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18話 お城の周りをぐ~るぐる

────────────────────

「DD社と連絡が付いたぞ」

「本当? じゃあどう言う事だったの?」

「それがな、最初DDの信号とIDの事を言った状態までは良かったんだよ。それがL反応の事を言った途端に対応が変わりやがってな。『誤認です』『測定ミスで』を繰り返すだけになった」

「…詳しく説明したんでしょ」

「ああ、L反応と同じ座標から信号が出ていることも言ったさ」

「…じゃあ、それがDD社に何か都合が悪い事って事なんじゃないかしら」

「そうなるよな」

「そう考えるのが普通だと思う」

「どうする」

「ここまで来たんだし、もう少し調べましょう。じゃないと今までかかった経費がパーよ」

「そうだな、DD社が突然態度を変えた原因が分かれば逆に金になるかもな」

「脅迫みたいな明らかに違法なのは駄目よ。合法的にね」

「ああ、あくまでも、合法的にだ」

────────────────────




 毎日の様に新しいエリアを探索していた俺達だったが、ここに来てそれを止めている。

 理由は、今後の事を考えてレベルとパラメーターをある程度上げておこう、と言うものだ。

 無論、碧は反対したが、もう少し潜れば魔法やスキルを使うモンスターが現れる事を説明し、なんとか抑えることに成功した。

 ただ、やはり不満な様で「『宝箱』が無いよ~」と、終始ブツブツと文句を言っている。

 今狩り場としているエリアは、オークやスライム、トレントの居るエリアで、ドロップ品も見込めるわりかし良い所だと思う。

 レベル帯としてもある程度余裕が有って、無理さえしなければ無傷で対処出来る。

 ただ、問題は、碧の大嫌いな『G』が存在することだ。この『G』は、このエリアからダンジョン中層に掛けて広く存在する為、どのみち避けようがない。

 そんなエリアで、俺達は毎日経験値を稼ぎ、リアルスキルを鍛えている。

 特にリアルスキルを鍛えるのは重要だと思う。なんせ、無駄な動きを無くすだけで単位時間あたりに攻撃出来る回数が確実に上がるのだから。

 実際、ダンジョンが一般公開されてから、それまで閑古鳥が鳴いていた様な剣術道場に入門する者が増えたらしい。

 その余波か、格闘技系人気もかなり復活の兆しがあるとか。プラス、マイナス色々な形でダンジョンの存在は影響を与えている。

 俺達は道場に通う金銭的な余裕など無い為、ただひたすらに我流で腕を磨くのみだ。

 『素早さ』と『知力』の値を高めた事による、高速思考と動体視力によって、自分のその時の状態をつぶさに観察し、動きの無駄や力の流れ、動きのつながりを見定める。

 ボールが止まって見えるレベルの動体視力とそのベースとなる高速思考はそれを可能としてくれた。

 ただ、いくらそれらが分かると言っても、即座には修正出来るものでは無い。だから、訓練だ。

 比較的安全なエリアで、多彩な攻撃方法を持つモンスター(オーク)に対す事で少しずつ少しずつ修正して、動きを作って行く。

 時折、格闘ゲームの技を真似て危なくなったり等、アホなこともしつつの10日間だった。

「経験値を寄こせ~」

 どっちがモンスターだか分からない様なことを言いながら、碧のヤツは殲滅を続けていった。

 俺は、無理のない範囲で『盗む』を実行してオークから低級回復薬の入手を目指した。残念ながら1個しか成功しなかったけどね。

「てめえらの血は なに色だー!」

 …女の子の言うセリフじゃ無いよな。お兄さんは碧の将来が色々心配です。

 そんな感じで、全員のレベルは10に出来た。

 ただ、パラメーターに関しては、あまり上げる事は出来ていない。なんせ、かなり大きな数字になってきているから…

 しかも、碧のヤツが『錬金術』に味を占めたのか、突然『鑑定』を修得した。しかも、一度パラメーターを上げた後にだ。

 どうせ取るなら、なんでその前にしなかったんだよ、全く。それだけで540も損してるって言うのに…

 そんな事も有り、碧のパラメーターアップに必要な経験値は3231と成ってしまった。今のエリア帯でこの経験値を入手するには27日は掛かる計算だよ。

