レイドボス討伐
キュキュクラブがダンジョンから戻ると、すぐに騎士が寄ってくる。
「ハルト殿!急いでみんなで来てくれ!」
俺達は王に呼ばれた。
「ハルトか、今すぐ騎士団の支援に向かって欲しい。レイドボスが発生した。」
「レイドボスだと!」
レイドボス、ボスの上位に位置する存在で、レベルとは別の軸で進化した魔物だ。
通常の魔物と比べ、生命力が高く、100倍しぶとくなる。
更に、必ず固有スキルを所持する厄介な存在だ。
「もう倒したのか?」
「いや、失敗したのだ。追い返すだけで精いっぱいだった。今は騎士達を皆で癒して欲しい。」
こうしてすぐに騎士の元へと向かう。
予想以上だ。
血の匂いがする。
倒れている者が多く、残った者が懸命に治療を行う。
大隊長に声をかける。
「回復支援に来た。」
「ハルト殿か!助かる!重傷者をきゅうに見せたいのだ。」
「きゅう、メイも頼むぞ。」
「やるよ。」
「今の、きゅうが話したのか!」
「今はどうでもいいだろ!それよりも俺は料理を作る。」
俺はストレージから食堂を取り出す。
こうして3日間、俺は料理を作り続けた。
大隊長4人が揃ってお礼を言いに来た。
「ハルト殿、おかげで助かった。これでけが人は回復した。」
「良かった。それで、何があったんだ?」
「ポイズンスネークのレイドボスが王都に迫っていた。戦闘になったが、取り巻きのポイズンスネークが多く、撤退させることしかできなかった。今回の戦闘で騎士の3割を失った。」
いつも王都を守るため魔物狩りをしている精鋭が3割減ったのだ。
今後の魔物狩りに影響が出るな。
「分かった。」
「ハルト殿、相談なのだが、次の戦闘に参加して欲しいのだ。ハルト殿のきゅうが言葉を話す。これはハルト殿がレベル40を超えているという事ではないかね?」
「そうだな、ただ俺は非戦闘職の料理人だぞ。」
「ハルト強いよ。特級職だよ。」
きゅうが得意げに話す。
「それならますます参加して欲しい!非戦闘職でも上級を超えている者は戦闘能力も高い。数年前の暗黒時代から、我ら騎士団の力は戻っていない。数も質も足りないのだ。」
「やってみるけど、レイドボスはどこに居るんだ?」
「後1時間ほどで王都にたどり着く予定だ。今回は、冒険者、兵士も協力して討伐する。」
急すぎる!
防壁の外でキュキュクラブは待つ。
他にも、騎士・冒険者・兵士の1万名が集結した。
きゅうは俺の肩に乗り、じっと佇む。
「今回エステルとメイは、取り巻きが居たら取り巻きの討伐な。」
「分かったよ。」
「毒攻撃をするポイズンスネークですか、エステルと相性が良さそうですね。」
「きゅうも魔法で戦う。」
「いや、追い詰められるまで魔力を温存してくれ。最後にたくさん回復してもらうかもしれない。」
「分かった。たくさん回復する。」
「感知に反応!来たぞ!」
地鳴りがする。
大きな蛇のシルエット。
「きしゃあああああああああ!」
レイドボスが取り巻きのポイズンスネークを従えて姿を現す。
騎士大隊長が指揮を執る。
「弓!魔法攻撃!構え!・・・撃て!」
防壁の上から弓と魔法が放たれる。
「撃て!撃ち尽くせ!」
すぐに魔法が撃ち尽くされる。レイドボスは、傷つきながらも防壁の外にいる人間に毒霧を吐き出す。
広範囲に噴射された毒霧が皆を蝕む。まるで大魔法だ。
「散開しろ!取り囲め!」
レイドボスの尻尾の一振りで多くの者を吹き飛ばす。
俺は、雑魚を無視してレイドボスの横に回る。
地面に接している腹の部分を走りながら連続で斬り刻む。
エステルとメイは雑魚を確実に仕留めていく。
レイドボスが俺に目を向け攻撃を仕掛ける。
「ハルト殿にターゲットが向いた!今の内に突撃しろ!」
俺が走り回り、斬り刻む。その隙にみんなが一気に畳みかける。
だが、レイドボスの怖さは追い詰められてから始まる。
レイドボスの体から黒いオーラが発生する。
「狂化だ!攻撃パターンが変わるぞ!」
狂化、レイドボスは生命力が半分になると、新たなスキルが現れる。
しかも厄介なことに狂化してからでないと新しいスキルは鑑定に表示されないのだ。
「新しい能力はエリアポイズンだ!一回だけ自身を中心に毒の範囲攻撃をしてくるぞ!」
「逃げるぞ!疾風迅雷!」
俺は急いでレイドボスから離れ、途中でエステルとメイも抱える。
「きしゃああああ!」
自身の範囲内に黒紫の結界が出現し、中にいる者を毒状態にする。
皆とポイズンスネークの取り巻きの動きが鈍くなる。
俺はエステルとメイをその場に残し、一気にレイドボスに迫る。
「みじん切り!」
レイドボスの後ろから迫り、人で例えれば、首筋部分にあたる処ヘ、連撃を叩きこむ。
更にもう一発!
「みじん切り!」
レイドボスは地面をのたうち回るが、躱しつつ斬り続けた。
レイドボスはドスンと地面に倒れ動かなくなる。
最後に顔面を何度も突き刺し、完全に息の根を止める。
「倒したぞ!!」
「「わあああああああ!」」
「今すぐに治療を開始しろ!」
大隊長がせわしなく指示を飛ばす。
「回復するよ。」
「ああ、頼むぞ。」
きゅうが大隊長の元に駆け寄る。
「エステルとメイもお疲れ様。」
「無事終わったよ。ハルトのおかげだよ。」
「ハルト、大活躍でしたよ。」
「うーん、普通だと思うけどな。」
「「え?」」
「大活躍ですよ。狂化後に一気に畳みかけて圧勝してましたよ。」
「そうだよ!ハルトの力で勝ったんだよ!」
こうして無事レイドボスを討伐したが、料理中何度もみんなに声をかけられた。
後、テイカーの暗殺は今のところ心配ないようだ。
「ハルト殿!お疲れさまでした!」
「ハルト君!ありがとね!」
「英雄の料理か、食べてみたかったんだ。」
「ハルト殿!レイドボスを倒して、しかも料理で皆を回復させて最高です。後カレーのおかわり下さい。」
そんな中、騎士から声がかかる。
「ハルト殿!王がお呼びです。」
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