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Data.89 真の無双ショーを味わえ!

 やあ、また出番があってごめんね!

 俺だよ、プロストリーマーのハッカクだよ。


 現在開催中の初心者限定バトロワで、俺がどんな奇策を(こう)じたかについては……まず置いておこう。


 それより、ちょっと前に投稿した『電脳戦国絵巻』とは特に関係ない、チーム『SpicieS(スパイシーズ)』の日常を映した動画に寄せられたコメントを俺は晒したいんだ。


 やれ『○○さんの方が面白い』だの、やれ『典型的なダメリーダー』だの……酷くない? 画面の向こうに生きている人間がいるとわかっててこういうこと書いてるなら、なんて残酷な人がこの世界にはいるんだろう……!


 しかも、今晒し上げたコメントはまだまだマシな方で、過去には訴えてやりたくなるほど酷いことを書かれたこともあるよ……。


 でもね、俺は誰かを誹謗中傷で訴えたりはしない。なぜかって?


 俺自身、叩かれてもしゃーねーなって思ってるからさ! 俺は自分を客観視できるから、自分が人に嫌われても仕方ない人間だと理解している。


 俺みたいな奴のために俺が弁護士を雇って、金と時間をかけて、批判意見をプチプチ潰していくなんて……モチベーションが続かないよ!


 そんなこと気にするなら、まず自分の行動を見直して反省するって話だ。そっちの方が金も時間もかからなくて、よっぽど無駄がない。


 あ、でも、殺害予告だけはやめてね? 俺の意志に関係なく勝手に大事(おおごと)になっちゃうから。


 俺みたいな不快系のレッテルを張られてる人間は、まともな人間以上に笑えない大事は起こしちゃいけないんだ。ファンの子を不安にさせたくないし、アンチには気軽に叩けるサンドバッグであり続けたい。


 それがハッカクという男の生き様だ。


 でもさぁ……。人気がなくなるとファンが消えるのは当然として、アンチも消えるんだよねぇ……。結局誰かを叩く動機って嫉妬だから、人気がない奴には嫉妬してもくれないんだよねぇ……。


 アンチすらいなくなった時が、そのコンテンツの本当の落ち目なんだ。そういう意味では酷いコメントも精神安定剤になる。まだ俺の行動について意見をくれる人がいる……!


 だから、もっとそういうコメントが欲しくって俺は……バレたらガチで嫌われそうなことを現在進行形でやっているぜ!


 そうそう、ここからがみんな聞きたい本題だよね。俺が『電脳戦国絵巻』のバトロワで確実に優勝するために講じた奇策、その全貌!


 言うぜ……。

 まずは一言で言うぜ。

 それはな……『八百長』さ!

 わざと負けてくれるパーティをたくさんエントリーさせてあるのさ!


 しかも、ただ負けてくれるだけじゃない。人気(ひとけ)のない場所に降り立って丸薬を集め、俺に届けてくれる運び屋の役目も果たしているのさ!


 フィールド選択はランダムだが、どんなフィールドにも東西南北はある。どのあたりで俺と落ち合うかを伝えるのは非常に簡単だ。


 俺は降り立った場所で生き残り、適当に近場の丸薬を集めつつ待っていれば、いつの間にか最強プレイヤーになっている……というわけだ!


 まあ、今回は俺の降下した場所に話を通してない普通のパーティも一緒に降りてきたせいで、危うく計画がとん()するとこだったけど、偶然拾った無限体力の丸薬でほんの少しの間だけ無敵になれたから切り抜けられたぜ……!


 そう、この作戦は割とルール違反ではあるが、決して完璧ではないんだ。その理由はバトロワのマッチングシステムにある。


 フリーバトロワの場合は、時間とか関係なく人数が揃った時点でマッチが始まる。まあ、本当はただ人数が集まればいいんじゃなく、ある程度実力の近いプレイヤーが集まった時点で始まる……だけどね。


 つまり、たとえ人数が少なくともフリーバトロワの場合は圧倒的強者と戦わされることはないのさ。


 これは限定バトロワでも一緒だが、こちらに関しては開始時刻が決められている。今回で言えば、午後6時の部に俺たちは参戦している。


 要するに、こちらの場合は状況はどうあれ時刻になったらマッチを開始しなければならない。


 でも、『電脳戦国絵巻』みたいな大人気ゲームは、初心者オンリーイベントでも人数が揃わないなんてまずありえない。それどころか、初心者限定でもしっかり実力が近い者同士でマッチングする。


 今回はそれを悪用させてもらった!


