
「事件だな」
「皆で行ってみましょう」
「そうだよな。行くしかないよな」
ギルドに入るとロックが忙しくしてる。
「これ絶対戦闘系の問題だよな」
エステルが受付嬢に話を聞く。
「何かあったの?」
そして俺を受付嬢の前に押す。
「ハルト君!大変よ!王都とホワイト領のダークスフィアがすべて破壊されたの」
「たくさんの魔物が押し寄せてくるよな。それでロックが忙しそうなのか。今から出陣か?」
ホワイト領には王都のような立派な防壁は無い。
街に籠って防衛戦という選択肢は取れないのだ。
「話が早くて助かるわ。今すぐみんなも参加して欲しいのよ」
「分かった。ロックについて行けばいいんだよな?話は移動しながらロックから聞くぞ」
「そうして頂戴。疲れてるとこごめんね」
こうして俺達はすぐに出発した。
「皆、兵糧丸を食べておいてくれ」
皆に渡していく。
ダンジョン帰りで少し消耗していた為だ。
俺はロックの元に行く。
「で?どういう状況?詳しい話はロックから聞くことになってるから教えて欲しい」
「ブルー領の斥候部隊が王都4つ、ホワイト領2つのダークスフィアを破壊した。幸い大きいダークスフィアは無かったが、多くの魔物が発生している。俺達はホワイト領の2つのダークスフィアから発生した魔物を倒しに行く」
斥候はシーフ系ジョブの部隊だ。
『潜伏』や『感知』、『敏捷アップ』などのスキルを持つ者が多い。
斥候部隊ならダークスフィアを破壊して逃げてくることも出来るだろう。
ホワイト領には斥候部隊が不足している。
ホワイト領は猫族の加入で斥候を出来る者は増えているが、現状魔物の索敵で活用するにとどまっている。
原因はホワイト領の戦闘部隊の不足だ。
ダークスフィアの鎮圧に多くの力を割いている為非戦闘職も活用し、魔物討伐を行っている。
もちろんその中に斥候を出来る猫族も多く参加している。
だがレッド領とブルー領は別だ。
西のレッド領、東のブルー領共に多くの斥候とスパイを送り込みこちらの情報を盗み、ホワイト領が失態や隙を見せないか監視しているのだ。
テイカーのいるブラック領もシーフ家を保有して斥候やスパイを行っていた。
そういう理由があり、ブルー領やレッド領が本気でダークスフィアを破壊しに来たらホワイト領は後手に回るしかない状態なのだ。
これは王都も同じことで、騎士団のような戦闘力はあるものの、斥候能力で考えればブルー家、レッド家より劣る。
そんなことを考えながら魔物の群れに向かう。
魔物の群れを発見するとアリスは先制攻撃を仕掛けた。
「ブリザードアロー!」
アリスの魔法で1000を超える氷の矢が魔物を襲う。
魔物の群れとの戦闘開始早々アリスは本気で魔物を狩っていく。
「ブリザードアロー!」
更にとどめとばかりにもう一度攻撃する。
「こ、これはすごいな」
ロックが驚愕する。
「アリスは賢者だからな。賢者の効果で魔法の威力上昇・発動速度上昇・消費魔力減少効果がある上全魔法っていうスキルで全部の魔法が使える」
「後は私だけで充分にゃあ」
ニャムが残った魔物に向かい走っていく。
「にゃあ!」
ニャムのダガーが風を纏い、ダガーを振り、突くたびに風の斬撃が飛び、魔物を倒していく。
「ロック、ニャムは勇者だ。勇者の効果で魔法剣の威力を2倍にする。戦闘は2人だけで大丈夫だ。魔物の回収部隊だけ残して次の群れに行くぞ」
「そ、そうだな」
ロックはストレージ持ちと斥候を残して次の魔物の群れへと部隊を歩ませる。
次の魔物はキュキュクラブが最初に攻撃をすることになった。
「お、魔物が見えてきたぞ。でもホワイト領から兵も来たな」
ビックピヨに騎乗した兵がこちらにやってくる。
「ロック様!大変です!ホワイト領がベアー家の襲撃を受け、ギルドを占拠されました!リコも人質に取られています」
「分かった。ハルト、キュキュクラブとニャム・アリスはここで魔物の討伐を頼む」
「俺達は行かなくて良いのか?」
「住民やリコ殿を人質に取られている。ハルト以外は人質を取られたら武器を置いてしまうだろう。私が悪役を務める」
ロックは自身が嫌われ者になっても人質を無視してベアー家を殺すつもりだ。
それは正しい。
人質を取られ、武器を置いた時点でその者は敗北となり、被害者を増やすだけだ。
だが!
