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55話 短い距離と考察

 俺達は、自分たちの新たな能力を試しつつ、高レベルモンスターに慣れない自衛隊員を教育しながら、遅いペースとは言え着実に進んでいた。

 とは言え、無傷でとは行かず、何度となくケガをする者がいた。

 一番多いのが、低レベルモンスター数匹が現れた際、魔法やスキルを使わず武器のみで対処するのだが、『擬態』していたモンスターに奇襲を受けて負傷するというパターンだ。

 本来は、平行して他の者が低レベル魔法等で確認を実施するのだが、その連携が上手く取れていなかったという訳だ。

 無論、このケガは治癒魔法でアッサリ治っている。この作戦に従軍している者には、部位欠損レベルを回復可能な魔法を所持している者が多数いる為、死なない限りは何とか成る。

 ただし、防具の損傷は簡単には治せないので、その後の防御力が落ちるので、負傷はしないに越した事は無い。

 まあ、それ以前に、痛い思いなんて誰もしたくないので、ポカミスで負傷するのは愚以外の何物でも無いけどね。回復魔法のMPも無駄だし。

 そんな感じで、致命傷はないまま何とかレベル25が湧き出す帯域まで到達した際、俺達4人も未見のモンスターに出会った。

「おかしい! レーダーに映っているのにモンスターが居ない!」

 その声が聞こえた際、俺達はローテーションで、隊列の中央部に居た。

 最初その言葉を聞いた時、『擬態』モンスターがステルスしていないだけなんだろうと思った。

 どうも、『擬態』というスキルは、発動直後は完全な擬態が出来ない様で、体色は周囲に同化するが、気配はまだ残っている。

 その為、『気配察知』に薄らと残っており、それが時間経過と共に完全に消える。この辺りは、(うち)のダンジョンで活動中に検証済みだ。

 だが、その考えを否定するように、先程の者とは別の者が補足した。

「通路中央、空中に居るぞ! 擬態じゃ無い! 透明なモンスターか!?」

 その声と共に、同じ班に所属していた者が『ファイアー・ストーム』を放った。

 状況がハッキリしない事と、飛行系モンスターで有る事を考えて、高レベルの範囲攻撃魔法を使用したのだろう。

 そして、放たれた『ファイアー・ストーム』のボールが爆ぜて火災旋風が巻き起こると、その中央部から甲高い絶叫が響き渡った。

 その絶叫の主は、炎を纏った状態で火災旋風を抜け出してくると、攻撃した彼らの前方15メートル程に落下する。

 既にその姿は露わになっており、虫と人間を合成したような醜悪な姿で炎に巻かれて地面をのたうつ。

 その状態のモンスターに、『ストーン・アロー』が放たれるが、貫通までは行かず、まだ吹き荒れる火災旋風の中へと弾いただけに終わった。

 だが、結果としてそれが功を奏したのか、『ファイアー・ストーム』の火災旋風が収まった時には、そのモンスターはほとんど動いておらず、その後10秒と掛からず黒い(もや)となって消えた。

