『第二王女の葛藤』
3か月と少し。
……前の投稿から、空いた時間です。
ものすご~く期間を空けてしまいました。申し訳ありません。
どうしよう、どうしよう。
どうしよう……。
一体どうしたらリューお兄様に嫌われないでいられるのか。
自分が何をしたらいいのか、頭の中がぐるぐるで。
私は、自室にひきこもって。
頭を両手で握ったクッションの下にもぐりこませて。
どうしようって……困ってしまって、もう泣きそうだった。
リューお兄様に嫌われたくない。
……それに、ちょっとだけ。
本当は、リューお兄様の『妹』なんて気に入らないんだけど。
だけど……でも、あの子、泣いてたって。
男の子にかこまれて、泣かされたなんて聞いちゃったから。
自分だったらどうかなって、考えちゃって……胸が、ずきずきしたの。
あの子、いま、どうしてるんだろう。
あの子が奪られたリボン、まだ私の手元にあるの。
まだ泣いてたり、するのかしら……。
「わたし、どうしたら良いのかしら……」
何をすれば、どうすれば。
もう考えても考えてもわからなくって。
出てきそうになった涙の代わりに、ぽろろっと声が零れた。
今いちばん、答えがほしいこと。
声に出したら、本当に答えがくるとは思っていなかったのよ?
なのに、答えがきた。
「それは、まぁ……謝った方が良いですよ。なるべく早く」
「……っフアナ、あなたいつからそこに!」
「姫様が入室なされた際からおりましたが。私はティアラアンナ様の侍女ですので」
「いたのなら最初から仰いなさいな!」
「一緒に室に入りましたのに、此処にいますと申告する方がおかしくありませんか?」
しゃあしゃあ?と?こにくらしいことを言うフアナ。
こんな子が私のじじょだなんて、お母様ったら人選ミスだわ。
もっとおとなしい子にしてって、今度お願いした方が良いかしら。
フアナったら今だって私が怒っているのに、ものすごく平気そうなんだもの。
「それより姫様、先ほどの事ですが……今すぐ謝罪に行かれた方が良いですよ。本当に、今すぐ」
「う……出しゃばりね、フアナ。私のことは放っておいてちょうだい」
「ですが自室に閉じこもっていても事態は好転しませんよ? むしろ時間が過ぎるほど、どんどん状況が悪くなることは明白です。フアナは今日中に謝りに行かれることを推奨します」
「そんなの……出来るわけないわ。どんな顔で、あの子に謝れというの」
「明日になったら状況はより悪くなりますよー。まず今回の一件は間違いなくもう国王陛下をはじめ、姫様のご家族全員に知れ渡っていることでしょう」
「えっ」
さらっと、フアナがとんでもないことを言ったわ。
でも言われてみれば……昔から、悪いことをしたらすぐにお母様に知られてしまっていたもの。
今回もきっと、そうなんだわ……ますます、どうしたら良いの。
「恐らく、今は姫様がどんな行動に出るか様子を窺っておいでなので何も仰られないのでは、と。姫様が自発的に謝罪に行かなかった場合、明日の朝いちばんでお説教ですね」
「そんな!?」
「それから兄君様に連れられてリュケイオン殿下、ミンティシア殿下の元に行くことになりますわね。そこで兄君様主体での謝罪が行われ、姫様も兄君様に促される形での謝罪。その後、国王陛下からの謝罪文付きでお詫びの品がリュケイオン殿下のお部屋に届けられるのではないかと……」
どうしよう。
事がどんどん大きくなっていくわ。
フアナの言うことは本当にありそうで、なんだか手がふるえてきた。
あ、変な汗が……
目をうろうろさせて困っている私に、フアナがじあい?の目を向けてくる。
「姫様、このままじゃ格好悪いですよ」
遠慮のないフアナの言葉が、なんだか胸にぐさりと刺さる。
状況的に、自分は悪いと反省していない悪い子みたい。
立場が上の年長者にうながされて、しぶしぶ謝っただけ、みたい。
フアナの言葉は、自分でもそうだわって、思えて……。
私は……。
「そんなことになれば、リュケイオン殿下の心証も悪化しますわね。どん底まで評価が下がってしまわれますよ」
「……っ」
わかっているわ。わかっているわよ。
わかっているのに……なのに。
私はどうしたら……答えは出ているはずなの。
そのはずなのよ。
自分でも、ちゃんとわかっているの。
だけど、足がすくむ。
変な汗が、もっと出てきてしまう。
喉が、変な音で鳴った。
「……姫様」
ぎゅぅっと目を瞑って俯く私の手を、フアナが握る。
優しい力で、手を温めるみたいに。
そうして私に目を合わせ、フアナは励ますような口調で言ったわ。
「姫様はご学友の皆さまのことを、大人が決めた形だけのお友達だと仰っていたではありませんか。ミンティシア姫は家柄やしがらみに関係なく、『本当のお友達』になり得るお相手ですわよ」
「え……」
「思ってもみなかった、というお顔ですわね。それに考えてみましょう、姫様は弟君か妹君を欲しいとも仰っていたではありませんか。美味く仲良くなれば……『お姉様』、と呼んでくださるかもしれませんわよ」
「え?」
あの子は、私とほぼ同じ年と耳にしていたのですけど。
フアナったら、あの子の年齢を勘違いしているのかしら。
それに仲良くなんて……私が、リューお兄様の妹のあの子と、仲良く???
それはありえないわ、と思ったのだけれど。
『お姉様』という響きに、なぜかすごく心がゆれるのを感じた。
ミンティシアに第二王女が謝罪する、という流れに持って行かなければ話が進まないんですけどね?
中々その状況に、第二王女とユピルス青年だけでは持って行き難く……第一王子に付き添われて謝罪という流れも考えたのですが、それだとリュケイオン側の心証悪くなる一方ですし。
考えた末に、第二王女の乳姉妹にして侍女、フアナというキャラが誕生しました。
中々遠慮のない人物ですが、第二王女の側付きで同性ならこのくらいがちょうど良いかなと考えた次第です。我儘王女の思考と言動の方向修正(矯正)役ですね!