「分かった。だが終わったら俺達も向かうぞ」
「分かった」
俺たち以外皆ホワイト領に向けて進軍した。
魔物の群れが向かってくる。
数は3000以上!
さっきより多い。
「アリス!全力で魔物を減らせ!」
アリスの魔法で空中に無数の氷の矢が発生し、魔物に向かって降り注ぐ。
「ここから先には行かせない!疾風迅雷!」
ハルト達は魔物に向かって行く。
◇
【ホワイト領】
ギルドはベアー家当主が占拠し、そこにリコや受付嬢も捕らえられ牢屋に入れられていた。
「ぐははは!ホワイト領の力も大したことないな」
ベアー家当主は奪ったベーコンやワインを牢屋の前で堪能する。
「解放していただけませんか?こんなことをしては王家の騎士に殺されてしまいますわ」
「ぐははは!王家は今頃ブルー家が占領してるんじゃねーか?それより口には気を付けろよ。お前と隣のお嬢ちゃんを犯してやることも出来る。だがお楽しみの為に残しといてやってるんだ。最もお前らは王都が占領された後俺の奴隷になるんだがな!ぐははは!」
リコはガタガタと震えだした。
受付嬢がリコの手を握る。
そこにベアー家の側近が入ってくる。
「大変です!ホワイト領の部隊が戻ってきます!」
「数はどの程度だ?」
「我々とほぼ同数です!」
「ぐははは!同数なら俺達の勝ちだな!力を持つ我ら熊族に勝てるわけねーんだ」
こうして戦闘が始まるがロックの部隊とベアー家の戦いはその日膠着状態に陥る。
遠征終わりで疲弊し、物資も対ベアー家戦に備えていなかった為ベアー家の部隊を突破できなかったのだ。
その夜ベアー家はギルド1階で宴会を開く。
完全にロック達を下に見ていた。
「ぐははは!ロックの部隊は大したことねーな!」
ワインを水のように飲み、ワイン樽の蓋を割ってジョッキで救って飲みだす。
そこにベアー家の側近が慌てて入ってくる。
「ロックの部隊が攻撃を再開しました!」
「ばかめ!お前らだけで抑えてこい!」
こうしてギルドからベアー家の兵が飛び出していく。
「まったく、ビビってんじゃねーよ」
ギルドの入り口を壊される。
熊族全員が入り口に目を向けた。
ギルドの入り口からエステルが扉を壊して堂々と入ってくる。
「ローリングアタック!」
斧を両手で持ち、コマのように高速で回転しながら敵を斬り倒していく。
そしてベアー家当主に迫る。
ハンマーで受け止めようとするが、ハンマーもろとも壁に吹き飛ばされる。
エステルの回転が止まり、美しい動作でぴたりと止まる。
「あの犬族を倒せ!」
だが、圧倒的な力の差にエステルに向かって行くものは居ない。
その時後ろの扉からハルトが入ってくる。
エステルはおとりだったのだ。
ワザと派手に暴れ注意を引き付ける。
その隙に人質をニャムとメイが解放していた。
あまりに流れるような自然な動作に熊族全員が驚く。
「お、お前!どうやって裏から出てきた!」
「そんなことはどうでもいい!お前何で牢屋のみんなに食事を与えなかった!」
「何で知っている!まさかもう救出されたのか?」
ハルトのパンチが当主の頬にめり込む。
「ぎごおお!」
当主が床に崩れ落ちる
「お前当主だな。名前は知らないが、どうでもいいか。お前一人倒せば皆が助かる!」
ハルトは当主を斬り倒した。
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