「光学迷彩だね。モンスターで使うヤツを見るのって初めてだ。何か、レベルも高そう。お兄ー、知ってる?」

「…俺の知るモンスターリストにアレは居ないな。多分、完全な初物だと思うよ」

 俺達兄妹の会話を聞いて、周囲の隊員達が「光学迷彩?」「スキルなのか?」等と言って騒いでいる。

 俺達はデボのスキルリストでその存在を以前から知っていたのだが、人間用のリストには表示されないモノなので、他の者は知らない訳だ。

 今回ダンジョンに入ってからも、このスキルは意味が無かった為、使用していなかった。それも有って彼らは全く知らなかった。

 後々の事も考えて、この場で『光学迷彩』とその上位の『空』についても説明しておく。

 その上で、ドレイン系スキルによってMPやHPに余裕が有るデボに、彼らの前で実践させる。

「……光学迷彩は、目を凝らせば違和感は分かるな。それに、擬態と違って気配察知で検出可能ってのは助かる」

「目視に関しては、よく見れば分かるが、実践レベルでこの薄暗い中じゃ実質無理だぞ。盲撃ちで魔法を叩き込むしか無かろう」

「光学迷彩はそれで良いとして、問題は空だな。気配察知はもちろん、臭いや音すらも感じられないのだろう…」

「持続時間と、高速で動けないと言う制限は有るようだが…かなりキツいぞ」

 デボのデモンストレーションを見て、考察を重ねている彼らの表情は優れない。

 確かに『光学迷彩』は乱戦以外は問題無い。だが『空』は、現時点では対処方法が見当たらない。

 ただ、『空』は『光学迷彩』の上位スキルなので、それを使うモンスターもかなり上のレベルだと思われる。

 で有れば、そのモンスターに対峙するのはまだ先だとは思う。

 ただ、現在の超高湧き湧き状態で、尚且つ全てのモンスターが出口を目指していると思われる現状から考えると、そう遅くなくそんなモンスターと対峙する可能性が高いとも言える訳だ。

 とても、楽観視出来る状態ではない。

 そんな、深刻な考察を続けている俺を余所に、碧は腕を胸の前で組んで「う~ん」と言いながら小首を傾げていた。

 そして、「決めたっ!」と声を上げると、俺の方に向き直ると言い放つ。

(ちゅう)やん! あのモンスターの名前は(ちゅう)やんに決定!」

 可哀想な事に、今この時、あのモンスターの名前がシステムによって、(ちゅう)やんに決定してしまっただろう。

 他の者が2人以上で、他の名前で呼ばない限り、(ちゅう)やんの名前がそのままシステムに記憶される訳だ。

 さすがにその名前は無いだろうと思ったのだが、面倒くさかったし、どうでも良い事なのでスルーした。

 そして、周囲の自衛隊員も同様に流した事で、その名前が定着してしまった。

 びみょ~な名前の多いダンジョンモンスターだが、その中に新たに微妙な名前のモンスターが誕生した訳だ。

 この(ちゅう)やんだが、体長1.2メートル程で、背中にトンボのような透明な羽が生えていた。

 これだけ聞くと、ピクシーなどの妖精を思わせるが、顔が完全に虫だ。しかも蝉に似た顔で、どう見ても可愛くは無かった。

 そして、手足の先だけが、カブトムシなどの足先のようになっていた。

 むろん、俺達が見たのは、火に包まれた状態だったので、詳細までは見ていない。

 そんな(ちゅう)やんがドロップしたのは『(ちゅう)やんの翅脈』だった。……やっぱり、世界レベルで初見のモンスターだったようだ。碧の付けた名前になっている。

 通常は、回復薬やマジックアイテム、炸裂弾の材料以外のドロップ品はスルーするのだが、これは初見の品なので、一応拾って鑑定まで実施した。

 この品は、錬金素材としてはヘルメット材料になるようだ。多分、バイザー部分に使われるのでは無いかと思う。取りあえず、放棄だな。

 魔石もC-3クラスはあるが、橙色なのでこちらも放置する。基本、黒以外は放置だ。他の魔石は地上で入手出来る分で充分に事足りている。

 碧のアホな命名の為か、場の雰囲気が大分和らいだ。

 意図したもので無い所が恐ろしい所だが、この場は良しとしよう。

 そして、俺達はそのまま進んでいく。

 分岐を経るに従って、モンスターの数は確実に減ってきてはいるが、それでも30秒に1匹とまではまだ行かない。

 だぶん、深く潜れば潜る程、モンスターの数は減るのは間違いないが、減少率は低くなると思われる。

 深く潜るに付け最深部へと繋がる通路の数が減る為、実質的な脇道が減る事になる。その為、分岐点に達しても片側は行き止まりへ至る通路であり、そこから来るモンスターの数自体が元々少ない為、そこを通過しても余り減らないと言う事だ。

 そんな移動中、後方からブラック・ゴブリンを殺したとの報告が上がって来た。

 バックアタックを受けたと言う事は、分岐点直後で無い限りは、たいていは『湧き出し』によって発生してモンスターで有る確率が高い。

 定期的に『壁』を作って移動している為、それを壊されない限りは隊列の後方には来られないからだ。

 そして確認した所、『壁』を作って3分と立っていないとの事だった為、『壁』が壊されればその音が届く距離なので、先ず間違いなく『湧き出し』だと確定した。

「んじゃあ、ここはレベル31~36帯って事だね。もうちょっと行けばジャイアント・トロールも湧ね」

 何故か嬉しそうに微笑む碧だが、ジャイアント・トロールを狩って金塊出ても持って帰れないぞ。

 トロールはともかく、ブラック・ゴブリンは碧の言うとおりレベル31以上のモンスターだ。つまり、レベル31帯域に到着したと言う事に成る。

 このダンジョンの最深部がどれ位まであるかは分からないが、|鴻池ダンジョンより少し深いと考えレベル90帯域まで有ると想定すれば、やっと1/3まで到達したと言う事だ。

