ホワイト領 傘下貴族受け入れ
ホワイト領に帰還して数日料理を作っていた。
だが今俺はホワイト領に帰って数日で王都に向かっている。
理由はリコの護衛だ。
キュキュクラブとジークと最低限の兵士だけで王都へと向かう。
リコ・メイ・エステルはきゅうと馬車でお話し中だ。
少しはリコのストレス発散になるかと思って放置している。
俺はジークに近づく
「リコってなんで呼ばれたんだ?」
「ブラック領の傘下貴族をホワイト領に引き渡したいようだ。」
「傘下貴族ってどんな人達か分かるか?」
「ウィッチ家は分からんが、ガード家はまじめな人物が当主を務めている。」
「2つの貴族を受けいれるのか。」
「合わせて200人程度のようだ。人数は多くは無い。」
「分かった。どうもな。」
馬車をみると、きゅうは話せるようになってリコにさらに可愛がられている。
休憩中は食堂を出して料理を食べてもらう。
今回はのんびりした旅だな。
こうして王都にたどり着いた。
謁見の間に入ると、テイカーとその後ろにウィッチ家とガード家と思われる当主が控える。
王が話を始める。
「テイカー、話を頼む。」
「は!ガード家とウィッチ家の貴族をホワイト家の傘下貴族として受け渡したいのです。」
「それは経営がうまくいっていないという事か?」
「そのようなことはありません。」
「では現状維持で良いのではないか?」
「いえ、ホワイト領は2つ星貴族にもかかわらず傘下貴族がおりません。」
「だが、4つ星のブラック領の傘下貴族がいなくなるのではないか?」
「私は傘下無しで領地経営する方が得意です。」
テイカー、王はそういう事を言ってるんじゃないぞ。
バカだろ?
「話にならんな。」
王はため息をつく。
「ガード家としてはどう思う?」
「は!テイカー殿には良く思われていないようなので、出来ることなら他の傘下貴族として活躍したいと思っております。」
言った!良く思われていないって言ったな。
謁見の場でそれ言う?言っちゃう!?
あいつ相当嫌われてるな。
俺はつい笑ってしまう。
王は一瞬だけ俺を見て目を細めるがスルーした。
「ウィッチ家はどう思う?」
「私もガード家と同じ考えです。」
「王家は余裕がない。傘下になるとしたらホワイト家になるが、ホワイト家としてはどう思う?」
王家はレイドボスでダメージを負いすぎた。
「わたくしは、今難民の受け入れが終わっておりません終わった後に考えたいのです。」
「なるほどな、所でハルト、お前ならどうする?」
皆どう思う?だったのに、俺だけ『どうする?』なんだな。
まあいいけど。
「俺が決めて良いんなら、リコに両家の人を見てもらって良さそうなら受け入れる。リコ、キュキュクラブが討伐した魔物をストレージから吐き出してギルドで売れる。ある程度は協力できるぞ。エステルやメイも反対はしないだろう。」
「ふむ、テイカーよ。傘下貴族をホワイト領に押し付ける形になる事で評価が下がるが、それを上回るだけの経営が出来るのか?結果によっては星のはく奪もあるぞ!」
王は、テイカーをきっちり追い詰めているな。
そして王は怒っているが、テイカーは気づいていないのか?
