暗黒時代のダークスフィア対決
「暗黒時代!ダークスフィアが発生したのですか?」
ダークスフィアとは、魔物発生器だ。
魔物は人の負の感情から発生する瘴気によって生まれる。
ダークスフィアとはその瘴気が集まり球状の物質化したものだ。
王が何度も人を助けろと言うのは、瘴気の発生を抑えるためという理由も含まれる。
悪政を敷けば民が苦しみ瘴気の発生量は増える。その瘴気が周りの魔力や物質と合わさり魔物を生み人間を襲う。
「王都で発生が確認された。すぐに自身の領に戻り、領の調査を行い、結果を報告して欲しい。」
テイカーは口角を釣り上げていたが、王とリコはその意味が分からなかった。
すぐにホワイト領の調査が行われ、1つのダークスフィアを発見した。
すぐにリコは謁見の間で報告する。
「ホワイト領にダークスフィアを1つ確認しました。」
丁度テイカーも謁見の間に入場し、口角を釣り上げて笑う。
「ブラック領にダークスフィアは発見されませんでした。」
「それは本当か?広大なブラック領、しかも民に厳しいブラック領がか?ダークスフィアが複数個あるのが自然だがしっかり調査を行ったのか?」
「本当です。ブラック領では普段から魔物狩りを行っております。ここで提案なのですが、王家領のダークスフィアの消滅数をホワイト領と競いたいのです。」
「王家としては助かるが、望みはなんだ?」
「私の評価を上げて頂きたいのです。」
「評価を上げるとは具体的に何が欲しいのだ?」
「5つ星貴族への昇格をお願いいたします。」
「無いな。今ブラック領を降格させるよう他の貴族から進言が来ている。そして私は星を1つはく奪しようと考えている。分かっているのか?」
「王はリコに騙されているのです!」
「誰がホワイト領と言った?進言はレッド領から来ている。それと、新聞を見た方が良い。お前がどのように書かれているか分かる。」
「で、では星のはく奪を取り消していただきたい!」
「まあ、良いだろう。ただし、ホワイト領はテイカーに付き合わされているだけだ。ホワイト領が負けても罰や制裁は無い。ホワイト領は自身の領のダークスフィアの鎮圧を優先してもらう。これで良いか?」
「かまいません。」
「分かりましたわ。」
「現在王家領のダークスフィア4つを4騎士団が抑えている。残り5つのダークスフィアの鎮圧を任せる。テイカー、3つのダークスフィアを鎮圧したらブラック領の勝利だ。そして星はく奪の件を取り消すがどうだ?」
「その条件でお願いします。」
◇
キュキュクラブはホワイト領のダークスフィアの発生地点に来ている。
他にもジークとロック、合計500の精鋭が集まる。
ダークスフィアは直接攻撃して破壊すると、一気に魔物を大量発生させる。
だが、ダークスフィアを放置すると、今度は魔物を生みつつ成長し、レイドボスを発生させる。
最も効果的な方法は、ダークスフィアの周りに居る魔物を倒し続けることだ。
魔物を狩り続けることで、ダークスフィアはさらに魔物を生み出し、小さくなって消滅するのだ。
「あれがダークスフィアか、黒い球が浮いてるな。」
「私も初めて見ました。」
「私もだよ。」
「いっぱい魔物が居るな!ちょっと行ってくる!」
「「え?」」
ハルトは嬉しそうに駆け出す。
リコとジークがハルトを見送る。
「まるで嵐の日にはしゃぐ子供ですわね。」
「だが、魔物の数がどんどん減っている。キュキュクラブが魔物狩りをしている間に我々は休息を取るべきだ。」
「そうですわね!」
俺の周りに魔物が集まってくる。
「疾風迅雷!」
走りながら一気に魔物を斬り倒す。
「ハルト待ってよ!」
「待ってください!」
エステルとメイも追いつき参戦する。
「僕も倒すよ!」
きゅうは風の斬撃で魔物を倒していく。
ダークスフィアは周りの魔物が少なくなると自身の命を削るように魔物を生み出す。
疲れてきゅうが俺の背中に隠れ、メイとエステルが離脱しても俺は攻撃を続けた。
しばらく攻撃を続け、満足して戻ると、ロックの指揮する部隊が入れ替わるように進軍した。
俺はジークに呼ばれる。
「ハルト、料理を作って欲しい。」
「まだストックがあるだろ。」
「今はある。だが、すぐに尽きる。ホワイト領の兵や冒険者に経験を積ませたい。」
なるほど、今ホワイト領は内政能力は大幅に上昇しているが、戦力としては不安が残る。
兵や冒険者をレベルアップさせる良い機会ではある。
さらにウィッチ家のポーション生産によりポーションのストックは豊富。
ガード家の重戦士との合わせ技で死亡率は低い。
「分かった。大食堂を出す。」
俺は大食堂を貰っていたのだ。
「頼む。」
こうしてさらに俺の料理ブーストも加わり、安全なダークスフィア鎮圧は無事終了した。
ダークスフィアが大きいうちはなかなか小さくならない感じがしたけど、30センチくらいの大きさになってからはあっという間に小さくなって無くなった。
「簡単だったな。ガード家とウィッチ家の力はでかいぞ。」
「まあ、ハルトもですわよ。」
「ハルトの力が大きいよ。」
「ハルトのおかげですね。」
「ハルト凄いよ。」
きゅうが俺の肩で得意げになる。
ロックとジークが何やら話し込んでいる。
どうやら、人を入れ替えて他の者に経験を積ませたいようだ。
ロックがリコの所にやってくる。
「リコ様、一旦帰還し、部隊を再編成してから王家領のダークスフィア鎮圧に向かいます。王への報告と定期連絡はお任せください。それと、キュキュクラブ、ジークと私の精鋭はすべて連れて行きたいのです。」
「分かりましたわ。戦闘の事は詳しくありませんの。ロックにお任せしますわ。」
こうして俺達は一旦帰還し、王家領のダークスフィア鎮圧へと向かう。
◇
次の地点へと向かう道中、ロックが近づいてくる。
「ハルト殿、ブラック領が王家のダークスフィアを1つ消滅させたようだ。」
俺とロックもすっかり打ち解けて、今では普通に話をしている。
「そういえば、勝負してたよな。」
「出来れば勝ちたいと思っている。」
「まあ、テイカーには屈辱を味わって欲しいよな。そう言えば騎士団はもうとっくにダークスフィアの消滅を終わらせたんじゃないか?」
「今度は王都の周りの魔物を狩っているようだ。」
「普通の魔物狩りもあるもんな。お、ダークスフィアが見えてきた。」
俺はあまり戦闘には参加せず、料理をすることが多かったが、俺以外のキュキュクラブは無双していたらしい。
こうして1つめのダークスフィアを順調に消滅させる。
2つめのダークスフィアの鎮圧に取り掛かり、俺は料理をしていた。
「ハルト、テイカーが2つめのダークスフィアを鎮圧し、3つめに取り掛かったらしい。」
ジークは残念そうに告げた。
「今回はしょうがない。2つめを確実に消滅させるしかないよな。」
だが、この時、テイカーは危機を迎えていた。
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