 この時点で、時間は午後2時を越えていた。6時間掛けてやっと30帯域と言う事だ。予定では40帯域には達しているはずだったが、マップが変わっていた為、それは仕方が無い。

 全員が、その予定を知っているせいか、焦りを感じている者が多い。そんな者達に対しては、階級が上の者が諫めては居るがそんなリーダー格の者達も顔には出さない様にしながらも、やはり焦りは隠し切れていない。

 実はこの焦りに、罠の存在が予想外の形で影響している。

 それは、大人数で有る為に、今までであれば回避するだけで良かった罠を、解除しなくては成らないケースが増えた為だ。

 無論、隊列を1列にし、随所に『罠探知』持ちを配置すれば回避出来なくはない。

 だが、複数の罠が並んで存在しているケースや、センサー部分が広範囲に及ぶ罠などは、罠と罠の間に人員を置く事になり、戦闘の際モンスターの遠距離攻撃によって罠が発動するケースも有った。

 現在の様に、モンスターとのエンカウント率が異常に多い状態では、そのような状況に陥る確率が高かいのだ。

 その為、当然ながら無駄な時間とHPを浪費する事に成る。そして、その事が遅れている予定にイラ立つ気持ちを、更にイラつかせてしまってたと言う事だ。

 まだ致命的な状態ではないが、この状態が更に続くようなら、問題が発生する可能性が有ると思う。

 精神的な焦りは、絶対にミスに繋がる。そして、この場でのミスは命に関わる事になる。場合によっては大勢を巻き込んでの…

 俺がリーダーだったら、一旦仕切り直すべきだと判断する。サブリーダーだったら、リーダーに提言するだろう。

 現状では、そんな提言すら出来る立場に無いが、もうしばらく様子を見て改善されないようなら、越権行為だが言うべきだろう。巻き込まれて俺達がケガをするのはイヤだから。

 そんな事を考えていると、碧が珍しく真剣な顔で話しかけてきた。

 一瞬、碧も現状の危うさを考えていたのかと思ったが、そうでは無かった。

「お兄ー、あのさ、(うち)のダンジョンマップってここで出せる?」

 思っていた事と全く違う事を聞かれ、一瞬ぽかんとしてしまった。

「…マップをか? やった事ないけど……あっ、出来るな、ホロスクリーンに出すから。ほい、で、どうした?」

 初めての試みだったが、他のダンジョン内でも、過去に記録したマップは表示可能のようだ。

 俺は碧のリクエストどおりに、ホログラムスクリーンにマップを映して見せてやる。

「…ここの昔のマップは無いの?」

「……ああ、駄目だな、エラーで消えてしまって、今のマップで完全に上書きされたみたいだ」

「そっか、あのさ、このマップはそのままで、ここのマップも同時に表示出来る?」

 同時表示なんてやった事がなかったので、出来るか分からなかったが、やってみると呆気なく出来た。

 俺の右手の上には、2つのホログラムスクリーンが表示されている。

 そのホログラムスクリーンを、碧は交互に何度も見ていた。

「お兄ー、この倍率同じ?」

「ああ、同じだぞ」

「………ねえ、(うち)のダンジョンの30帯って、ここでしょ。んで、今居る所がここ。マップの構造が違うからアレだけどさ、距離短くない?」

 …言われてみて直ぐに分かった。いや、直ぐに分かる程の違いが有ったと言うべきかも知れない。

 両方のマップの、同一帯域と出入り口との距離を比較すると、ここのダンジョンの方が圧倒的に短い。2/3程度の距離しか無い。

 この場合で言う『距離』とは、直線距離では無く、通路を移動した実質的な距離の事だ。

「確かに、短いな」

「でしょ。なんか、移動した距離と湧いてくるモンスターに違和感がずっとあったんだよね。錯覚かって思ってたんだけど、やっぱり間違ってなかったんだ」

 自分の感覚が間違っていなかった事が分かった碧は、一人でうんうんとうなずいている。

「ぺんぺん、お前は気付いていたか?」

 左肩のぺんぺんに尋ねると、ペンと一叩きが帰ってきた。どうやら、ぺんぺんも感じていたようだ。

