騎士団のカレー中毒
今回は伏線の答え合わせ回です。
題名の「カレー中毒」については、食中毒に見えますね。キュキュクラブはスライム狩りが終わった後、ダンジョン20階へと来ている。
どのダンジョンでもそうだが、20階に到達することで、次からダンジョンの入り口と20階をワープ移動出来るようになる。
そうすることでダンジョン内の無駄な移動が減り、レベル上げが楽になるのだ。
と言っても、元々騎士団や兵士、冒険者が王都のダンジョンで魔物狩りをしていたため、キュキュクラブは簡単に20階まで到達した。
今は食堂1階でお菓子タイム中だ。
丸テーブルに固まるように皆が集まる。
俺の隣にエステルとメイが座り、きゅうは常に誰かに抱かれるか撫でられるか何かを食べている。
「今までの振り返りと今後の方針を決めたい。」
俺の言葉にメイが書記を立候補する。
「私が書記をやります!」
そう言って俺の膝に座る。
「あ!ずるい!」
「ずるくないです。ここが一番安心して書記が出来るんです。」
エステルが俺に抱き着くようにさらに近くに来る。
「まず、テイカーとブラック領だけど、再度、挑戦されたら、次もぼこぼこにするのと、ブラック領にいる人間は助けない。あっちを助ける位だったら、ホワイト領を助けたいぞ。」
テイカーよりブラック6強の方が強かったな。ステータスもエステルやメイとあんまり変わらないように見えたし、何よりスキルの特訓をサボりすぎだ。
剣の使い方がぎこちなさすぎる。
雑魚が!俺にやられてざまあみろ!
「私も同じ考えです。」
「私もホワイト領を助けたいよ。」
「次はホワイト領だけど、リコに余裕が無いような気がするな。」
ホワイト領に暮らす人はのんびり生活してる。
だが、力や権力を持つ者はそうではないのだ。
「宗教の影響が大きいのですが、スキルや職業は神が与えたギフトで、その力を開花させた者は、力無き者を助ける義務があるっていう考えですよね。」
王族や貴族、ゲンさんも力を持つ者に入る。
最近キュキュクラブもそのカテゴリーに入れられているのだ。
ゲンさんは、長時間仕事をしているけど、楽しそうだから問題無い。だが、リコのように、追い詰められるまで仕事漬けになるのは良くない。
「王様とリコみたいに、ちゃんとしてる人は、余裕無さそうだよね。」
テイカーは私利私欲の為に力を使うが、王やリコは他者を助ける為に疲弊している。
俺はそれが嫌だ。
キュキュクラブに、仕事をどんどんお願いしていたのも、余裕の無さの裏返しだ。
俺達が動かないと、人が死んだり、家の無いまま生活する人が増える。
俺に頼るしか無いほど、追い詰められていたのだ。
俺達が嫌がっても、にこにこしながら無理に仕事をさせる。
そしてリコは、少しだけ悲しそうな顔をする。
「リコ、動きはお嬢様っぽくて、落ち着いているように見えるけど、お勉強と仕事と人助けで、ほとんど一日が終わってるよね。」
「ホワイト領の難民は助けるけど、それが終わったら、リコをストレスから解放をしたい。」
「私も同じだよ。」
「良いと思います。」
「王都や王についてだけど、正直そっちまで手が回らない。ホワイト領が落ち着くまで放置にしたい。それに、ホワイト領が助かれば、間接的に王が助かる。王もため息が多くて疲れてはいるとは思うが放置だ。」
メイとエステルは頷く。
「王は、多分今すぐテイカーを殺したいんだろう。でも下手に対決をすると力の無い者を殺すことになる。テイカーからじわじわ金をむしり取って、対決を避けながら弱らせる。そしてその金を難民救済や冒険者の教育に当てているのを見ると、悪い人ではないように見える。後、テイカーからむしり取った金をホワイト領に流している所を見ても、行動はまともだ。」
「そうですね。それに自身が矢面に立って嫌われ役を続けつつ、テイカーからお金を取っている所を見ると、ある意味では正々堂々としています。」
それは思っていた。
人が嫌がることを王自ら決断し、トカゲの尻尾切りはしていない。
「きっとブラック領は長い目で見て苦労するように、ホワイト領は長い目で見ると大きくしようとしてるんだよ。」
「だよな。長い目で見てミラー対応。テイカーのような人間は長い目で見てきつくなる対応をして、リコには長い目で見て領地を発展させるように動いている。ま、長くなるから次の話に進むぞ。」