「お任せください!」
テイカーは口角を釣り上げ、上機嫌で答えた。
気づいてないな。
「少し休憩だ。リコとハルトはガード家とウィッチ家に直に会ってみるが良い。」
こうしてリコと俺は両家に会ってみるが、まともな印象を受け、10分で受け入れを決めた。
王に挨拶を済ませ、すぐに俺達は両家の200人を連れて帰路につく。
食事休憩のキュキュクラブ食堂は好評で、無事にホワイト領に帰還した。
だが、200人をすぐ連れ帰ることは予想外だった。
早速カイとリコが話をして、すぐに方針が決まる。
「ハルト、素材の受け渡しを済ませたら、すぐに大工の近くに食堂を設置して料理ブーストをお願いしたいのですわ。」
両家と難民の家を作る必要があるが、今回はキュキュクラブが狩った魔物の素材により、金の心配は不要だ。
後は大工の回転率の問題なのだ。
だが、ハウス工場は24時間稼働。
「料理なんだけど、食べる人が盛り付ける方式にしたい。後、量を作るため、カレー・ライス・スープ・サラダだけに品目を絞りたい。それと俺が寝ている間にストレージに出来たての料理を収納して置けるストレージ持ちが必要だ。素材を受け渡してくる。」
カイとリコは頭が良い。一気に色々言っても大丈夫なのだ。
俺が素材の受け渡しを終わらせ、食堂を設置すると、キュキュクラブとリコ、カイが食事をしつつ不穏な話をしている。
「大食堂が必要だと思いますの。ハルトの料理スキルは今の食堂では発揮しきれないと思いますわ。きゅうはどう思いますか?」
「お風呂に出来る位の鍋、6つは同時に作れるよ。」
「きゅうが入るくらいのお風呂ですの?」
「ハルトが入れるくらいのお風呂。」
「特大鍋を10口から始めてみましょう。」
メイがさらっと言う。
「包丁スキルも高いから、ハルトはそのくらいの量を作れると思うよ。」
「オーブンも必要ですわね。大きいオーブンを2つは用意しましょう。」
オーブンは無くても炊き出しは出来るからな。
お菓子用だろ?
「最近騎士団にカレーを作ってたんだよ。だから今の食堂じゃ厨房が小さすぎるよ。」
「では、私が設計し、ハルト殿にチェックしてもらい、事を進めましょう。」
「お願いしますわ。」
「クッキー。クッキーたくさん。」
「きゅうは可愛いですわね。大きいオーブンが2つあれば、たくさんクッキーを作れますわ。」
きゅうがなでなでされる。
大食堂プロジェクトが進みだした。
あっという間に大食堂が完成し、俺は食事を作り、大工は働きに働いた。
「くそ、カレーが止まらねえ!」
「ハルトのおかげだぜ。皆カレーを食ってバリバリ働きやがる。」
「仕事でひと汗かいた後のカレーとサウナがたまらねえぜ!」
「こ、これが伝説のハルト料理!」
みんな輝いて仕事に燃えている。
俺も負けられないな!
全員分の民家が完成した頃、14時という混雑時の間を縫うような時間帯を狙い、リコとガード家当主が食事に来る。
「ハルトの料理スキルがパワーアップしていますわ。いけないお薬を使ったように皆働いておりますの。」
「ハルト殿!私はガード家当主、ロック・ガードだ。おかげで皆を家に住まわせることが出来ている。本当に感謝する。」
当主が敬礼した。
ジークと雰囲気が似ていかにも騎士という感じの人だな。
「いや、ゲンさんや皆の力が大きいぞ。チームの力だ。」
ガード家当主とリコは、セルフで食事を盛り付け、席に座る。
俺はちょうど手が空いていたので、二人にサービスする。
「ケーキだ、それと食後のコーヒーは飲むか?」
「いただこう。」
「いただきますわ。それとハルト、時間がありましたら座りましょう。」
こうしてガード家とリコは話を始める。
「ガード家の皆様は本当に優秀ですのね。ホワイト家の街の防衛と、ダンジョン合宿の護衛で大活躍ですわ。」
「いえ、こちらこそホワイト家の傘下に置いていただき感謝しております。もう一つお願いがあるのです。」
「何でしょう?」
「前ガード家に仕えていた者をこの地に呼び、ここで働かせて貰いたいのです。すべて呼べばガード家全体で1000名ほどとなります。半分でも構いません!どうか!少しでも多くこの地に住まわせ豊かな生活を送って欲しいのです!」
「話は分かりましたわ。わたくしとしてもそうしたい所ですが・・・」
リコは俺を見る。
「俺は大丈夫だぞ。しばらく料理を作り続ける。」
「ハルト殿、ありがとうございます!」
「まあ、ハルトが大丈夫ならきっと皆さんも引き受けてくれますわ。」
こうして更なる料理生活が始まった。
数日後、昼の混雑時が終わると、リコとウィッチ家の当主がやってきた。
ウィッチ家の当主は若くて美人だな。
薄紫の長めの髪と、同じ色の瞳、ぴっちりと肌に張り付くような魔女服はクモ糸で作られたものだろう。
体のラインは女性的できれいな曲線を描く。
謁見の間では顔や体を隠すような服装だったが、テイカーから身を守るためだろう。
テイカーに見つかったら夜の奉仕をさせられる気がする。
「ハルト君だよねえ。私はウィッチ家当主のアリス・ウィッチ、よろしくねえ。後助けてくれてありがとう。」
アリスが抱き着いてくる。
「ハルト、席に来て欲しいのです。ケーキがあれば2ホール出して欲しいのですわ。」
2人は食事をテーブルに置かず席についていた。
俺はストレージからケーキを取り出し、コーヒーの用意をする。
「飲み物はコーヒーで良いよな?」
「私はあったかいミルクが良いよお。」
飲み物を持って戻ると、2人はケーキを黙々と食べていた。
リコがケーキを口に含みつつ、隣の席をポンポンと叩く。
「俺もカレーを持ってくるぞ。」
これ長くなる奴だ。俺は一瞬で判断した。
リコがこくりと頷き、ケーキに目を戻す。
「ウィッチ家のポーション作成能力には助かってますわ。将来的に大きな利益を生むと思いますわ。」
「私たちも、ウィッチ家を傘下にしてもらって助かってるよお。所でお願いがあるんだよお。」
これガード家と同じパターンだな。
「他のみんなをブラック家から呼び寄せたいんだよお。全員合わせて1000人位になるよお。」
ブラック家、どれだけ嫌われてるんだ?
