表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/116

Data.82 3人目の闘士

「リュカさん、私とリオの準備はオッケーとして、3人目のプレイヤーの準備は……」


「ああ、それならもう来てるはず……あれ?」


 リュカさんはきょろきょろとあたりを見回す。しかし、私たち以外に人影はない。


「んー、シャイな子だから隠れてるみたいだねぇ。どこにいるか、当ててみてくれないかい?」


「え! 当てるって……わかりました」


 さっきまでは他のことに意識がいってたから、周囲を警戒していなかった。ゼトさんに言われたように、私はリオに指示を出すために周囲の敵を察知できなければならない。感覚を研ぎ澄ませて、気配を探るんだ……!


「………………そこだ!」


 リュカさんの背後の木をびしっと指さす。割と自信はある。なぜなら、殺気に近いものをあの木から感じるから……!


 しかし、木の裏から誰かが出てくることはなかった。もしかして……外しちゃった? 割と自信満々に指さしたんだけど、あそこには誰もいなかった? 顔が熱くなっていくのを感じる……!


「マキノ、当てられたんだから降参して出てきなさい」


「マキノ……?」


 リュカさんが謎の名前を呼ぶと、私が指差した木の(かわ)がはらりとめくれ……いや、違う。めくれたのは木の幹そっくりの絵が描かれた布! その後ろから現れたのは……!


「忍者っ!」


 なぜかふくれっ(つら)の女忍者が現れた!


 その髪はフレッシュな若葉のような緑で、編んだ髪を巻いて後頭部でお団子にしている。長く伸びたもみあげ(・・・・)は緩くカールしていて、まつげが長く大きな目も相まって全体的に高貴な雰囲気がある。


 反面、服装には高貴さがあまりなく親近感を覚えるセクシー路線だ。全身が網タイツに覆われていて、その網タイツの上から体のラインがハッキリわかるようなぴちぴちの着物を着ている。


 着物の色は深い緑。丈は短く、袴は履いていない。『群青の半着』と同じ路線に見えるけど、あの着物の下がパンツなのかズボンなのかはわからない。上はノースリーブで胸元が広く開いており、深い谷間がよく見える。


 うーむ、見れば見るほど私と同じセクシー路線に見える。言うなれば、高貴でエッチな女忍者だ!


「この子はマキノ。『烏合の衆』では一番の新入りで、今日がちょうどゲームを始めて1週間なのさ。いやぁ、この子がいなきゃ今頃どうなってたか!」


 マキノさんの肩をぽんぽんと叩くリュカさん。すると、マキノさんのふくれっ面が少しやわらいだ。でも、ぽんぽんが終わるとまたすぐにふくれっ面に戻ってしまった。


 一体、何が不満なんだろう……。私には知る(よし)もないが、1つだけわかっていることがある。マキノがさっきから私をにらんでいる……ような気がすることだ。


「えっと……初めましてマキノさん」


「初めまして、マキノよ。『さん』はいらないから」


「あっ、はい……」


 マキノは目も合わせてくれない。ツンと視線をそらしている。ああ、これは私に何か思うところがあるんだな……。


「ごめんね、トラヒメちゃん。マキノはちょっと人見知りなとこがあって、初対面の人にはツンツンしちゃうのよ。でも、根はとってもいい子で、私を(した)って『烏合の衆』に入ってくれたんだ! それだけ戰に対するモチベーションも高いし、実力もルーキーにしてはある! 仲良く協力すれば、きっと優勝できるはずさ!」


 リュカさんに褒められている時のマキノの表情は柔らかい。とりあえず、リュカさんを慕っているというのは本当らしい。


「じゃあ、改めて……。一緒に頑張ろうね、マキノ」


「ふん、リュカさんのためだもの。言われなくても頑張るわ」


 マキノはもみあげの髪をくるくると指でいじりながら言った。


 こ、小憎(こにく)たらしい……! もしかして、私に隠れている場所を言い当てられたから不機嫌なのかな? それならまあ、かわいい反応として許してあげても……。


「あ、別に場所を言い当てられたことは気にしてないからね。あんなのまぐれよ、ま・ぐ・れ!」


「こら、マキノ。そんなこと言っちゃダメでしょ? まだ会ったばかりだからわからないと思うけど、トラヒメちゃんの実力は本物さ。あのゼトも認めるくらいなんだから、気配を察知して居場所を当ててもおかしくないよ」


「はーい、リュカさんがそう言うなら信じまーす!」


「あら~、いい子だねぇ~。その調子でチーム3人で仲良くするんだよ? 私は組合(ギルド)の仲間から救援要請が来てるから、今からそっちに行かないといけないんだ。戰の前日ともなるとデスペナルティを付与するための小競り合いが増えてねぇ……。なんとか上手く敵を追い払ってくるよ」


「それは大変ですね……。頑張ってください!」


「ああ、頑張ってくるよ! 3人もバトロワまでにお互いのことを理解して、チームワークを磨いておくんだよ! 一発勝負のバトロワはバラバラで勝てるほど甘くはないからね! あ、うるみはこっちを手伝ってくれるかい?」


「はい! 私も戰の参加者ですから、一緒に戦う仲間を助けるのは当然です! トラヒメさんたちも頑張ってくださいね!」


 優雅蝶に乗ってリュカさんとうるみは飛んでいった。森の中に残されたのは私とリオと……マキノ。相変わらず私の方を見てふくれっ面をしている。まるでなぜふくれているのか聞いてほしいかのように……。


 ……ならば聞くしかない! 本番までにチームのわだかまりは排除しないといけない。マキノと腹を割って話をして、私たちは3人は本当のチームになるんだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新たなゲームシステムと共にブラッシュアップされた『神速抜刀トラヒメさん』がKindle電子書籍で配信中!
表紙画像をタップorクリックで販売ページに直接ジャンプできます!

89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_c

ツギクルバナー
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