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Data.97 さらなる雷を刃に

 マッチ終了後、『いろはに町』に戻って来た私たちをリュカさんとうるみが出迎えてくれた。


「いやぁ~、まさかあんな見たこともない展開になるとはねぇ! 楽勝だと思って心の準備ができてなかったアタシは最後までハラハラドキドキだったよ! でも、よく頑張った! よく優勝した!」


 両腕で私とマキノを抱き寄せるリュカさん。憧れのリュカさんとの大接近にマキノは幸せの絶頂といった表情だ。


「初めての実戦だったのに優勝しちゃうなんてすごいです!」


「いえいえ、すべてはトラヒメちゃんとマキノさんのおかげですから!」


「いやいや、リオさんもちゃんと戦力になってましたよ! 誰1人欠けても優勝は厳しいものになっていたと思います!」


「そんな、私なんて足を引っ張らないようにするのが精一杯で……!」


 リオとうるみの謙遜(けんそん)とベタ褒めの戦いはしばらく続きそうだ。


 しかし、私としてはここで派手に喜ぶわけにはいかない。本番は明日の戰で、今日の戦いはその下準備に過ぎないからだ。まあ、それはそれとして、とっても楽しい戦いだったけどね!


「優勝賞品の『修練値40の巻物』は……うん、道具一覧にちゃんと入ってるみたい」


 少し落ち着いたところで、私はみんなに巻物の使い道を聞いてみることにした。私はもう決めてるけど、一応人の意見というのも聞いておかないとね。


「私は今日1日かけて使い道を考えるつもりよ。戰前に自分を大きく強化できる最後の機会だと思うから、考えに考えて『もうこれしかない!』と自分が納得できるまで悩み抜くわ!」


「そ、そうなんだ……」


 マキノなら本当に1日中考えてそうだな……。すると、あっさり使い道を決めている私は大丈夫なのかと思ってしまうけど……いや、私の場合は問題ない!


「リオはどうするの?」


「私はそもそも修練値を上げられる技能をまだ持ってないからなぁ。それに戰にも出ないし、できることなら巻物を譲ってあげたいんだけど……」


 残念ながら技能の巻物と同じく、修練値の巻物もまたプレイヤー間でやり取りはできない。これは最初からわかっていたし、リオも承知の上で数合わせとして参戦したんだ。


「リオはこれからも『電脳戦国絵巻』を続けていくつもり?」


「……うん! バトロワは予想外のことばっかりでヒヤヒヤしたけどすっごく楽しかった! トラヒメちゃんと一緒に、私もいろんな冒険をしてみたいな!」


「なら、リオの巻物はリオが使うべきだよ。これから一緒にゲームを遊んでいれば、そのうち巻物を使いたくなる技能にも出会うはずだしね」


 私が好きなゲームをリオも好きになってくれて本当に良かった。これで『もう遊びたくない』なんて言われてたら私……戰を前にして立ち直れなくなるところだった……。


 さぁて、巻物の使い道はマキノが1日考える、リオがこれから考えるだから、あまり参考にはならなかった! となれば、自分の決めた道を突き進むのみ!


「私はここで技能を昇級させるよ!」


 昇級させるのは、決めていた通り【雷虎影斬】!


 ライオーから奪った中級技能【撃ち方・雨】、サハラから奪った『敏捷増強Ⅱの巻物』、そして今回バトロワで勝ち取った『修練値40の巻物』×3を合わせれば、合計修練値は200になる!


 そこに『上級指南書』も揃っていれば……!


《技能昇級! 中級技能【雷虎影斬】は上級技能【雷充虎影斬】に昇級しました!》


「ら、雷充(らいじゅう)……虎影斬!」


 なんと雄々(おお)しい響き! でも、漢字は『雷獣』じゃなくて『雷充』という見慣れないものだ。そこのところも、効果を詳しく見ればわかるかもしれない。


雷充虎影斬(らいじゅうこえいざん)

 階級:上級 形態:体術 武具:刀

 属性:風雷 念力消費:中 修練値:0/1000

〈雷を完全に従えた新たなる猛虎の一太刀。発動後も刀を鞘に収め続けることで、さらなる雷の力を刃に充填することが可能。7秒間の充填で最大威力となる〉


 な、なんだこの今までにない説明文は! 発動したのに刀を鞘に収め続ける? さらなる雷の力を充填? 7秒間の充填で最大威力? 意味はわかるけど、知らないことだらけだ!


「ほぉ~、チャージ系の技能になったんだねぇ」


「チャージ系ってどういう系ですか、リュカさん!」


「発動後も攻撃を行わず、一定時間待つことによって威力を高めることができる技能のことさ。もちろん、チャージなしで今まで通りの使い方もできるけど、最大まで溜めた時の威力は1つ上の階級にも及ぶとか……!」


「1つ上の階級!? つまり、上級のチャージ技能の場合は……!」


極級(きょくきゅう)……そのレベルにまで達するということだねぇ」


 す、すごい技能を習得してしまった!


 もちろん、最大威力を出すには7秒間も刀を鞘に収めっぱなしにするという、決して軽いとは言えないリスクを背負うことになる。でも、それでも、極級の威力は魅力的すぎる!


「早速試し斬りがしたいです!」


 刀の(つか)に手をかけたその時、見慣れたメッセージが表示された。


《町中での戦闘行為は禁止です》


「あははは、またやっちゃいました……! 町の外に出ましょう!」


 これで三度目かな? でも、それだけ気持ちがはやるのも納得できてしまう。今の胸の高鳴りは、このゲームを始めてから一番と言っていいほど強く、心地の良い!


 【雷充虎影斬】……この技能は私にとって特別な存在になる。そんな予感を抱えながら町の外へと出た私は、みんなが見守る中……再び刀に手をかけた!

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど? チャージした刀を抜き放つと同時に葬り去る… それが『神速抜刀』になるのですかね?
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