人が居なくなるぞ。
「わたくしとしては受け入れたい所です。ただ、キュキュクラブの魔物の素材の利益と、投資利益、すべてを使い家を建てることになります。それとハルトは料理、他の皆さんにも木材加工やメイド、きゅうの回復魔法を使いサポートを続けて頂く形になりますわ。キュキュクラブの負担は大きいかと。」
確かに短い期間で見れば家作りでホワイト家の収支はマイナスになるだろう。
だが、長い目で見れば両家の力をつけることはホワイト家にとってプラスに働く。
更にテイカーは両家を追放する時、王の評価を下げ、うまくいかなかったらどうなるか分かってるよね的な事をきっちり言われている。
ここでホワイト領がみんなをうまく受け入れして軌道に乗せれば、ホワイト家の評価は上がり、ブラック家の評価が下がる。
皆に頼られ、ホワイト家が強くなりテイカーが困るか、面白くなってきたな。
「やるぞ、ただし、特大鍋をすぐ作ってくれ、押し寄せてくる移民者の為にストックを作っておきたい!他のメンバーにはリコの方で確認を取ってくれ。俺はすぐに料理を作る。」
アリスが抱き着いてくる
「ありがとお。助かるよお。」
柔らかい感触が体に伝わる。
俺は全力で料理を作る。
ゲンさんたちも俺と闘うように家を作る。
大工と俺、意地の張り合いだ。
食べきれるものなら食べつくしてみろ!
そして料理の回復ブーストを受けた大工はさらに働く。
「す、すさまじい意地の張り合いですわ!まるで竜巻のようですの。」
こうして俺の料理スキルは上昇した。
みんなの大工や木材加工のスキルも上がったらしい。
◇
貴族の屋敷はまだ手を付けていないが、皆の住む家はすべて完成した。
こうしてホワイト家は異常なまでの速さで傘下貴族の受け入れを終えた。
ホワイト領とキュキュクラブは投資以外の資産を使いつくすが、領の収入はさらに増えた。
ガード家の力によりダンジョン合宿チームは大幅に強化される。
ウィッチ家の力で、ポーションの生産能力が上がり、採取需要が拡大。
ガード家とウィッチ家はホワイト領が使い切った資産を取り戻すように働く。
キュキュクラブとリコは食堂でささやかな食事会を開く。
と言っても半分はお菓子だ。
「これで住居問題は解決しましたわ。」
「きゅうもがんばった。」
「きゅうも頑張りましたわね。」
きゅうはいつものようにみんなに撫でられる。
「無職者の問題は時間が解決する。後は食料が足りないみたいだな。キュキュクラブでダンジョンの上に行きたい。正直最近料理ばかりだったからレベル上げをしたいぞ。」
「私もダンジョンに行きたい。」
「私はハルトについていきます。」
「そろそろブラック家とホワイト家の納品対決が始まりますわ。」
納品対決、前に魔物の素材の納品もポーション納品も金に物を言わせたブラック家に負けている。
だが今回はキュキュクラブが参加し、ホワイト領の力も増している。
次はテイカーを全力で倒してやる。
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