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傾国の死後、私と妹【連載版】  作者: 小林晴幸
私と妹と、貴族の館
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8.5/わたしとおにいさま

 まっしろくて、ふわふわしてて。

 くちの中いっぱいにひろがった、ふしぎなあじ。

 いままで、こんなの食べたことあったかな?

 ミンティシアのしってる『あまい』よりも、ずっとずっと。

 これが『あまい』って、わからなくなるくらいにあまい。

 おにいさまが、ミンティシアに食べさせてくれる。

 ひとくち、ふたくち。

 さんかい、よんかい。

 あーんってしてくれて。

 ミンティシアが食べるたび、おにいさまはどことなくうれしそう。

 めもと、がね……やさしくなるの。

 そんなおにいさまを見てると、くちの中のまっしろい『けーき』がね。

 なんだか、もっと『あまい』のがつよくなったような気がした。


 おにいさまがやさしくって、うれしそうだったから。

 あーんってしてくれるまま、フォークにのった『けーき』を食べた。

 ミンティシアのおなかはいっぱいだったけど。

 でもおにいさまのやさしいお顔が見たくて、ついつい口をあける。

 おにいさまがすこし、しんぱいそうなお顔をした。

 おなかがいっぱい、っておにいさまにはわかるのかな?


 おなかが、いっぱいで。

 おにいさまはミンティシアの頭をなでてくれる。

 むりはいけないよって。

 ミンティシア、『むり』ってしたのかな?

 なんだかよくわからない。

 だけど、おにいさまがあーんってしてくれた『けーき』はおいしかった。

 こんなにおいしいんなら、おにいさまにもって思う。


「……おにいさま、あーん」

「え?」

「………………ごめんなさい」

「ああ、いや、もらおう。ミンティシア」


 おにいさまが、してくれたから。

 ミンティシアがしてもだいじょうぶって思って。

 おにいさまにも、あーんってしてみた。

 だけど、おにいさまがちょっとビクッてしたから。

 わるいこと、しちゃったのかなって。

 ミンティシア、わるいこだったのかなって。

 かなしくなって、手をひいた。

 でもひっこめる前に、おにいさまの手がおっかけてくる。

 そのまま、ミンティシアのおててから。

 おにいさまが、『けーき』を食べてくれた。

 おいしいって、ちょっとわらってくれた。


 おにいさま。おにいさま。

 どうして『おにいさま』って、こんなにやさしいのかな。

 どうして『ミンティシア』に、こんなにやさしくしてくれるのかな。

 それが『おにいさま』で、『とくべつ』だからって。

 まえ、『おかあさま』がおしえてくれたからって思ったけど。

 でも、なんだろう。

 なんでかなって、やっぱりふしぎ。


 このひ、は。

 おにいさまがたくさん、『あまいけーき』を食べさせてくれたから、かな。

 むねの中、いっぱいあまくって。

 それにおされるように、いつのまにかこわくなくなっていた。


 かわり、に。

 なんでかな、なんでだろうって。

 おにいさまへのふしぎが、ぐるぐるしたの。



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