無敵のジーク
『回復力アップレベル1を取得しました。』
ジークは笑う。
攻撃スキルにあこがれていたが、結局覚えられなかった。
だが、それでいい!
少しでも長く!
少しでもしぶとく!
俺は木偶のジーク!
しぶとい男だ!
「うおおおおお!」
回復力アップのスキルが発動し続ける。
何度も剣を振り、何度も攻撃を受ける。
『回復力アップのレベルが1から2に上がりました。』
しぶとく!何度も!戦い続ける!
ジークの足元には魔物の死体が敷き詰められていた。
何度も何度も斬り倒し、何度も何度も突き倒す。
何度攻撃を受けても立ち続け攻撃を続ける。
ジークは消耗し、息を上げる。
「こーひゅー!こーひゅー!」
ロックが叫ぶ。
「ジーク!もういい!下がってくれ!」
周りの兵も叫ぶ
「ジークさん!下がってください!」
「ジークさんが死んでしまう!」
ジークは下がらない。
ジークが前にいることで何とか戦線を維持できている。
絶望的な状況。
限界を迎えるジーク。
兵士の士気も落ちる。
その時、風の斬撃が魔物を斬り刻む。
「疾風迅雷!」
「「ハルト!」」
ハルトは魔物の間を縫うように魔物の群れの中に飛び込み、通り過ぎた後魔物が倒れていく。
後ろからメイとエステルが魔物を倒しつつ進む。
さっきまでの劣勢が嘘のように兵の士気が上がっていく。
「キュキュクラブが来てくれた!」
「今の内に立て直せ!」
兵に活気があふれる。
「ハルトに目が向いている!今の内に魔物を押し返せ!」
「俺達には英雄がついている!勝てるぞ!」
こうして、魔物の群れをキュキュクラブがひきつけ、ジークは救出された。
ジークは剣を地面に突き刺したまま気絶する。
ジークが眠っている間に戦闘は終わり、無事ブック領は守られた。
ジークはベッドで目を覚ます。
「ジークさん!気分は大丈夫ですか!食事はとれますか!?」
「ああ、気分は大丈夫だ。俺はどのくらい眠っていたんだ?」
「まる1日です。」
スキルのおかげで体調は悪くない。だが、腹がすいた。
ぐ~~~~!
「今スープを持ってきます。」
兵は駆け出し、持ってくる。
俺はスープを一気に飲み干す。
「助かった。もう一人で歩ける。」
「では、ハルトさんの食堂に行きましょう。」
食堂に行くと、兵士が大声をあげる。
「ジークさんに席を空けてください!」
すぐに席が空き、座らせる。
「みんなの順番を無視して割り込むのは良くないのではないか?」
ハルトが出てくる。
「ジーク、良いから座ってくれ。けが人優先で食事をしてもらってる。それに街を救ったジークが食べないと、他の人が食べにくいだろ。」
「俺がか?俺は途中で気絶した。」
「それまでジークのおかげで持っていたし、ジークがダンジョン合宿でみんなを育てたから街に被害が出なかったんだ。」
周りの者も賛同する。
「ジークさんのおかげで町は救われました。英雄はハルトだけじゃありません。」
「無敵のジークの力で助かりました。」
「カレーだ。食べてくれ。」
ハルトがカレーをテーブルに置く。」
ジークはカレーを5皿黙々と食べた。
その目には涙が溢れていた。
◇
テイカーは拘束されたまま、ジーク、ロックとともに王城にたどり着く。
謁見の間ではテイカーは拘束されたまま謁見を行う。
さるぐつわを付けられ、会話さえできないようにされている。
「ジーク、上級剣士になったそうだな。」
王はにこやかに話す。
「はい。」
「これよりジークを騎士から近衛に昇格させる。」
この王国で近衛の役割は、王の護衛だけでなく王の直属の部下を意味する。
「ロックとともに、ブラック領のダークスフィア鎮圧に向かってくれ。」
テイカーは結局1つもダークスフィアを鎮圧できず、他にもダークスフィアを残していたのだ。
「「任務を遂行します。」」
「テイカー。お前の星を1つはく奪する。」
「ん-!んー!」
テイカーは何かを話そうとするが、王は無視する。
「そして、ダークスフィアの鎮圧が終わるまで王城に拘束し再教育を行う。これはテイカーがダークスフィア鎮圧の邪魔を出来ないようにするための特例措置だ。」
テイカーはレベルが高く、その気になればスラッシュでダークスフィアを破壊し逃亡することが可能だ。
前回の王都ダークスフィア破壊の失態でそれが証明され、テイカーが他の者の足を引っ張ることを危惧したのだ。
テイカーは自身だけが逃げるための能力だけは高い。
それが王の評価だ。
テイカーは2つ星貴族となり、リコのホワイト領より格下の貴族となった。
今回の星はく奪は、ダークスフィアの鎮圧を出来なかった為ではない。
再三無理なら星を返上するよう警告したが無視し、さらに魔物が溢れた際に領民より我先に逃亡したことが決め手となった。
ブラック領のダークスフィアは大きく成長し、鎮圧の難易度を上げた。
これによりホワイト領とブック領はブラック領のダークスフィア鎮圧に力を割き、ブラック領は周りの領の足を引っ張ることとなった。
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