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クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


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六十一話 夜空と海

 告美と麗凪の部屋で喋った後は自分の部屋に戻った。少し遅い時間だが、せっかくならと繭奈を誘い外に出てきた。夜の散歩に洒落こもうと思ってね。


 観光地色んな店が立ち並んでいる商店街を巡る。とはいえもう時間が遅いため、大半の店は閉まっており開いているのはコンビニくらいだ。

 ちらほらと人の歩く道を繭奈と手を繋ぎながら "三人" で歩く。もう一人は言わずもがな冬夏だ。


「こういうのも良いな。新鮮で」


「私は龍彦くんがいてくれたらそれで幸せよ。もちろん今も、とっても幸せ」


 その言葉に息を飲む。そんな風に言われてしまうと、胸が苦しくなってしまう。

 繭奈の顔が見れず、敢えて前をじっと見ながら歩く。転んだりしたら危ないし、ちゃんと前を見ないとね。


「ったく、見せつけてくれるなぁ……」


 俺たちのやりとりを見ていた冬夏が、顔を赤くしながら文句を言った。それを聞いた繭奈が彼女を見て、ニヤリと口角を上げる。


「あら、羨ましいの?それなら冬夏も頑張って良い相手を見つけることね」


「うっさいなぁ、そうは言っても良い相手がいないのさぁ。それなのに二人を見てると甘ったるくてたまんないよ」


 冬夏がその気になればいくらでもできそうではあるが、それでも彼女の好みもあるだろうし、気長に待つしかないだろう。


「繭奈がちょっとでも龍彦を貸してくれたら、気分くらいは味わえるんだろうけどなぁ」


「口を慎みなさい」


「辛辣だなぁ」


 冬夏が血迷ったことを言うが、繭奈に睨まれてしまっている……が、冬夏は何処吹く風だ。

 なんとなく視線を巡らせていると、案内の看板を見つけた。どうやら、高台から海を眺めることができるらしい。

 その事を伝えると、二人とも乗り気のようだった。もちろん俺もなので、その看板の通りに進んでみた。


 歩いて数分後、看板にあったように海を眺められるようになっていた。手摺があり、ちょっとした観光名所のような感じになっている。


「おぉ、すごいな」


「綺麗ね」


 見える景色に、俺たちは感嘆を漏らした。月明かりに照らされた海が光を反射して、波によってキラキラと輝いて見える。

 昼からずっと快晴で、星空も綺麗だ。こんな素敵な景色を繭奈と見ることができて、幸せだと思える。


「うわぁ、すごいねぇ。来年はアタシも彼氏と来れるかなぁ」


「これるさ、冬夏ならきっとね」


「ありがと。なら来年は龍彦と二人きりで来ようかな」


「「え?」」


 冬夏の言葉に俺と繭奈はハモって返す。そんな俺たちを見た冬夏は ニシシと笑った。


「龍彦より良い男なんてそうそう見ないよ。来年までに見つけられる自信はありませーん」


「だからって龍彦くんは渡さないわよ?」


 夜空と海をバックに繰り広げられる二人の漫才(やりとり)にクスッと笑ってしまう。とはいえ、もしできるなら来年も繭奈と一緒に来たいものだ。

 別な今回のような旅館じゃなくても、年季の入った民宿だっていい。繭奈と一緒ならキャンプだってなんだって、きっと楽しめる筈なんだ。


 また、遊びに行けると良いな。


「それにしても、潮風かしら?意外と涼しく感じて、良い気分ね」


 繭奈の言う通り、もっとジメジメとして暑苦しいかと思ったがそうでもないんだ。風が吹く度にほんの少し冷えたような空気がほほを撫でる。

 外に浴衣は着ていけないので私服であるが、半袖に半ズボンなら風をよく感じられる。


「龍彦くん」


 隣で一緒に海を眺めている繭奈が名前を呼ぶので、そちらに顔を向ける。すると彼女と目が合って、唇を重ねてきた。

 今この場所だからこその特別な気分で感じる彼女とのキスは、とても良いものだった。少し眺めに抱き合いながら、唇を離して見つめ合う。


「そろそろ、戻りましょうか」


「そうだな」


「ぐぬぬっ、見せつけてくれちゃってさ」


 繭奈の声かけで部屋へと戻る。一緒にいた冬夏は悔しがっていた。

 いくら潮風が気持ち良かったとはいえ、汗かいちゃったな。部屋に戻ったら繭奈とお風呂にはいろうね。


 夜はまだまだこれからだ。

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