 まず、俺たちに及ばずとも他の初心者よりは強い初心者、それも動画などを投稿していて見つけやすい駆け出しプロゲーマーたちに声をかけ、今日の午後6時からのバトロワにエントリーして負けてもらうようにお願いした。


 その見返りは金だったり、俺たち『SpicieS(スパイシーズ)』と後日コラボする権利だったりする。


 駆け出しのプロゲーマーはすでに人気がある先輩からリスナーを奪う必要があり、最初はなかなか思うように金が稼げない。だから、はした(がね)でも魅力的に見えるのさ。


 そして、俺は落ち目とはいえ昔は人気だったし知名度もある。そんな俺とコラボできれば、リスナーが自分たちに流れる。そう思っている子たちには、コラボの権利も悪くない報酬だ。


 問題は本当にコラボで俺のファンがそっちに流れるかも……ってことだけだね。


 んまっ、こんな感じで結構な人数抱き込んだんだけど、さっきも言った通り『電脳戦国絵巻』は初心者限定でもプレイ人口がすごく多い。


 たとえ同じ午後6時の部でエントリーしても、俺たちの息のかかったパーティだけでバトロワを行うことはまず不可能だ。それなりに腕が立つ一般参加者が絶対混じる。


 なので、俺たちは丸薬が集まって来るまで降下した場所からあまり動かず、丸薬が集まったら強化された能力で一般参加者を狩ることにした。


 俺には戦いの年季があり、クミンには才能があり、ガラムには実力がある。そこに圧倒的に強化された能力が加われば、負けるはずはないんだ!


 もちろん、試合の流れは不自然になる。抱き込んだ奴らには、上手く演技しながら負けてもらう手はずになってるけど、おそらく人数の減りの早さで違和感を覚える奴が出るだろう。


 それはきっとネットにも拡散される。疑惑の優勝者SpicieS(スパイシーズ)……ってね。そうなれば、俺たちは勝ちだ。疑惑は注目を集め、再生数も稼げる。


 悪名は無名に勝るという言葉を、この大VR時代を生きる君たちはよーく知っているはずさ。悪いことをして上げた知名度で私腹を肥やす奴の多いこと多いこと……。


 でも、そんな奴でも案外裏では苦労したり、悩んだりしてるんだろうけどね。きっと、人生の戦い方は人それぞれってことなんだろうさ。


 まあでも、いくら悪名が素晴らしくとも疑惑は疑惑で済ませておかないと痛い目を見る。


 今回抱き込んだプレイヤーたちは、俺たちよりプロゲーマーとして格下だ。ゆえに俺たちが仕掛けた奇策をバラす奴はそういないと言える。


 悲しいけど、人気のない奴が暴露したってなかなか信じてもらえない。眉唾(まゆつば)のウワサ話として俺たちの優勝に花を添えるだけってことをみんな理解してるはずさ。


 何よりこのバトロワは即死したって『修練値40の巻物』が貰えるんだ。優勝すれば3本の巻物が貰えるけど、逆に言えば即死でも優勝の3分の1の報酬を貰える。


 どうせ優勝できるのは1チームだし、俺の話に乗って得るものを上乗せした方が合理的だ。みんなそう思ってるからこそ、俺の誘いを断る奴は1人もいなかった。


 正々堂々勝負したいと言う奴が1人はいるんじゃないかと思ってたけど、俺は若い世代をちょっと買い被り過ぎてたみたいだ。


 プロゲーマーを名乗りながら、ゲームにあまり熱意がない。あくまでもビジネスとして考える。ゲームで稼ぐことが当たり前になりすぎた新世代はこんなものさ。


 え? じゃあ、お前には熱意があるのかって?


 さあ……昔はあったような気もするけど、どこかに落としてきちゃったかもね。


「さて、クミン、ガラム……そろそろ狩るか」


 残りパーティは5組。ここまできたら残りは全員一般参加者だろう。


 八百長だから仕方ないとはいえ、序盤以外は刺激の少ない展開が続いたからな。生放送のコメント欄はご立腹だ。


 では、そろそろメインディッシュを味わっていただきましょう。この圧倒的な能力による真の無双ショーをね!

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