 念話とかのスキルが欲しいな。…無いけどさ、そんなスキル。

「横から失礼、その違いは何か意味が有るのか?」

 同じ班になっている牧村陸曹長が、相変わらずデボを頭に乗せたまま尋ねてきた。

「う~ん、どうなんだろう。これがず~っと続けば、全体として距離は短くってすむんじゃ無い?」

 そんな碧の回答を聞きながら、俺は別の事を考えていた。

 それは、昔のここのマップと比べてどうだったかって事だ。

 マップは既にクリアーされてシステム的には無い。だが、『知力』40オーバーの記憶がしっかりと覚えている。

 その記憶と照らし合わせて見る。………やはり、短くなっている。

 念のため、今回の場所以外の目前で『湧き出し』を確認したポイントでも比較してみるが、やはり短い…

「あのですね、いま、記憶にある以前のここのマップとも比較してみたんですが、やはり同じ位入り口からの距離が短くなってます」

「あ~、やっぱり。ここのダンジョンには、私あまり入ってないから自信なかったけどやっぱりそっか」

 碧はあんまりここには入ってないからな、感覚に自信が無いのは仕方が無いだろう。

 牧村陸曹長は、自己納得して満足げな碧を見ながら眉をひそめている。

「この事実は、我々には有益だと言う事か?」

「今の段階ではそうですね。もちろん、何があるか分からないダンジョンなので、マイナスになる要素がある可能性も有りますけど」

 多少なりとも、現状の自衛隊員達のイラ立ちや焦りを解消したかったので、幾つか考えていたマイナス面はあえて口にしなかった。

 牧村陸曹長は、まだ不安があるのか俯くようにして考え込んでいる。

 そんな牧村陸曹長のヘルメットの上で、身体を斜めにしたままでデボは鉄帽覆いの迷彩布に爪を立ててへばり付いている。

 ぺんぺんのように、せめて動きが少ない肩に乗れば良いのだが、何故かデボは頭の上が好きなようだ。

 最初は牧村陸曹長も気を使って、頭を余り動かさないようにしていたが、かなりの動きをしても大丈夫だと分かってからは、気にせず普段通りにしている。

 多分、デボの存在自体を忘れている事も多いのでは無いかと思っている。

 碧が気付いた距離の件は、徐々に他の者達にも伝えられて行き、僅かながらも焦りの緩和に役立ったようだ。

 ただ、距離が短いと言う事は、距離が短くて尚この位置までしか来られていない、と言う事でも有る訳で、移動速度は更に遅くなっている事を表している。

 そんな、移動速度ではあったが、その後更に5時間を使って、レベル47帯と思われる所まで到達する事が出来た。

 MPやHPの管理は全く問題なく、前列と後列の者以外は全員満タン状態を維持出来ている。

 自衛隊員の大半は、レベルだけは高いが、『知力値』が低い為MPの自然回復速度が遅い。

 その分、HPの回復速度は早いので、攻撃スキル主体で戦う事でその差を補い、その上でMPの回復速度が倍以上有る俺達がカバーする事で問題無く廻っている。

 だが、朝から12時間近い戦闘を続ける事はさすがに無理だ。

 故に、俺達は夜8時になった時点で、意図的に枝道に入り、『部屋』を見つけると入り口を4重の『壁』で塞ぎ、『転移』によって駐屯地へと帰った。

 これは元々の計画に有ったものだ。どんなに早く行っても、1日で最深部まで行けるとは誰も思っていない。

 出来れば2日から3日で、攻略出来るかどうかはさておき、目処は付けられると考えていた。

 だが、マップの変更という問題も有るので、最低でも予定を+1日する必要があるかもしれない。

 その辺りは、お偉いさん方が考えるだろう。

 俺達は、その日は『冒険者』用の宿舎では無く、駐屯地内に設けられた部屋で眠る事になった。

 兄妹と言う事で、2人同じ部屋だ。もちろんデボとぺんぺんも同室なので4人部屋と言う事に成る。ベッドは2つだけどね。

 ゲスト用の部屋なのか、小さいながらも風呂とトイレも付いた部屋だったので、無駄な移動もなく楽だった。

