カレー無双
会食が終わると、リコに呼び止められる。
「あの断り方は失礼でしたわね。」
「失礼だったとは思うが、王の器が大きくてつい普通に話してしまった。」
「王の期待に応えて貴族になって頂ければ嬉しいのですわ。」
「いや、俺は自由に動けているから、うまく行っているだけで、リコや皆の力が無かったら、何もうまく行かなかったと思うぞ。」
「そんなことはありません。それに、前から期待されておりましたよ?ブラック領から1000億をハルトに払い、その使い道を王が知りたがっていた、あの時には、目を付けられていましたの。」
確かに、本来なら俺ではなくホワイト領に1000億を渡す。しかし、俺に渡してきたのは違和感があった。
考えても仕方がない。今日は休もう。
次の日
俺はホワイト騎士団を紹介される。
「お待ちしておりました!早速買い出しに向かいます!」
早いな。
「みんなどのくらい食べるか分からないから加減が難しいな。」
「多めに買っても問題ありません!私はカレーが大好きです!」
「そ、そうか、カレーもたまにメニューに入れる。」
「ありがとうございます!」
元気な騎士に案内され、大量の食材を買い込んだ。
「食堂が届かないとダンジョンに行けないから、宿舎の厨房を使って料理を作ってみたいんだ。」
「カレーですか!?」
「わ、分かった。カレーを作ろう。」
騎士がガッツポーズを取る。
まず100人前か。
俺は150人前のカレーを作った。
「多めに作ったぞ!」
「ありがとうございます!」
カレーが出来るのを待ち構えていた騎士達。
数人の騎士が流れるような動きで配膳をし、カレーが配られていく。
そしてあっという間にカレーが無くなった。
「こ、これがレベル7の料理か!」
「毎日このカレーを食べたい!」
「俺隊長を呼んでくる!」
すぐに隊長がやってきた。
30代ほどのガタイの良い男だ。
「君がハルト君か、素晴らしい腕前を持っているようだね。所で、私の分のカレーは無いのかね?
」
「すまない、全部配り終えてしまった。」
騎士全員が視線を逸らす。
「私はね、カレーが好きなのだよ!」
「今から作れば出来るが、時間がかかる。」
「どのくらい作れるかね?」
「今からカレーを作ればいいのか?もしかして供給できる限界を知りたいのか?」
「うん、そうそれだ!その通りだよ。今から君の限界を知りたい。」
隊長はまるで思いついたかのように理由を説明する。
こうして俺は、その日カレーを作り続けた。
当然夜もカレーとなる。
隊長はカレーを6皿完食していた。
リコに呼ばれ、ゲンさんの元に向かうと、食堂用の家が完成していた。
「おう!出来たぜ!」
ゲンさんの目にはくまが出来ており、明らかに疲れの色が見えた。
俺はゲンさんに深く礼をする。。
「さすがレベル7の大工!早いし良い仕事してるな。」
「ハルトもレベル7の料理人ですわ。」
ニコッと笑う。
次の日、ダンジョンへと向かう100人の騎士についていき、料理番をする。
ダンジョン食堂は好評だった。
ただ、何を食べたいか聞くと、大体「カレー。」という答えが多く返ってくる。
まるで子供みたいに何回聞いても「カレー。」という答えが返ってくる。
一日の内1回はカレーを作る事になった。
食事スキルの効果で、魔物狩りの効率は飛躍的に上がった。
俺達がダンジョンから帰還すると、隊長が囲まれていた。
何やら責められている。
「ずるいのではないか!?」
「料理レベル7のカレーを食べ続け、自身はその恩恵で好成績を収める。俺達は同じ仲間ではなかったのか!」
「ハルト殿のカレーは好評のようだな!私もカレーが食べたい!!」
「料理スキルの恩恵は皆で分け合うべきではないか!?カレーが食べたい!」
「みな落ち着け。私はハルトの限界を見定めていたのだ。どの程度料理を供給出来るか。無理をさせて使いつぶす結果に陥らないか、私は心配しているのだ。だが安心して欲しい。私が全身全霊を持って見定め、ハルトを守ろう。ハルトは王の命を受け招かれた大切な御仁、私が大切にする.みなは安心して任務に戻るが良い。」
「妙に言葉数が多くなったな!ハルト殿を囲い込みたいだけではないのか!」
「知っているぞ!ストレージスキルに鍋ごとカレーをストックさせてため込んでいるようではないか!」
「何だと!なら貴様の隊にはカレーのストックがある!私がハルト殿を預からせてもらう!私が毎日カレーを食べる!」
俺が割り込む。
「カレーが食べたいのか?」
「「カレーが食べたい!」」
こうして、俺と5人の隊長はカレーを食べながら、カレー会議を開くこととなった。
内容は、どうしたらカレーの供給量を増やせるかに絞られる。
買い出し・皿洗い・配膳・鍋の後片付けはすべて騎士が行い、俺はずっとカレーを作る方針が決まる。
ホワイト騎士団は100人の隊が5つあり、俺はダンジョンで毎日料理を作り、騎士たちは良く動き良く食べた。
こうしてホワイト騎士団はかつてないほどの魔物を討伐し、最高の利益を叩き出す。
だが、
「ホワイト騎士団だけずるいのではないか!」
「好成績を叩き出し、あまつさえ毎日うまいカレーを食す!我ら騎士団同士の連携を乱す行為であろう!」
「他の騎士団にもカレーを供給すべきであるな!」
「ホワイト騎士団では、大量に鍋を買い占め、ストレージにカレーを溜め込んでいるようだな!まずそれを供給してもらおうか!」
こうして全4騎士団にカレーを供給することとなる。
俺は、絶対に勝てない戦いに追い込まれた。
負けは決まっている。
作った先からカレーが消え、俺は全力でカレーを作り続ける。
「早く出せよ。」とばかりに大量のカレーの食材が運び込まれ、俺は絶望に立たされる。
カレーの回復ブーストで元気になった騎士たちはどんどん働き、おなかを空かせて帰ってくる。
「やってやる!」
そして俺は毎日毎日料理を続ける。
もっと早く!
もっと効率良く!
美味しいと思ってもらえる食事を届ける!
俺のスキルレベルは上昇した。
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