 あと、ぺんぺんのパラメーターが上がった。これは、経験値を使って上げたのでは無く、素の身体が成長して上がった分だ。

 元々、生後間もなくだったので、当然成長する訳だ。で、その分がステータスにも反映されたって事だ。

 『スタミナ』・『筋力』・『素早さ』が2ずつ上がり、『知力』は1上がった。これでぺんぺんの素の『知力』は10と成ったことになる。俺より2多い…

 そして、ぺんぺんは経験値を使ってもパラメーターを上げたので、以前に比べればかなりステータスは上がっている。

 間違っても生後2ヶ月の子犬のステータスでは無い。あと、『瞬歩』も取った。移動系スキルで残っているのは『縮地』だけに成る。

 移動系は碧と被っているが、初期スキルで『空歩』を取っているだけに、ぺんぺんの方が進んでいる状態だ。でも、相変わらず俺の肩の上に居るけどね… 名前シャモンに変えるか?

 そう言えば、生後2ヶ月程経ったんだが、全体的な大きさがほとんど変わらないんだよな… 小さなチワワサイズ。

 子供の頃に筋肉を付けすぎると成長しなくなる、って話を聞いたことが有るんで、パラメーターアップが何か悪影響に成っているんじゃ無いかと心配してたりする。

 ただ、ダンジョン内だけのことだし、1日に4時間程度なので影響はない気がするんだけど… さすがにこんなデータは無いからな。

 豆柴みたいにあまり大きくならない種って事は無いよな? 真っ白の犬で長毛種以外に小っこいのは見た事無いし。

 まあ、もう少ししたら大きくなる可能性も高いか。


 RPGで言う所の、最初の街(城)の周りでレベル上げをする様に、レベル7帯をぐ~るぐると周りながらの経験値稼ぎを続けた訳だが、このほど以前の『昭和懐メロ大作戦』を再開する運びとなった。

 何故かというと、ダンジョン入り口付近のモンスターが増えだしたからだ。間引きの必要が出て来た。

 さすがに、今更3人で行う作業では無いので、ぺんぺんを固定メンバーとして、俺と碧が交替で担当することになった。

 実施するのは夕方。午前中の狩りで消耗した魔力量(MP)が完全に回復してからと言う事だ。

 レベルが上がって魔力量(MP)がかなり増えたこともあり、満タンに回復するのに時間を要する様になった。

 魔力量(MP)が増えた割に、『知力』値はさして増えていない為、自然回復速度は増えていない。

 とは言え、以前同様に、ワイヤーネット越しにグサグサやるだけの作業なので、魔力量(MP)はあまり使用しない。

 モンスターのレベルが低い為、経験値的には美味しくないが、ぺんぺんのパラメーターの入手経験値を補う意味では役に立っている。

 レベル7帯での狩りにしろ、『昭和懐メロ大作戦』にしろ、地味な作業の繰り返しだ。

 だが、確実に経験値は溜まり、ユーザースキルも上がってきている。

 これがゲームだったら、思いっきり適正狩り場では無いのだろうけど、現実世界では、死んだら死ぬから、絶対に死なない所で確実に成長する必要がある。

 碧としてはかなり不満なようだ。だが、我慢してもらっている。

 実際、プレイヤースキルの成長は本人もハッキリ分かった様で、「何か良い感じ♪」と時折呟いている。

 結局、なんとか碧をなだめすかして、合計20日間『お城の周りをぐ~るぐる作戦』を実施した。

 おかげで、ある程度ではあるがパラメーターも増やせた。ただし、俺とぺんぺんのみね。


  ・氏名 鴻池 稔(こうのいけ みのる)

  ・年齢 20歳

  ・Level 10

  ・生命力 100

  ・魔力量 100

  ・スタミナ 15

  ・筋力 15

  ・知力 15

  ・素早さ 15

  ・魔法 転移・サンダー・ボール サンダー・アロー

  ・スキル マップ 盗む 罠探知 罠解除

  ・経験値 146

    次回UPに必要な値(パラメーター) 525

    次回修得に必要な値(魔法・スキル) 81


  ・氏名 鴻池 碧(こうのいけ みどり)

  ・年齢 17歳

  ・Level 10

  ・生命力 100

  ・魔力量 100

  ・スタミナ 11

  ・筋力 14

  ・知力 13

  ・素早さ 20+3(疾風のネックレス)

