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キュキュクラブVSレイドボス

テイカーが王都に走ってくる。その後ろから異様に大きいスラッシュベアがテイカーをなぶって遊ぶように追いかけてくる。


テイカーは騎士団にすぐに拘束される。


「ぐふふふ。騎士団か。今日は帰ってやろう。」

レイドボスが撤退する。

喋る事が出来るレイドボスは厄介だ。

喋る事というよりも、その知性が厄介なのだ。


レイドボスがもしこのまま王都に突撃し、消耗してくれればまだ王都側に勝機はあった。

封印され弱った状態のレイドボスをさらに疲弊させ打ち取れる可能性があったからだ。


だが、撤退した。

傷を癒し、万全の状態で挑むため撤退したのだ。

決して侮りや愚かさからの撤退ではない。


この隙に王都に兵力を呼び寄せるが、他の貴族は、暗黒時代の余裕の無さを理由に援助を断る。

中には王都に疲弊してもらった方が都合の良い勢力もいる。


今頼りになるのは、王都と、ホワイト領の力だけであった。



三日後、完全回復したレイドボスが再び現れる。

「ぐふふふ!はははは!」

笑いながら斬撃を飛ばし、兵に打撃を与え立ち去る。


次の日から毎日王都を襲撃する。

どの方向から来るか、どこをねぐらにするか、読めず、苦戦する。

斥候を出しても高確率で殺され戻ってこない。

王都の斥候能力は高くなかった。

近衛に1人だけ斥候能力の高い者がいるが、広範囲の斥候は効率が悪く優秀な近衛が犠牲になる。

王都は斥候を出すことをあきらめた。


更にジーク・騎士団・ロックの部隊で襲撃に備えるが打ち取ることは出来ず、王都側は疲弊していった。


王都はまるでなぶり殺しにされるように追い詰められる。






王城で会議が開かれるが、打開策は見つからない。


「キュキュクラブはまだ来ないか?」

王は祈るように聞く。


「いえ、まだ来ていません!」


王の顔が苦痛に歪む。


「何か打開策は無いか?」





「「・・・・・・・・・・」」


レイドボスはレベルとは違う軸の進化を遂げた化け物である。

生命力は通常の魔物の100倍、しかも強力なスキルを持つ。


さらにレベル自体も高い。会話が出来る時点でレベル40を超えているのだ。

前回の暗黒時代に多くの英雄を殺し、最後まで生き残ったレイドボス。


そして今多くの兵が殺され、皆に絶望の色が見える。





カイが走って王に報告する。


「キュキュクラブが来ました!レイドボスも東に現れました!」


王は椅子から立ち上がった。




レイドボスが東の防壁に姿を現す。


キュキュクラブが前に出る。


防壁には多くの人。


防壁の外には精鋭が並ぶ。

キュキュクラブに何かあった時は必ず助けるよう命を受けている。




レイドボスとキュキュクラブが対峙した。


「ぐふふふ。3人と1匹か。我もなめられたものだな。」


「お前がレイドボスか。みんな、手はず通りに頼むぞ!」


「おい!我の話を聞け!」


「アタックアシスト!ガードアシスト!スピードアシスト!リジェネ!」

メイがハルトに補助魔法をかける。


「貴様ら!無視するなと言っている!」


「疾風迅雷!きゅう、風の斬撃を飛ばせ!」

俺は全力で駆け出し、レイドボスに迫る。

きゅうは方から風の斬撃を連続で飛ばす。


エステルとメイも後を追う。


「くずどもがあああ!」

レイドボスは腕を振り、つめから斬撃を飛ばす。


レイドボスの前に立ち、2本の包丁で連続攻撃を繰り出しつつレイドボスの周りを半回転する。

俺にターゲットが移ったことを確認し、攻撃を続ける。

後ろからメイとエステルの攻撃が直撃し、レイドボスは挟み撃ち状態となる。


俺はひたすら攻撃を躱し、レイドボスに斬りつけ、きゅうは俺の肩で風の斬撃を撃ちまくる。


後ろからはエステルが重い攻撃を繰り出し。メイはロングナイフで連撃を続ける。


レイドボスはあっという間に狂化状態となる。

狂化状態は生命力が半分になることで発動する。

この状態となることで、新たなスキルが発現する。


「俺を追い詰めたことを後悔」

俺はレイドボスの言う事を一切聞かず、切り札を使う。

話す魔物の言う事を聞いても意味が無い。

まして、今は危機的状況だ。

早く終わらせるのがベスト!


「みじん切り!みじん切り!」


レイドボスが倒れる。


俺はレイドボスの顔に迫る。

「みじん切り!」


「倒したか?あっけないな。」

レイドボスをストレージに入れる。

生きていればストレージに入れることは出来ない。

収納出来た。

それは討伐した事を意味する。


周りから歓声が聞こえる


「終わったし帰ろうか。」


「ハルトが居るとレイドボスが弱く見えるよね。」


「ハルトが居なかったら倒せなかったですよ。」


「そうか?さすがに兵糧丸くらいは寄付しとくか。ポーションも使い果たしただろうし。」


ジークが走って前に出る。

「ま、待て!王に会うのだ!王を無視してそのまま帰るのはまずい!」


「疲れたからこれ以上疲れたくないぞ。」

魔力があまりないのは本当だが、謁見の間は嫌いなんだよな。

面倒なのだ。


「諦めろ。」






キュキュクラブは王城に向かって歩く。


道の横は王都の民が並びキュキュクラブを讃える。

今までの絶望を覆したためか、泣いている者が多い。


王城に入ると謁見の間に案内される。


王の斜め前に4騎士団の大隊長を始め重鎮が並ぶ。


「キュキュクラブの皆、ご苦労であった。」


「所で兵糧丸があるんだけど使うか?」


「ぜひ出して欲しい。ポーションも兵糧丸も不足している。」


「それじゃ、受け渡したら帰るぞ。」


「待て、お礼をしたいのだ。」


「いや、大変な時にお礼を貰うのは良くない。立て直してからにしてくれ。あー疲れた。激戦で疲れすぎた。帰って休みたい。疲れすぎたぞ。」


「余裕で倒したそうだな。」


「いや、ギリギリの戦いだった。もう疲れている。」


「・・・まあよい。引き留めてすまなかった。ゆっくり休んで欲しい。」


キュキュクラブは兵糧丸を受け渡した後走って王都を出て、走って帰っていった。


その後、褒美を受け取らず、大量の兵糧丸を寄付して颯爽と消えるキュキュクラブの名声は高まる。








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