テイカーの失敗続き⑥
テイカーは贅沢な暮らしを続けた。
ふ、女も集めた。
学園では最強。
食い物や酒も最高の物を味わえる。
後はハルト、奴だけだ。
卑怯な手を使い、俺の腕を切り落とした。
どんな手を使ったのかはわからんが平民らしい姑息な奴だ!
くそ、今思い出しても腹が立つ!
そうだ!思い知らせてやればいい!
王の目の前で、あいつがみじめに負け、俺が勝利する!
くっくっく!面白くなってきた。
だが待てよ、また何か卑怯な手を使ってくるかもしれん。
俺様は最強だが、レベルを上げることでさらに最強となる。
そうすれば姑息な手段は通用しない。
そうだ!罪人を処刑して経験値をアップしよう。
くっくっく!さっそく実行するか!
「おい!罪人の処刑を行う!今すぐ用意しろ!」
「誰の処刑でしょうか?」
「全員だ!そんなことも分からんのか!?今すぐ俺自らが処刑を実施する!俺のレベルアップに貢献出来て奴らも本望だろう!」
「しかし、無罪の可能性のある者も居ります!レベルアップでしたらダンジョンで行うのがよろしいかと!どうかお考え直しを!」
「うるさい!今すぐ準備しろ!」
「か、かしこまりました。」
こうして、執事は、1000人以上いる罪人の中から明らかに重罪を犯した者の処刑準備を進めた。
「おい!俺は全員と言ったはずだ!」
そこには約200名の罪人が集められていた。
「申し訳ございません。明らかに重罪を犯したものだけを集めたのでございます。他の者はどうかお考え直しをお願いいたします!」
テイカーは執事を蹴り飛ばす。
「ち、おい!そこのお前!無能の執事に変わってお前が用意しろ!こいつと同じようにへまをしたら家族もろとも罪人として処刑してやる。」
こうしてテイカーは罪人すべての処刑を行いレベルを上げた。
くっくっく、レベルが上がった。
そうだ!経験値アップの実を買い占めよう!
経験値アップの実、食べることでわずかに経験値をアップさせるが、非常に高価だが、得られる経験値は少ない。
「おい!そこのお前!執事を呼べ!」
「それが執事は体調を崩し、寝こんでおります!」
「ち、無能のおいぼれが、これだから無能は!。しょうがない。お前で良い。経験値アップの実を買い占めてこい!」
「買い占めるとなると、100億?いや、1000億以上かかるかもしれません!下手をすればこの領が破綻してしまいます!」
「ふむ。1000億だ!その金額までならすべて買い占めろ!」
「わ、分かりました!直ちに任務を遂行します!」
口答えをすればどうなるか分かっている。
取り巻きは忠実に任務を実行した。
くっくっく。
経験値の実でレベルアップ出来た。
当主である俺への自己投資こそが重要なのだ!
どうやら経験値の実は数倍の値に高騰したようだな。
ここらで打ち止めか。
そうだ!強い部下に魔物を弱らせ、俺が倒せば簡単にレベルアップ出来る!
すぐに準備させよう。
「今からダンジョンに向かう!それとこの領で最も強い兵を20人集めろ!俺のレベルアップの手伝いをさせてやる!」
「どうか!考え直してください!精鋭を失う事で多くの兵が命を失います!魔物狩りも遅れ、領民の被害も大きくなります!どうか!」
「それがどうした!俺が領民を処刑してやってもいいんだぞ!そうはせずに魔物を殺してやると言っているんだ!良いから連れてこい!」
「・・・・・かしこまりました。」
まったく、これだから無能の老いぼれはこまる。
そうだ!宝剣を使おう!宝剣を使う事で楽に魔物を狩れる!
さらにレベルアップが早くなるぞ!
「おい!そこのお前!宝剣を持ってこい!」
「どの宝剣ですか?」
「3本全部だ!」
「は!すぐに任務を遂行します!」
まったく、あの老いぼれよりあの兵士の方がまだ使える。
あの老いぼれは必要ないな!
こうしてテイカーはダンジョンへと向かった。
テイカーは専用の家と紅茶を用意され、家でくつろぐ。
「テイカー様!ボススライムを弱らせ!今こちらに誘導しております!」
「・・・スライムか、今回は気分が乗らん。他の魔物にしろ!」
「は!かしこまりました!」
「テイカー様!今度はアサルトボアのボスクラスを誘導しております!あと10分後に到着いたします。」
「分かった。」
精鋭によって誘導されたボスがテイカーの前に姿を現す。
宝剣が光を放つ。
「スラッシュ!」
スラッシュの斬撃が飛び、魔物に直撃するが、倒れる様子が無い。
「ち!スラッシュ!スラッシュ!スラッシュ!」
3発のスラッシュでようやく魔物が倒れる。
「おい!俺はぎりぎりまで弱らせろと言った!それといつまで待たせるつもりだ!」
「申し訳ありません!しかし、ギリギリまで弱らせ、ボスクラスのみをすぐに連れてくるとなると、鑑定スキル持ちと感知スキル持ちを含めた1000名以上の部隊が必要となります!」
「連れてこい!」
「申し訳ありません!そうしますと、数日のお時間を頂くこととなります!それと魔物の討伐に支障が出るため、多くの領民が犠牲になります!」
「ち!これだから無能は!優先順位も分からんのか!俺のレベル上げが一番大事だ!領民の犠牲は二の次だ!すぐに部隊を集めろ!」
「すぐに任務を遂行します!」
こうして、テイカーのレベルは順調に上がったが、多くの兵士がブラック領から居なくなった。
しかも魔物の被害により、生活困窮者が増加した。
更に、100億を超える価値を持つ宝剣を2本使いつぶした。
「テイカー様!孤児と生活困窮者が急増しております!どうか魔物狩りを実施し、民に施しをお与えください!」
執事はテイカーに全力で頼み込む。
孤児と困窮者か、俺の領地の経営の足を引っ張る無能どもか・・・・・。
だが、露骨に殺すことは出来ん。
王にばれたら厄介だ。
そうだ!ホワイト領に押し付けよう!
ホワイト領は大量の難民を受け入れていると聞く。
だが、ただ押し付けるのはまずい。
そうだ!領民自らがホワイト領に行きたいと申し出れば良いのだ!
行きたいと喚く領民に俺様が馬車の手配をする。
これで領の利益は上がり、経営は上向く。
更に帰りの馬車にはホワイト学園の精鋭を引き込み、ブラック学園へと入学させる。
これで無能を追い出し、少しはまともな人間を増やせる。
一石二鳥だな。
こうして、ホワイト領に難民を送り込み、ホワイト学園から精鋭を引き抜く任務が遂行された。
執事は最後まで抵抗し、気絶するまでテイカーに殴られ気を失う。
取り巻きによって任務は遂行されるが、結局最後は執事を頼り、執事がホワイト領との交渉を務めることとなった。
テイカーは自身の領民を切り捨て続けた。
これは、自らの領の手足を切り落とす行為であったが、テイカーはそのことに気づいていない。
そしてホワイト領は更なる難民を押し付けられ窮地に立たされる。
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