  ・魔法 錬金術 ファイアー・ボール ファイフー・アロー

  ・スキル ステップ 瞬歩 空歩 鑑定

  ・経験値 1202

    次回UPに必要な値(パラメーター) 3231

    次回修得に必要な値(魔法・スキル) 144


  ・氏名 鴻池(こうのいけ) ぺんぺん

  ・年齢 0歳

  ・Level 10

  ・生命力 100

  ・魔力量 100

  ・スタミナ 10

  ・筋力 11

  ・知力 15

  ・素早さ 11

  ・魔法 アイス・ボール アイス・アロー

  ・スキル ステップ 瞬歩 空歩

  ・経験値 145

    次回UPに必要な値(パラメーター) 393

    次回修得に必要な値(魔法・スキル) 22


 こんな感じだ、碧はパラメーターを上げられない代わりに『空歩』を修得している。ま、移動系なのでそのまま取れるから問題無い。

 そして、俺はレベル10制限の『罠解除』スキルを修得した。盗賊系スキルで残っているのは『気配察知』のみと成る。これはレベル15制限なのでまだまだ先だ。

 ちなみに、ついに俺の『スタミナ』・『筋力』・『知力』・『素早さ』の合計が、碧の合計を越えた。

 俺が60、碧は58、ぺんぺんは47だ。多分さして掛からずぺんぺんにも抜かれるだろう。だから言ったのに…


「お兄ー、素材とかの名前どう成ってるの?」

 午前の狩りを終え、水晶柱でパラメーター操作を終わった後、碧が『錬金術』を実行している時に唐突にそう言ってきた。

「名前? なんの名前の事だよ」

「えっとほら、『鑑定』で素材を見たら、『ピュア・スライムのゼリー』って表示されるんだけどさ、この『ピュア・スライム』って冒険者がかってに付けて定着した名前なんでしょ? それがなんで『鑑定』でもその名前になってるの?」

 ああー、その事か。

「理由は不明」

「なにそれぇー!」

「あのな、初見のモンスター素材って、最初は『※※のゼリー』みたいな感じらしいんだよ。それを誰かが名前で呼んだ時点でその名前に変わるらしいんだ。更に、他の多数が別の名前で呼び始めるとその名前に変わるんだと。で、その理由は不明」

「……それって、誰かが書き直してるって事だよね」

「そ、異世界人か、神様か、魔王か、宇宙人か、誰だか分からないけど、こっちの様子を見ていて、しかもしっかり統計まで取って書き直す。更に各国の言語に翻訳までしてくれる。訳分からないだろ」