他にも色々思い当たる節はある。
納品対決の際、テイカーには負けたら星のはく奪をほのめかすが、ホワイト領は小さな領であることを強調して、負けても罰や苦言を一切言わなかった。
親善試合の際も、ホワイト領が負けた際の罰は一切無かった。
つまり、ホワイト領は負けても一切ダメージが無いように守られていた。
さらに、王都の方が財政が厳しい中、テイカーからむしり取った金をホワイト領に2度も流した。
実際には俺に渡そうとしていたが、ホワイト領に流れることを計算されていた。
俺はコーヒーを啜った。
「学園だけど、正直通ってないし、行っても行かなくても良いよな。」
「ですね、最初は学園を卒業すれば就職に有利かと思ってましたが、もう学科の勉強も終わりましたし、冒険者として生活出来ます。学科が終わっていないエステル以外通う意味はありませんね。」
「ただ、辞めようとしてもリコがしつこく引き留めてくる気がするし、現状維持で良いんじゃないか?本当に辞めなきゃいけない事が出来たら事情を話して辞めるか留年だな。」
リコは、キュキュクラブを繋ぎ止めておく為に、学費を無料にして、俺達を学園生にしている。
辞めるなら、出来ればリコのストレスが減ってからにしたい。
「次はキュキュクラブについてだけど、冒険者ランクはEランク固定にしたい。」
「それなんですけど、ランクを上げなくても明らかにランク以上の事を頼まれたりしてますよ。」
「無理にランクを上げようとするとハルトが怒るから、ランクの話はしないで高ランクの依頼を出してくるんだよ。」
「そうだな。だがランクは下のままキープだ。一回上げると、次はCにされる。そうやってどんどん上げられて、『Cランク以上は強制招集だ!』って言ってくるに決まってるんだ!」
「ハルト落ち着いて。」
エステルが俺の頭を撫でてくる。
「後、俺はレベルと職業を特級にランクアップしたい。今まで料理や手伝いが多くて特に感知スキルのレベルアップが遅れているんだ。エステルとメイは目標とかあるか?」
「私もレベルと職業のランクアップをしたいです。」
「私もみんなと同じかな。上級職になりたいよ。」
「メイ書記、まとめた物を出してくれるかね。」
「こちらになりまする。」
俺とメイのやり取りにエステルが笑う。
今後の方針
・テイカーとブラック領は放置し、挑んできたら、ぼこぼこにする。
・ホワイト領は難民を救う。終わったらリコをストレスから解放する。
・学園生として現状維持
・キュキュクラブはレベルアップと職業のランクアップ
「こうやって見ると、皆のレベルアップをすれば大体の事は解決しそうだな。対テイカーはこっちがレベルを上げておけば楽になるし、ダンジョンの上の魔物は大きいから金になる。その素材をリコが居るホワイト領に流せば、リコが楽になる。皆はどう思う?」
「たくさん強くなろうよ。」
「私もハルトの考えが良いと思います。」
コンコンコンコンコン
「このノックは騎士、カレー中毒だな。」
「メイが扉を開ける。」
「ハルト殿!ホワイト騎士団!カレーとクッキーを受け取りに来ました!」
声が大きい。
こうして、俺がカレーとクッキーを出してメイが受け渡し処理をする。
騎士達は、ストレージに収納した後、カレーを食べて帰って行った。
そう、20階はダンジョンの入り口からワープして騎士達がやってくるのだ。
「騎士団って俺達の居場所を把握してるよな。」
「4騎士団で協力して斥候を使って特定してるんだって。またカレーを貰いに来るんじゃない?」
なんだと!おかしいと思っていたんだ。
ブラック騎士団が来た数日後にホワイト騎士団が来た!
4騎士団でローテーションを組んでいるに違いない!
次は他の騎士団が数日後に来る。
今は特級にランクアップしたい。
特級にランクアップするには職業スキルすべてをレベル7以上にする必要がある。
料理も包丁もすでにレベル8だ。
今は他のレベルアップに集中したい。
「うむ、上を目指そう。騎士団が来れないほど上に行くぞ。」
ハルトはまだ気づいていない。ホワイト家にテイカーの魔の手が迫っていることに。
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