ギルドパーティー
ゲス討伐から1日
エステルが帰還したのは夜になってからの事だった。
家に帰ると、上から二人の寝息が聞こえる。
エステルは耳が良いのだ。
おかしい。ハルトの部屋からメイの寝息が聞こえる。
「開けて!開けてえ!」
ハルトの部屋を何度もノックする。
するとハルトが出てくるが、メイがハルトに抱き着いている。
しかも下着以外何もつけていない!
「な、何やってるのよ!」
「私盗賊に殺されかけて、怖くて。」
エステルはメイの顔をじっと見る。
「嘘だよ。ハルトに抱き着きたいだけだよ!ハルトと一緒に寝たいだけだよ!」
「ハルトは私が一緒に寝ても大丈夫ですよね?」
「そうだな。」
「わ、私もシャワー浴びたら一緒に寝る!」
この日からキュキュクラブは固まって寝るようになった。
ゲスの討伐から、
俺は料理を作り続け、きゅうはみんなを魔法で癒し、メイはケガ人の看病に追われた。
落ち着くまでの3日間皆を助け続けた。
盗賊は無事殲滅された。
盗賊が増えた理由は、ホワイト領が豊かになったことや難民も原因として挙げられる。
が、ホワイト領の甘すぎる対応にも原因があった。
リコは領主代理として盗賊と会った場合の対応を『生死不問』とし、皆に指示を出した。
さらにハルトの『疾風の料理人』のうわさは盗賊にも広がり、盗賊を恐怖させた。
王都に首を一太刀で切断された大量の盗賊の遺体が運ばれ、『疾風の料理人』の名は王都を通して全領地に広まる。
盗賊の激減により、兵士の巡回は減り、その分ホワイト領の魔物狩りが進められたことで領地の街道は安全となり、多くの商人が行き来し、経済はさらに活性化することになる。
他の理由もありホワイト領の経済はさらに潤いを見せ始めた。
ハルトが盗賊から回収した財宝をすべてホワイト領の投資にあてたのだ。
更に王都に運ばれた盗賊の遺体から多くの賞金首の懸賞金が届き、届いた分はすぐにホワイト領の投資に使うようリコとハルトで話し合いは済ませていた。
3日間ギルド職員は寝る間も惜しんで働いた。
落ち着きを見せたことで、ギルドでパーティーが開かれる。
もちろん死者も多く出たが、楽しむときは楽しむという切り替えの良さがホワイト領の領民の良い所であった。
俺はパーティーのコック役を務める。
かつてハルトから料理を教わった料理人達が、「手伝わせてください!」と10人以上が協力を申し出た。
大量の食事と酒、お菓子を用意した。
リコはケーキと甘いお酒にしか手を付けず、味わって食べる。
エステルは討伐で少し痩せた為か、大量に食べていた。
メイは世話好きな為、みんなに料理を配り、皿洗いと掃除をし、合間を見ては食べ物をつまむ。
きゅうは、丸テーブルの上に佇み、周りに甘いものが置かれる。
撫でられ係らしい。
料理を作り終わると、「後はすべて僕らがやります。少しでも恩を返したいんです!」
と、料理人全員が礼をした。
「ありがとう。よろしくな。」
俺は皆にお疲れ様を言って回る。
美人受付嬢は俺に抱き着いてくる。
「ハルト君!お疲れ様~。」
完全に酔っぱらってるな。
俺は受付嬢をおんぶしたまま移動する。
「メイ、お疲れ様。休まないのか?」
メイは無言で美人受付嬢を引っぺがし、メイがおんぶされる。
「ここが落ち着きます。」
「そ、そうか。」
エステルとリコは、食べてるな、後にしよう。
皆にお疲れ様を言って回る。
「おう!助かったぜ!」
「ハルト君、ずっとホワイト領に居てね。」
「ハルトも休めよ。」
逆に励まされた。
エステルの所に行くと、座るように促してくる。
エステルは俺の前に座る。
「あ、交代してください!私の方が背が小さいので前が丁度いいんです!」
「私もっと食べたいからここで良いよ。」
「ここで良いよじゃないです!」
楽しそうに見えたのか、きゅうが俺に飛び込んでくる。
エステルとメイを隣に座らせ、最後にリコに言葉をかける。
「お疲れ様。」
リコはケーキをごくりと飲み込み、ワインを口に入れる。
「こちらこそ、助かりましたわ。」
「お疲れさまと言ってもリコはまだ難民の問題があるよな。」
「ええ、住居の確保、食料の調達、領民の登録処理、スキル教育者やダンジョン合宿員の確保、問題は残っていますが、解決は時間の問題ですわ。」
「俺に出来ることはあるか?」
「それが、わたくしとハルト、ゲンさんが王都に呼ばれているのですわ。」
「断ることは出来るか?」
「行きたくないという理由は通用しませんわ。」
「分かった。」
「正直わたくしも気が乗りませんわ。恐らく王都の魔物が多く、高レベルのスキル持ちに手伝って欲しいのですわ。もう少しすれば難民問題も解決しますのに。」
今国全体に余裕が無いのだ。
5年前の魔物の大量発生の爪痕を残したまま、今魔物の動きが活性化している。
「ホワイト領より王都の方が酷いのか?」
「おじい様、ホワイト領当主の手紙では、王家の管理する領地の魔物狩りに追われているようですわ。恐らくホワイト領はかなり良い方なのでしょう。」
王家管理の領地は広い。
ホワイト領のように小さくない分管理しにくいのだろう。
「難民問題を抱えたホワイト領がかなりマシか。相当ひどいのかもな。いつ出発なんだ?」
「明日ですわ。」
「俺初耳なんだけど?」
「わたくしも先ほど連絡を受けましたわ。」
こうして、俺・リコ・ゲンさんは次の日、王都へと旅立つ。
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