 ユーザー登録が、全てのダンジョンで共通の様に、これらのデータも全てのダンジョンで共通に成っている。いや、共有という言葉の方が正しいのかも知れない。

 誰が、なんの為に作り、なんの為に運営しているのか、全く分かっていない。

 色々な説や想像、妄想が有るのだが、これといったモノは何一つ無いのが現実だったりする。

「誰か、ずっと見てるんだ」

「そ、碧が『G』相手にうっきーしてる所もしっかり見られてるはずだぞ」

「うっさい、じゃあ、お兄ーの『知力』を08ってした人(?)も見てるって事だよね」

「……謝罪と賠償を求める! 訂正プリーズ!!」

 ……………

 天に向かって吠えてみるが、返事は無い。

 ペン

 肩の上のぺんぺんが、優しく俺の頬を叩いた……

 誰かのブログで、通信的なモノでは無く、パラダイムシフトをコントロールしているんじゃ無いか? と書かれていた。

 そもそも、パラダイムシフトが分からないので何のことか不明だ。

 グリセリンの結晶がどうたらと書かれていたが、知力8の俺には良く理解出来なかった。

「ところでさ、『錬金術』で作ったモノって売れないの?」

「売れるぞ」

「じゃあ売ろう! じゃんじゃん作るから、お兄ー売ってきて!」

「…売れるのはな、ある程度深い所に潜っている者達が作ったモノな。当然購入者は表層をうろついている俺達や、新人冒険者。俺達が作れる様なモノはほぼ売れないよ」

 『錬金術』は他の生産系のスキルや魔法に比べ、有る意味万能ではあるがそれだけに幅が狭い。

 『錬金術』は薬、アイテム、素材、武具を作ることが出来るが、それぞれに特化した『調合』『鍛冶』『細工』等の1/3程度モノまでしか作れないという制限がある。

 回復薬で言えば、低級回復薬と中級回復薬までしか作れない。上級回復薬・最上級回復薬・完全回復薬は作れない。

 仮に、材料が有ってレシピも分かっていても作れない。

 だが、中層までで、せこせこと稼ごうと考えている者達にはうってつけの魔法で有る事は確からしく、多くの者が修得している。

 つまり、俺達が作れる程度のモノでは買う者は居ないって事だ。

「せっかく『Gの触角』まで使ってつくったのにぃぃぃぃ!!」

 『Gの触角』と『スライムゼリー』と『トレントの樹液』で『ウイルス耐性薬』が作れる。

 いわゆる『ポーション』と呼ばれる薬類のかなりのベースに『スライムゼリー』と『トレントの樹液』が使われる。

 無論、別のモノでも代替え出来るモノも有るが、一番表層で入手出来るのがこの二つだ。

 『G』嫌いの碧としては、金の為に頑張ったらしい。だ・か・ら、やる前に先ず聞けよ。やってから聞いてど~すんのさ。全く。

「売れなくても、しばらくしたらウイルス持ちが居るから、どのみち必要だったんだよ。賞味期限も無いから、地下室に置いとけばいい」

 これ以外にも、余分な分の『低級回復薬』や『低級解毒薬』は地下室内に棚を作って並べている。

 無論、一人2個ずつは持ってダンジョンに入ってる。『宝箱』品では無く、『錬金術』製のモノをね。

 『宝箱』製と『盗む』で入手した分は纏めて売る予定だ。剣や槍は結構な数が溜まったんだけど、低級回復薬はまだ4つしか手に入ってない。1ヶ月以上掛けてだから微妙だ。

 一応、『低級回復薬』の売却相場は10万円前後なので、これだけで40万にはなることになる。

 それ以外に、『低級解毒薬』も手に入ってはいるが、『錬金術』で作る為の材料が手に入っていない為、売る方には回せない。

 40万円。かなり大きな金額に思える。実際俺達には大金だ。ただ、これは、2ヶ月半近く2人(+ぺんぺん)で入手した金額なので、1人の1ヶ月分と考えれば、サラリーマンにも満たない。

 それまでの出費も考えれば微妙だ。そして、売りに行く為の往復の交通費の件も有る。…そろそろ売りに行かないとな。

 その日に入手した素材と、以前に入手していた分を使って、その日に『低級回復薬』を2本と『ウイルス耐性薬』を2本、『鎖蛇の大皮』1枚を作製した。

 『鎖蛇の大皮』は中間素材とでも言うべきモノで、チェーンバイパーの皮を6枚使って1枚の大きな皮にしたモノだ。

 防具や、武器を作る際の材料となる。

 ちなみにレシピは、『錬金術』を所持している状態で『鑑定』を実施すると、その鑑定品に錬成可能なモノがリストとして表示される。

 明らかに『錬金術』と『鑑定』はセットなんだけど、どちらも単独扱い…… おかしいだろう! と今見ているであろう管理者(?)に声を大にして言いたい!

「『空牙』とかカッコ良いよね。あっ、『パワースマッシュ』も地味だけど効果ありそう」

 天に祈っていた俺を余所に、碧のヤツがなにやら怪しいことを呟いている。

「碧さんや、まさか、新たにスキルを取るつもりじゃなかろうのぅ」

「……」

「ごらぁぁぁ!! アホかぁ! ただでさえパラメーター上げられなくなってるのに、何考えてんだよ!!」

 説教タイムだ。きっちりやっちゃる。

 あ、逃げた…

 あやつは、あっと言う間にタラップを登って逃げ去っていった。脱兎ってヤツだ。

 まあ、阻止出来たから良いとするか。全く何考えてんだか。

「ぺんぺん、あんな風になっちゃ絶対駄目だぞ」

 ペンペン

 強めのペンペンが返ってきた。多分「心外な」と言う事だろう。ごめんな、ぺんぺん。

 さて、俺達も外に出るか、夕方の『昭和懐メロ大作戦』までは、今日はキャベツの苗を植えて、もう少し畑を広げよう。

「昼飯食いに行くか」

 ペン

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