 飯は相変わらずのコンバットレーションだが、食糧危機状態の一般人に比べれば羨望の品だろう。

 実際、他の自衛隊員より、今回の作戦に従軍する者の食品は良い物が回されているらしい。

 風呂上がりに、その部屋でゆっくりと飯を食っていると、先に食べ終わっていた碧が話しかけてきた。

「お兄ー、ダンジョンの距離の件で何か有るんでしょ?」

 一瞬、飲み込み掛けていたピラフが気管に入りかけ、むせってしまった。

「汚~」

 俺の横で飯を食べていたぺんぺんからは、怒濤のペンペン攻撃を太股に受け、碧の側に居たデボからはジト目で見られた…

 そんな三面楚歌状態で、俺は口元を押さえた手に飛び散ったピラフの残骸を、備え付けのティッシュで拭き、洗面所で手を洗って来る。

 そして、何気なく食事を再開するが、ごまかしは利かなかったようだ。

「で? 何かマズげな考えが思い浮かんだ訳?」

 ……伊達に20年以上兄妹していない様だ。あの時、表情を読まれていたようだ。

 だが、その事以上に、碧のヤツが周りの事を考えて、あの場で問い詰めなかった事に驚いた。

 普段も、それ位気を使ってくれれば…… はぁ~。

「…可能性って言うか、想像レベルの話だぞ」

 俺は、そう前置きをして、あの時考えた事を碧に話した。

 各モンスターの帯域が狭く、トータルとして、その帯域に至までの道程が短いと言う事は、以前と同様の距離でより高レベルのモンスターが湧いていると言う事に成る。

 つまり、俺達が(うち)のダンジョンで潜ったレベル80帯域の距離で、レベル100クラスのモンスターが現れる可能性が有ると言う事だ。

 その事と、以前から考えていた『ダンジョンレベル』の考察から一つの可能性を考えてしまった。

 それは、ダンジョンの深さが均一である可能性だ。

 そして、最深部により高レベルのモンスターが居る場合、各帯域の幅が狭くなっているのでは無いか、と言うものだ。

 つまり、ダンジョンレベルとは、ダンジョンの深さでは無く、最深部に居るモンスターのレベルを基準とし、全てのダンジョンの深さは均一で有ると言う考え。

 その考え方から言えば、この『新・大阪ダンジョン』は(うち)のダンジョンより高レベルダンジョンだと言う事に成る。

 つまり、攻略はアレよりも大変になると言う事だ。

 (うち)のダンジョンの八岐大蛇擬き以外で、最高レベルのモンスターはレベル78だったので、ここのダンジョンでは単純計算するとレベル105近いヤツが居る事に成る。

 当然、ボスモンスターと思われるモノも、それに比例して強い可能性が高い。

 ダンジョンの、いわゆる『ゲームシステム』はこう言った所はしっかりとゲームしている。無駄にゲーム的に作られている。

 つまり、確実に強いモンスターが居るって事だ。『炸裂弾Ⅱ』の乱れ打ちで何とか成らない可能性も高い。

 もちろん、全ては、考察の上に考察を重ねた机上の空論以前のモノだ。

「それってさ、否定出来ないよね。深さが一定かどうかはさておき、同じ距離で確実に強いモンスターが出るのは確実だし。(ちゅう)やんなんてのも出て来てるぐらいだから、(うち)のダンジョンより高レベルなのは確かだと思う」

 碧命名の(ちゅう)やんはあの後は出て来ていない。その為、レベル確認が出来ていない。だが、魔法に対する耐性などから見ても、レベル60以上で有る事は間違いないと思う。

「面倒な事になってきたね」

 そう言う碧の顔は何故か笑っている。

 俺はそんな姿にため息をつきながら、明日の予定に幾つか変更を加えるべく考えるのだった。

 何とか、士気を落とさないように、対策を講じる方法を考えなくては成らない。

 ……これって、俺が考えるべき事じゃ無いよな。

 あぁ…面倒な事になった。

 もちろん、これは碧の言葉とは違って、そのままの意味だ。

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